覚悟
沙夜は相変わらず目を瞑っている。
さてと…
「また、死のうと思ってた?」
私は声をかける。
「えっ」
沙夜は私の声で目を開ける。
「暇そうだから来てやったよ」
「由梨さん?ねえ本当にあの2人は来るの?」
「来るよ。ここに来る前にこの病院の近くの森に隠れてるのを確認した」
「ばれなかったの」
「ばれないよ、私の姿は見えないからね」
「でも私には見える」
「それが不思議なんだよ、それにしてもあの女すごいな、脱獄なんて。せっかく意識が失くなるくらいに鈍器でぶん殴ってやったのに」
私はその時の様子を再現するように手をスイングさせる。
「あなたがやったの」
沙夜は目を丸くする。
「ああ、ムカついたからな」
「大胆なんですね、ヤンキーって」
「ヤンキーじゃねえって」
「あの、由梨さんは何で…」
沙夜は何とも複雑な顔をして言う。
「あ、ああ交通事故だよ。あんたには関係ないよ」
詮索されるのは嫌なので私は冷たく言い放つ。
「成仏できない人と会話ができるんですか?」
「そうみたいだね、でも死んでないやつと話せたのは初めてだけど」
「実は死んでるとか…」
沙夜は自分の体を触る。
「死んでねぇよ、あんたは生きてる。この町で殺された奴らの分も生きろよ」
「でも、あの2人はまだ来ないよ」
「時間の問題だよ、あんたの顔を見てから2人でこの町を出る計画を立ててたよ」
「由梨さんは、なんで真奈美を殺さなかったの?」
「は?死人に人殺しなんかさせんなよ、私は地獄に落ちたくないからね」
(この人はなんで成仏していないのだろう、聞いても怒られるだけか。ヤンキーだし)
「あんた、今またヤンキーとか思っただろ?」
「思ってない!!思ってないです」
「そう、でもさ。丸投げしといてなんだけど、どうするつもりなんだ?」
「私の顔を見に来るんでしょ。なら直接話すわ」
沙夜の顔に力が戻る。
「殺されるかも知れないよ」
「そしたら、成仏できないから、また私のところに由梨さんが来てくれるんでしょ?」
沙夜はニヤリと笑って見せた。
「ちっ、私はそういうんじゃないって」
私は頭をボリボリとかく。
やばい伯父の癖が移ったか。
「冗談です、でも多分私は殺されないから大丈夫ですよ」
「そうかい、まぁ一応私もここにいてやるよ」
「ありがとう、由梨さん」
「べ、別にお礼なんて言われることじゃないよ」
私はリアクションに困ってそっぽをむいた。
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