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成仏しない理由

「ただいま」

私は玄関の扉を開ける。


「こらぁ」

望が玄関で私を待っていたようだ。


「な、なんだよ」

突然の声に私は思わずびびった。


「私を置いていくとは何事だ!!」


「だって気持ち良さそうに寝てたからよ」


「いなくなったから心配したんだよ」


「あ、そういうことか。ごめんごめん」

心配してくれるのは嬉しいもんだな…


「そういや、伯父さん」


「なんだ?」

伯父がたばこを吸いながらこっちを見る。


「○○町のゴミ屋敷の件って知ってる?」


「あ?あー。んー。」


「知らねぇか」


「いや、半年前かな。たしか家主が死んだ。ごみ屋敷があるって話を聞いたような…もしかして家主に会ったのか」


「えぇ半年前かよ。あの婆さん自分がいつ死んだかもわかってなかったぞ」


「あそこは昔からごみ屋敷だったな」


「ふーん」


「半年も前なのに何で成仏してないのかな?」


「わからねぇ、なんかしら未練があるんだろうけど、あるとしたら、あのごみ屋敷だよなぁ」


「そうだ。家主がいなくなったらいつかあの家も撤去されちゃうんじゃない?それが心配で成仏できないとか?」


「そうだ。あの婆ちゃんがいってたけど、夫と娘が交通事故で死んでから物を捨てられなくてごみ屋敷になったって。望の言う通り撤去が心配なんだな」


「でしょ、でしょ」


「それがよ、あそこは撤去したくてもできねぇんだよな、これが」


「え、なんでですか?」


「あそこの家は息子が引き継いだらしいんだが」


「えっ、てことはあのゴミ屋敷に住んでるのかよ」

私はうげっとした顔をする。


「いや、息子があそこの家を壊して、新しいアパートを建てる計画があるんだが、撤去する業者が次々事故に巻き込まれて誰も撤去してくれなくなったんだとよ」


「それって…」


「まぁそう言うことだろうな」


「そうか。関わらねぇ方が良いってことか。それよりさ。前も聞いたけどなんで伯父さんは望の姿と声が聞こえるようになったんだよ?」


「知らねぇよ、気づいたら見えるようになってたんだから」


「不思議だよねぇ」


…なんでだろう。もしかして私があいつに刺されたときに私の血を望が触れたから?そんなバカなことがあるのか?


「まぁ、つまりだ。あそこの家はその婆さんがいる限り撤去できないって話だな」


「そうだな、意地でも成仏しないだろうな」

私はどうしたもんかと腕を組む。


「それならそれでいいんじゃない」

望の意外な回答に私は思わず顔を見つめた。


「な、なに?」


「いや、成仏推奨派のあんたにしてはめずらしいなって、頭でも打ったか?」


「そんな派閥はありません。だってみずから望んでこの世にとどまってるなら仕方ないでしょ」


「まぁそうなんだけどよ。でも…撤去の邪魔をしてるのがあの婆さんだとしたら」


「まぁ、まずいよな」

伯父がタバコを咥える。


「え、どういうこと?」


「つまり、亡き者が生きている人間に手を出してる。今は事故で済んでるけど誤って死んでしまったら、婆さんは地獄行きってことさ」


「あ…そうか」


「…」


「説得に行こう、由梨ちゃん」


「無理だと思うけど行ってみるか」


「恨みは買うなよ」

伯父が忠告する。


「ああ、とりあえず…様子を見てくるだけだよ」


私と望はあのゴミ屋敷に向かった。



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