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後悔

数日後テレビのであの親父を殺した犯人が捕まったニュースが流れた。


犯人はあの若夫婦の夫だった。

あの頑固親父に妻がたびたび文句を言われて頭にきた夫が親父の家に訪ねて口論の末近くにあった包丁で刺殺をしたとのことだ。

男は慌てて逃げ出し1ヶ月が経過しても自分を訪ねてくる人はいなく安心しきっていた。

そこに今回おばちゃんが訪ねたことで辻褄の合わない嘘を言ったのだ。

しかし、あの証言は私とおばちゃんしか聞いていないのになぜ犯人を特定できたのだろうか。

すると家のチャイムが鳴った。斎藤刑事だ。


「小林さん、今回も協力ありがとうございました。小林さんの証言がなければ犯人逮捕には結びつかなかったと思います」


「俺は何もしてないよ。近所のおばちゃんが教えてくれたのをそのまま伝えただけだ」

この伯父いつのまにそんなことを。


その後、私はあの親父の家を訪ねた。

いた…。

「なんだ成仏してないじゃん」


「もっとましな言い方がないのか。まったく最近の若いやつは」


「犯人も捕まったのにどうしてさ」


「いや、なんだかよ。たしかに俺はあいつに殺されたけど、俺もあの奥さんにしつこく文句を言いすぎた。そう考えると殺されても文句は言えないのかもしれねえってな。なんだか奥さんが不憫になって」

私はムカッとなった。


「不憫て、そう思うなら奥さんに文句なんか最初から言わなきゃよかったじゃん。それで殺されて夫が捕まってかわいそうとか勝手だよ」


「15年前に事故で死んだ息子夫婦に良く似てたんだ。それで口うるさく色々口を挟んじまったんだよ。2年前に死んだ母ちゃんにもよく怒られたんだ。まあ、結局俺の勝手な気持ちだ。だから俺は成仏できないんだろうな」


私は何も言えなかった。

「お嬢ちゃん、おまえのおかげで色々とかたがついた。もうここには来るなよ」


私は黙って家を後にした。

あの頑固親父の気持ちがあの夫婦に伝わっていたらまた違う未来があったのかも知れない。

私はあの若夫婦に食事に御呼ばれしてへたくそな笑顔をしている親父を想像した。


何なんだろうこの気持ちはあの頑固親父を成仏させるつもりがこの世に残すことになってしまった。でも成仏できない理由も分かる。ちくしょう。私は道端に転がっていた空き缶を蹴っ飛ばした。


空は雲ひとつない青空だった。私は悔し涙を流していた。私の涙は地を濡らすことはない。

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