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ケース1「安藤 雄太(享年5歳)」

段々と私の身体についてもわかってきた。

どうやら、食事とトイレはしなくていいらしい。疲労感もない。言ってしまえば無限に動くことができる。そして人には触れたり話したりはできないが(伯父とは話ができる)。物には触れることができるらしい。

よって今私は伯父の車に乗って神明公園に向かっていた。

伯父がさっきビールを飲んでいた気がしたが考えないでおこう。


伯父はハンドルを握りながら

「でかしたぞ、由梨。これで俺も名探偵の仲間入りだ」

と意気揚々としている。


こっちの気も知らないで意気揚々としているこの伯父の頭を今にもぶん殴りたかったが私にはできない。

イライラした気持ちを抑えながら車は目的に到着した。


そこにはやはり私がさっき見かけた男の子が1人ぽつんとブランコに乗っていた。

その後ろ姿はどこか寂しげにみえた。


「伯父さん、あそこだよ、あの男の子、まだいやがる」

私はブランコに指を刺したが伯父は怪訝な顔をしてブランコのほうを見つめていた。


「おい、由梨。何の冗談だ?誰もいねえじゃねえか」

伯父が怒鳴る。


「えっ」


「え、じゃねえよ。」

私は伯父の酒のせいだと思った。


「伯父さんなに言ってんだよ。酒の飲み過ぎじゃないの?ブランコに男の子が座っているだろ、見えねぇのかよ」

伯父は少し黙って私に問いかけた。


「もしかしたら、お前にしか見えないのかもな、その男の子の特徴は?」


私はどきりとした。その意味が何なのかは容易に想像できた。

「えっと、髪の毛はぼさぼさ、ちょっとくたびれたTシャツを着てるね、5歳にしては小柄なのかな?あ、右手に大きな火傷のあとがあるみたいだな」


伯父がふうとため息をついた。

「まいったなこいつは、俺が捜索依頼を受けた男の子の特徴と同じじゃねえかよ」

沈黙が車の中を包んでいく。


「ねえ、伯父さん。私、あの子に話しかけてくるわ」

私は車を降りてブランコに向かって歩き出した。


伯父は黙って少し離れて私の後を追った。

男の子は私が近づいてきたことに気づいたようで顔をこちらに向けた。

男の子の顔には覇気がなく、衰弱仕切った様子であった。

私は、一拍置いて男の子に話かけた。


「ねえ、君ここでなにやってるの、もう遅いから家に帰らないと親に怒られるよ」


男の子は弱弱しい笑顔で話す。

「僕ね。ここでお母さんを待っているんだ。お母さんなかなかこないんだよ」


伯父のほうを振り返ると伯父は手をクロスさせていた。

やはり伯父には聞こえていないし見えてない。この子は私と同じだ・・・・

「そしたら、姉ちゃんは今日は帰るから明日姉ちゃんと遊んでくれるか?」

男の子はにっこりと笑い指きりをして、私は車に戻った。

(触れることができた…)


伯父が車に戻ってきた私に聞く。

「男の子はなんだって?」


「お母さんを待っているんだって、明日私と遊ぶ約束をしたよ、ねえどんな依頼内容なのか私に教えてよ、あの子私と同じなんだよ」


伯父は苦々しい顔をしながらうなずく。

「とりあえず詳しい話は家に帰ってからだ」


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