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失敗

「ねえ、伯父さんどうすればいいかね」

私は家に帰ってから伯父にことの顛末を伝えた。


「どうすればって言っても、どうにも出来ねぇな」


「だよねぇ」

私は頬杖をつく。


「それよりも、由梨お前の行動は完全に失敗だぜ」


「は?なんでだよ」


「その身勝手な親父は娘が自殺したことでやっと自分の愚かさに気づいたんだろ、それで成仏もできないところに、伝言を伝えてくれるお前が現れた…そしたら安心して親父は成仏しちまうんじゃねぇか?」


「あっ」


「で、娘の方は自分が自殺して、親父が苦しむ姿を見たかったんだろ。死んじまって、さらに成仏されちまったらその子はもう成仏出来ないんじゃないか?」


「…」


ふぅとため息をついて伯父はたばこを吸い始める。


伯父の言う通りだ。私は望の為に親父に会いに行ったが逆に親父を成仏させる手伝いをしてしまったということか


「まだ、あの親父が成仏したかはわからないだろ!!」

私は勢いで外に飛び出した。こうなったら確認しに行くしかない。


「ふぅ、やっぱり由梨は浩二そっくりだな」

光一は上空を見上げながらたばこを吹かす。


着いた。まったく遠いな。


あの親父はどこだ?成仏なんかするなよな


私はさっき会った場所に向かう。しかし気配を感じない…


一枚の紙が不自然に置かれていた。

私はそれを手に取る。


【ありがとう】

その一言だけが書いてあった。


やはり、成仏してしまったようだ。

くそ、勝手な親父だ。何がありがとうだよ。私は伝えるとは言ってないだろ…いや私がいけないのか…

望には何て言えば良いのだろう…


私はうつむきながら歩いていると私を呼ぶ声が聞こえた。


「由梨ちゃん、やっぱりここに来てたんだ」

望だ。

「あ、お前なんでここに」


「由梨ちゃんのことだからお父さんが成仏してるか確認するんだろうなって思ったから」


「そ、そう」


「で、いた?」


「……いなかった」


「…そう。人をここまで傷つけておいて成仏したんだ、最後までひどい親だね」

望はぷいと後ろを向いて歩きだした。


「あ、あの、多分だけどあんたの親父さんは後悔してると思うよ」


「何を根拠にそんなことを言うの?」


「いや、なんとなくそんな気がして…じゃないと自殺なんかしないだろ?」


「私が死んで社会的制裁を受けるのが怖くて死んだんだよ、あの男は」


「あ、いや」


「由梨ちゃんには関係ないことだから」

冷たい声が私の心に刺さる。


「じゃ、じゃあ、あんたは成仏しなくて良いのか?」


「別に私は成仏できると思って自殺しただけ、でも何でか成仏できなかった、あいつは成仏できたのに…なんで死んでまでこんな不公平な目に合わなきゃいけないのよ」

望の目には涙が溜まっていた。


何もしなければよかった。何もしなければ、望は成仏をしていない親父を確認して成仏できていただろう。


私は成仏させなければいけない人間を変えてしまったのだ…


「じゃあね、由梨ちゃん」

足早に望は去っていく。


私はその背中を見つめるしかなかった…



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