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カミーユはリタに寄り添いながら、優しくリタに話しかけた。
「お嬢様。私はカミーユ・ウラジュネスと申します。お嬢様のお身体を診させていただいておりました。お嬢様は何を最後に覚えておられますか?お嬢様は、一年と眠り続けていらしたのです。」
カミーユが告げた言葉に、リタは頷いた。自分が何も分からない原因が分かった気がしたのだ。
「ごめんなさい…何も、覚えていません。」
リタの言葉にカミーユは微笑んだ。
「大丈夫ですよ。長く眠り続けていたのです。仕方ありません。記憶がないのも、長い眠りで頭が混乱しているからかもしれません。」
カミーユの言葉で一番安堵したのは男性と女性のようだった。ロデリックは眉間にシワをよせ、何かを考えている様子だった。その後もカミーユはリタの診察を続けた。
「記憶がないと言っても、生活に関する事は覚えていらっしゃるようですね。もしかすると何かの拍子に記憶がもどるかもしれませんし、戻らないかもしれません。」
「そうですか…」
「このような事は私も初めてです。お嬢様に何があったのかわからない限り、なんとも言えません。」
男性と女性はカミーユから話を聞き、ひとまず納得した様子だった。カミーユは二人に話すと、再びリタに向き直った。
「先ずはずっと眠っていたことで落ちた筋力を上げることからゆっくり始めていきましょう。食事は重湯からはじめましょうね。医療魔法による治療も続けていきますから、すぐに元気になりますよ。」
カミーユの言葉にリタは頷いた。なにはともあれ、自身が歩けないほどに筋力が落ちたことは感じていたのだ。
何も分からないけれど、リタはまずは動けるようになることを目標にすることにした。