第七話 シュゼット家のお茶会②
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さっき、イブが私たちを二人きりにするためにどこかに行ってしまってから、私たちのいるバルコニーには沈黙が流れている。
至急どうにかしなくてはならない。
それだけはわかるのだが……
「あの……イブはどこかに行ってしまったし、せっかくのミルクティーが冷めてしまいますから良ければいただきませんか?」
「……お言葉は嬉しいのですが……。僕は従者です。お嬢様の席に座ることはできませんし、ましてやお嬢様の分のミルクティーを飲むなんて……」
レオ様は、主従関係を気にしているみたい。
細かい性格も格好いい……
もうなんでも格好よく思えてしまう。
不思議だ。
「それなら、先ほどイブが私の相手をしておいて欲しいと言い残していたではありませんか?
立ち話が良いのなら私も立ちます。それとも、私とお茶を飲むのは嫌?それなら構いませんわ……」
自分で言っておきながら、一緒にお茶を飲むのが嫌と言われたらどうしよう、立ち直れないかもしれない……なんて、悲観的になってしまった。
「違う!!嫌なわけない!!あ……、嫌ではありません、喜んでお相手させていただきます。」
……っ!!
「は、はい」
レオ様が声を荒げるなんて……。
敬語が外れていて……真剣な顔だった。
彼は本当に嫌ではなかったみたい
良かった……
*
*
「レオナルドさん、ミルクティー美味しいわ。いれるのがうまいのね!」
「お褒めに預かり光栄です。それと、さんはいりません。レオナルド、と呼び捨てでお呼びください。」
嬉しそうにふわりと笑うレオ様。
私はそんなレオ様の笑い方が好きだ。
見ていると落ち着く……。
でも、いつかお腹を抱えて爆笑しているレオ様も見てみたいな。
よし!当分の目標にしようっと!
レオナルド……かぁ。
レオ様って前世で2年くらい呼んでたから変な気分。
「……レオナルド……。ふふ、呼び捨てで呼ぶなんて、変な感じですわ。」
「そうですか?僕は従者の身分なので当たり前ですよ。それに、僕も女性を名前で呼ぶのは貴女が初めてなので、変な感じです。だからおあいこですね。」
そう言ってふわりと笑うレオ様。
おあいこ……か。
それに、女性を名前で呼ぶのは私が初めて……
へへ、嬉しい。
ほぅ……幸せ過ぎて、頭がふわふわしてきた。
イブに感謝しかないなぁ。
「マリア様は……趣味などお持ちですか?」
わ、レオ様から話しかけてもらえた!!
趣味……趣味は……
「うーん、目立った趣味は無いけれど、お菓子作りや読書が好きですわ。レオナルドは?」
「僕ですか……僕は休日も仕事を覚えるのに使っているので……趣味も仕事ですかね、はは。でも僕も読書は好きですね。お菓子作りは……食べる方が専門です。」
わあ、休日も仕事してるんだ……すごい。
本の話なら盛り上がれるかしら?
お菓子を食べる方が専門だなんて……ふふ、レオ様って、こんなに面白い人だったのね。
「ふふ、面白い人……それなら……次に遊びに来るときはお菓子をお持ち致しますわね。」
「あ!いや、そういうわけでは!」
「いいの。それなら、私の趣味に付き合うと思ってちょうだい?」
「……はい。」
へへ、レオ様に手作りのお菓子を食べてもらう口実ができたわ。
「レオナルドは、どんな本を読むのが好きなの?」
「僕は……ファンタジー系とか……あとは……誰にも言わないでくださいよ!……恋愛系も読むんです……。」
「まあ、それのどこが恥ずかしいの?きっとみんな読んでるわ、大丈夫よ!私も大好き!」
「そうなんですか?なら……良かった。」
再びふわりと笑うレオ様に気が緩んだのだろう。
……1つのお話として……私の今を伝えたらレオ様は何て言うかしら。
……だめ!本当の話だとバレたら大変だわ。
聞いてみたい気持ちと、聞かない方がいいという気持ちが混じる。
どうしよう、参考までに聞いてみてもいいかな?
もしかしたら……受け入れてくれるかもしれない……
それに、私の話と彼は思わないのよ、大丈夫……。
「ねえ、私が読んだ本のなかにね、前世で死んでしまった女の子が、自分の好きだったお話の中に生まれ変わって、前世からずっと好きだった人に出会うっていう話があるの。彼女は幸せになれると思う?」
「面白そうな話ですね!うーん、僕は幸せになって欲しいです。きっとなれると思います。
それで?実際はどうなったんですか?」
「まだこのお話は完結していないの。だから私にもわからないわ。でも、私も幸せになりたい……じゃなくて、なって欲しいわ。」
あっぶな。口が滑った……
「完結してないのかー、じゃあ、完結したら教えて下さいね。」
良かった、気にとめてない。
「はい!」
レオ様が幸せになって欲しいって……!
わたしに向けた言葉じゃないのはわかってるけど、それでも嬉しい。
レオ様に聞いて良かったわ……。
ちょうど話が終わったところでイブが帰ってきた。
「お待たせ致しましたわ!レオナルド、ありがとう。もう下がっていいわよ。」
「……はい。お嬢様。」
「レオナルド、またね。」
「っ……はい!」
レオ様が退出したのを確認して、イブがキラキラ目を輝かせて聞いてきた。
「それで!レオナルドとはどんなお話を致しましたの??仲良くなれましたの??」
「えと、ま、まあ。趣味の話を致しましたわ。私が趣味でお菓子を作ったら、彼に食べてもらえることになりましたわ!たぶん……仲良くなれた……のかな。」
「すごいですわ!良かった!本当に良かった!」
「でも、まだお友達にはなれていませんわ。お友達は、対等な関係でなくてはいけないのですもの……」
「大丈夫ですわ!これからも私と遊ぶときに会うのですもの!きっとすぐお友達になれますわ!」
イブ……
「ありがとう……!イブ、大好き!」
「へへ、あ!そうですわ!明日も明後日も、どこかに遊びに行きません?私、毎日暇ですわ……初等部に入るまで後、2年ほどありますし……」
「私も暇ですわ!それなら私、1度で良いから街に出てみたかったの……明日は街に行きませんか!?」
「いいですわね!行きましょう!」
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それからも色々な世間話で盛り上がり、彼女たちのお茶会は夕方まで続いた……
それに加え、明日も明後日も、下手したら2年間毎日、彼女たちは遊ぶのかもしれない。
夕方、声をかけに来たシュゼット家の使用人や、マリアを迎えに来たクリスティ家の使用人はそれを悟り、青ざめた。仕事が増える……
だが、ただ一人。
マリアの母、アリアだけが「いいじゃない、楽しそうね!」と高らかに笑ったという。
次回は、イブと街に遊びにいきます!