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リタを抱き抱えたのは、サラリと美しい金色の髪に、空を移したかのような水色の瞳を持った若い青年。リタはその顔にそっと手を伸ばし、微笑んだ。
「きれ、な…め。」
声はかすれ、しっかりと喋れなかった。リタはおかしいなと思いながらも瞳を見つめた。
その瞳はリタの言葉を聞くと、じょじょに潤んでいった。
青年はまるで壊れ物を扱うかのような大事そうにリタを抱え、ゆっくりと歩きはじめた。
青年はリタを元いたベッドへ座らせて、自身は床に膝をつき、リタの左手を両手で握った。
そして、両手で優しくリタの手を動かし、自身の頬にリタの手を触れさせた。
「リタ…!リタ、良かった…!」
リタは青年が流す涙をあまり見ない方が良いのではないかと思ったが、青年はそれさえ構わずにリタの手を何度も優しく握り返し、そして頬を寄せた。
リタは空いた右手でそっと青年の涙を拭ってやることにした。
リタの手が、リタの意思で自分に触れられたことに、青年は一瞬だけビクッとしたが、すぐに受け入れ、そしてくすぐったそうにした。
青年は床に膝をついたまま、リタの手は決して離さずにリタを見上げた。
「リタ、君に二度と僕の涙をぬぐわせる事はしないと誓ったけれど、やっぱり僕は君が居ないと駄目だった。」
青年は切実そうにそう言うと、ゆっくり立ち上がりリタの横に座った。
そして、おずおずとリタの肩に手を触れるとギュッとリタを抱きしめた。
「リタ、リタ…!もう、離さない!絶対、君を離さない。もう、二度と君を危険な目には遭わせないと誓うよ。」
青年がそうしてリタの肩に顔を埋めて呟く。しっとりとリタの肩が濡れはじめ、リタはとりあえず青年の肩に手を回し、ぽんぽんと肩を優しくたたいてやった。
青年は何も言わなくなり、ただただリタを抱きしめて離さなくなった。リタはどうしていいか分からず青年を慰めるようにぽんぽんと肩を叩き続けた。