ケース2 斎藤 健二(享年26)
あの忌々しい事件から2ヶ月が過ぎたころだ。事務所は静かだった。
あの事件のあと、噂を聞きつけたマスコミが伯父の下に毎日のように取材がきていた。
そのおかげもあってか依頼も増えていた。依頼の大半は不倫や浮気などの依頼が主であった。捜査には姿の見えない私も借り出されたこともあった。始めのうちは順調にみえたが伯父のいい加減さが段々とばれていき2ヶ月たったころには事務所には誰も来なくなってた。
伯父は椅子に座って競馬中継をラジオで聞いていた。
私は呆れながらラジオのスイッチを切った。
「ねえ、伯父さん仕事しなくて大丈夫なの?」
今大事なところなのにと伯父が文句を言う。
「いいんだよ、俺はあんな小さな仕事なんかしたくないから、おっぱらってやったんだ」
私には負け惜しみにしか聞こえず
「何言ってんだよ、捜査のほとんど私がやってたじゃん、伯父さんはマスコミから金巻き上げてただけじゃん」
「おめえそんな言い方すんなよ、それよりお前あれからお前のようなやつ見かけてないのか?そこから大きな仕事があるかも知れねえ」
私はムカッとした
「あるよ、浮気調査のときとか外にでてると同じような人たくさん見かけるよ」
「なんだよ、なんで教えてくれなかったんだ」
「別に言われてないし。それにあんな思いなんてもうしたくないしね」
伯父ら罰の悪い顔をした。
「まあ、自分で仕事見つけてきてよ」
私はめんどくさくなって外に出た。
私はあの事件以降あの公園には行っていなかったが、ふとあの公園に行ってみようと思った。
公園についたがあの子はもういない。当然だ。
ふと引き返そうとしたが、ベンチにサラリーマン風の男が座っていた。
こんな時間に・・・さぼりか。いやあの人からはまがまがしいオーラがでている。
私と同じだ。この2ヶ月いろいろと外にでていたが。やはり私と同じような人はたくさんいた。
まあ一日に何百人を亡くなっているのだ。私のような存在がいてもおかしくはない。だが私はその存在を見てみぬ振りをしていた。と考えているとそのサラリーマン風の男と目が合ってしまった。しまった。男はこちらをみて声をだした
「きみもしかして僕がみえるの?」
無視することもできたはずなのに私はそうしなかった。
「はい、おじさんも私が見えるんですね」
男はふっと笑い
「おいおい、おじさんは酷いな、僕はまだ26だよ」
その風貌からとても沿うには見えなかったが・・・
「おじ、お兄さんはこんなところでなにをしてるの」
「ああ、実はわかっていると思うけど僕は死んでさ
わかってはいたけど私はどきりとした。
「いつもいつも仕事が忙しくて、ほんとにつらかったんだ。そんなある日僕は目が覚めて立ち上がったんだ。でもベッドには僕が寝ているんだ。おかしな話だろ、最初は何だと思ったんだけどためしに職場に行ってみたんだ。
けどだれも僕に見向きもしない。それどころか課長は俺が無断欠勤したことを怒っているんだよ。ここにいるのに。おかしいと思ってもう一度家に帰ったんだ。やっぱり俺は寝ていた。なんども起こそうとしたけど声は届かない。あ、ごめん初めて会った子にここまでべらべらしゃべって」
「いいですよ。続けてください」
「うん。ありがとう。それから三日がすぎたころに田舎の母ちゃんがきて俺が死んでいることが発覚したってことさ
私は聞いた
「あの死因は何なんですか?」
「うん不明死なんだってさ。でも母ちゃんは過労死だって思っててさ。あ、よく僕が母ちゃんに仕事が大変だって愚痴をこぼしてたのもあるんだと思うんだ」
「じゃあ、お母さんは今職場と揉めているの?」
「そうだね。会社相手に裁判を起こしているよ。過酷な仕事環境による過労死だから労災だと。そうじゃないと僕が報われないと必死にね。でも僕はやめてほしいんだ」
「なんで?お母さんはあんたのために動いているんでしょう」
「僕はさ、確かに死んでしまって母ちゃんに悲しい思いをさせてしまった親不孝ものだよ、けど僕は生命保険に入っててさ。母ちゃんは女でひとつで僕を育ててくれた、贅沢やおしゃれもできず必死に働いて僕を育ててくれたんだ。だから僕の生命保険のお金が降りて生活はかなり楽になったはずなんだ、それなのに今も必死になって争っていてみてられないんだこれからは自由に生活してほしいのに。僕が成仏できないのはそこなのかも知れないね」
なるほど、なんだか複雑だな。どうしたものか
「じゃあ。あんたはお母さんが裁判をやめれば成仏できるのかもってことなんだね」
「うん死んだはずの人間がこの世に残っているっていうのはこの世に未練があったり後悔していることがあるからだと思うんだ、君もそうだろう?」
突然の質問に私は節目がちに黙ってしまった。
それを察したのか
「ああ、ごめん失礼なことをきいてしまったね。じゃあ僕は少し母ちゃんの様子をみてくるよ」
そういって男は去っていった。
この世に後悔と未練・・・私はしばらく立ち止まっていた。
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