母親について
ち、今日もはずれか。
俺はラジオの電源を切った。家の扉が開いた音が聞こえた。
勢いよく飛び出した割にはすぐに帰ってきたな。
「なんだ、散歩はもういいのか?」
由梨は無反応だった。ふと様子がおかしいことに気づいた。
「なんかあったのか由梨?」
由梨は下を向いたまま話し始めた。
「さっき、あの公園で私と同じ存在のサラリーマンの人とあったよ」
私と同じというのはつまりそういうことだ。
「そうか、そいつはなんだって?」
由梨はその男と話した内容を俺に伝えてきた。
「なるほどな、裁判をして息子の無念を晴らしたい母と、それを止めないと成仏できない息子か」
なんともまた金にならない案件を持ってきたな。
「で、お前はどうしてそんなに暗いんだ」
「うん。その人に成仏できないのはこの世に後悔と未練があるからっていわれていろいろと考えちゃって・・・」
由梨は、はっとなって
「ううん、私のことは良いんだ、それでさ伯父さん、そのサラリーマンの件てニュースになってるの」
俺は記憶をたどった
「ああ、そういえばそんな話が1ヶ月くらい前にあったな、ニュースにもなってたよ。母親が会社相手に争っているって。でも労働基準も満たしているし、職員の満足度も高い、まあいわゆるブラック企業とは正反対ってことで母親がネットやら何やらで叩かれまくってるやつさ」
「そうなんだ、でもその男の人は今もお母さんが争っててみてられないって」
「そう、ろくな証拠もないのにむしろその男は残業も少ないし仕事もあまりできなかったらしいぞ。それなのに母親は息子とのライソのやり取りを証拠として会社と争っているときたもんだ」
どう考えても勝てるはずはない。なのにそこまでして裁判をおこすのはやはり労災金目当てなのだろうか、それを由梨にも話そうと思ったがやめた。
「由梨、悪いが、今回は俺にもどうしようもできないぞ」
「そう」
由梨は黙って隣の部屋に入ってしまった。
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