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接触

「なるほどな、またまあめんどくさいことになってきたな」

俺は由梨から報告をうけて思わずぼやいた。


息子の労災訴訟問題に、あの事件の容疑者安藤小百合。この上なくめんどくさいことになりそうだ。

「その息子は本当にただ母親を止めたいだけなのか?」


「聞いてる限りはね。ろくに生活もできてないみたいだし。心配してた」


「そいつの親父はどうしたんだよ?親父がいれば止めに入ってもおかしくない


「去年亡くなったって言ってたよ」


「死因は?」


「いや、そこまでは聞かなかったけど。もしかして伯父さん」


「ああ、なんだかおかしいことになってきたぞ」


「ねえ、伯父さん。母親に接触できないかな?」


「あん、どうやってだよ。息子さんはあなたにもう止めてほしいといってますってか」

そんなこといったら恨まれるどころの話ではないだろう。


「私に作戦があるわ」


翌日、俺はあのマンションの前にいた。

昨日、由梨が言った作戦とは、俺がうわさを聞きつけて探偵としてあなたの味方になりますよと接触を図れということだ。


「そんなうまくいくはずねえよ。今までだって何人の探偵がやとわれては証拠もなく首になっている」

俺はタバコをふかしながら独り言を続けていた。

ただ由梨の言っていることはおそらく母親を止めることではなくこの事件の裏について動けと言っているのだろう。

俺もその裏については気にはなっているが・・どうしたもんか。

ピンポン。俺はチャイムを鳴らした。中からくたびれた感じの女がでてきた。

「誰ですか、あなたは」


「あ、俺は小林探偵事務所のものです」

俺はポケットにしまっていた名刺を渡す。


「あの息子さんの件ニュースで見てまして何か力になれたらと」

母親の顔はぱっと明るくなった。

「どうそ、なかに入りください」


俺は家の中にはいった。由梨の言っていた通り部屋は散らかっている。


「すいませんね。息子が亡くなってからなにもする気が起きなくて」


「いえ、気にしないでください、それで今はどんな状況ですか」

俺は早速本題にはいった。

本題に入りながらも散らばっている書類を目で追った。なにか証拠になるものはないか・・・てか証拠については由梨が探せばいいんじゃねえか。

「息子は勤めていた会社でパワハラを受けていました。毎日のように私にメールで報告がありました。サービス残業も当たり前、休日も仕事と。休む時間なんて無かったと、だからあのこはストレスと過労によって死んだんです。だから会社に責任をとってもらいたいんです」


「そうですか。ではまずは会社の勤務体制を調べてみます。ちなみにニュースでの話ですが、息子さんは生命保険に入られてたと。若いのにしっかりしてますね」


「はい、たぶん息子はいつか自分が死ぬのをわかってたのかも知れません、たまたまご近所に保険屋さんがいましたので」


「あのご主人は?」


「主人も昨年亡くなりました。心臓発作で」


「これは失礼しました。」


とりあえず、俺は会社に調査をするという名目で部屋をでた。


「どうだった伯父さん」

家に帰ってきた途端由梨が聞いてきた。


「ああ、やっぱり息子の死は会社のせいだと言い張ってたよ、すこし会社のほうにもいって職員に聞き込みしたが、やはりそんなブラック企業ではなさそうだ」


「社長にマスコミがきたらそう答えろとか言われてるんじゃないの」


「まあ。その可能性も否定はできないが、俺が聞き込みをする限りその息子の勤務態度に問題があったとかそっちのほうがよくでてきたぜ」

やはりニュースで報道されている印象と同じのようだ。


「なんだかよくわかんないね。お父さんの死因は心臓発作だっけ?そういえば私あの人の死因きいてなかった」


「ああ、母親に聞いたけど息子も心臓発作だとよ。遺伝がどうのこうのいってたがなんともな」

「で、書類はみつかった?」


「いやだめだった。由梨お前いけるか?」


「うん、私やるよ。ただ今回は息子さんにばれないように慎重にやる」


「そうだな。その息子の真意も分からんしな」

俺は由梨に無理をしないようにという意味も含めて言った


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