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閑話 俺が一目惚れしたのは……

ブックマークをしてくださった方、

見てくださっている皆様、ありがとうごさいます!


毎日、少しずつ読んでくれる方が増えていることに感動です!


これからもよろしくお願い致します!



レオナルド視点です






 それは、冬の寒い日だった。

 俺は行く宛もなく、歩き疲れて座り込んだ。



 辺りが暗くなってくると、雪が降り積もってきた。



 俺もこのまま埋もれてしまうと思った。

 このまま、死んでしまうと……。本当はそれでも良かったんだ。




 でも、気を失いかけたとき、男の人が俺を拾ってくれた。



 きっとまた、奴隷のように扱われると思った。


 俺は、ずっとそうやって生きてきたから。

 でももう俺の体は動かない。


 それに、なぜかその人の腕の中は温かくて、安心できた。



 *

 *

 *



「お父様、この子はだれ?」



 ……暖かい……いい匂いがして……ここは……?

 あぁ、あの男の人の家かな……



「かなり衰弱していて……なぜか拾わなければいけないと思ったんだよ。イブ、お前はこの子がうちにいるのは嫌か?」



「ううん、私は構いませんわ!それに、人助けをできるお父様が、私は大好きです!」



「そうか……いい子になったな、イブ……お父様はとても嬉しいよ……!」



 声のする方を見ると、微笑ましい家族が目にはいる。


 俺を拾ってくれた男の人が、その娘の頭を愛しそうに撫でている姿。



 俺もこんな風に1度でもしてもらえてたら……



 今思っても仕方がないことだ……

 ここではどんな風にされるんだろう。


 娘には優しそうだけど……。

 もう痛い思いはしたくない。



 そう思うと、一気に不安が押し寄せてきた。



 すると彼らが俺が起きたことに気づく。


 どうやら俺は泣いてしまっていたらしい。



「大丈夫ですか?僕が君を保護したんです。君の名前は?親御さんは?どうして君はあそこにいたんですか。」



「ぁ…。」



「お父様、急に質問攻めにしては可哀想です!私のハンカチを貸してあげますわ。」



「あ、ありがとう。俺は、レオナルド……。

 親に捨てられて……あの、助かりました。ありがとうごさいます。もう大丈夫です。」



「そうか。君は帰るところはあるのかい?」



「…………ない、です。」



「レオナルド。うちの子になる気はないかい?娘にも聞いたんだが、構わないそうだし……。妻も、今ちょうどお茶を入れに行っていて居ないが、僕と同じで君のことをなかなか気に入っているようだよ」




 うちの子……??それはどういうことだ??


 この人たちは、俺を引き取る気でいるのか?

 どこのだれかもわからない子供だぞ?


 育てるためにはお金がたくさんいるし……


 血の繋がりのある親にも見捨てられたのに、この人たちは見ず知らずの子供のためにお金を使おうとしてるのか?


 何者なんだ。


 俺は……俺は……




「あの、失礼ですが、俺を養うほどのお金があるのですか?俺は……邪魔では……」



「あはは、君に聞いておいて、僕たちは名乗っていなかったね。すまない、僕も慌てていたようだ。改めて。僕はヨハン・シュゼット。肩書きとしては公爵かな。」



 っ………



「私はヨハンの娘の、イブリン・シュゼットですわ。」



 ……こ、公爵……

 爵位のなかで1番上……だよな……?

 国でも3人しかいない重要人物だったんじゃ……


 そんな人に俺は拾われてたのか……

 どんな確率だ……?



「そ、そうですか。でも、俺は……」



「そうか……でもね、僕も引き下がるわけにはいかない。一応保護したからには、最後まで面倒を見させてもらうよ。」



「あ……」


 逃げられない。

 シュゼットさんの顔が優しいものから、険しい顔になった。



「こんなのはどうかな?イブリンの従者としてうちで働く。その代わりに、部屋と、食事と、学園に通える分の給料を払おう。」



 働く……そうきたか。

 イブリン……さんの従者として、俺が?

 どうせ引き取られるなら、従者としての方がいいかもしれない。


 それなら正当な労働の対価だろう。



「……じゃあ……、それで……よろしくお願い致します。」




 *

 *

 *




 季節は過ぎ、春になった。

 お嬢様は俺より5つ年下で、なんと俺の方が年上だった。

 あんなにお嬢様の方が大きく見えたのに。俺が寝ていたからか?

 それに、しっかりしているんだな、最近の子供は。いや、公爵令嬢だからか?まあいいや。


 俺はお嬢様の従者をしながら、独学で基礎知識をつけて中等部からお嬢様と同じ学園に入ることになった。






 今日は、クリスティ家でお茶会がある。

 お嬢様を起こさなくちゃ。



「お嬢様!朝です!起きてくださーい!」



「嫌だ!布団が私から離れたくないらしいの!だから私も布団から離れないわ!」



「遅れて、恥をかくのはお嬢様です!」



 お嬢様は最近僕に気を許してくれてきたのか、小さな我が儘を言うようになった。


 従者としてはそれが嬉しくて嬉しくて、お嬢様のためならなんでもできそうだ。


 お嬢様が笑うと俺も楽しくなるし、お嬢様が泣くと俺も泣きたくなる。



 これが恋なのだろうか。それとも、愛着?



 *

 *



「奥様、お嬢様、行ってらっしゃいませ!お茶会が終わる頃にお迎えに上がります。」



「わかったわ。レオナルド、家のことを頼むわね。特にヨハンを。彼、今日は休暇だから何かしようとして家中をボロボロにしかねないわ。よろしくね」



「レオナルド、私、今日はいい日になりそうな気が致しますわ!行ってきます!」




「奥様、承知いたしました。お嬢様、あまり張り切りすぎないように行ってらっしゃいませ」



「もーう。わかったわ。じゃあね!」



 お嬢様は元気に馬車にのっていってしまった。

 今日も忙しくなりそうだな。



 *

 *

 *



 あっという間に迎えに行く時間になってしまった。


 旦那様は、奥様の言うとおりだった。



 高い壺を割りかけたり。


 料理長に厨房を貸してもらって、一人でパンケーキ作ろうとして失敗したり。


 自分の家の庭なのに、散歩に出掛けて道に迷って帰ってこなかったり。



 この人は本当に公爵として大丈夫なのだろうか

 仕事はできるみたいだけど……。




 1日を振り返りながらお嬢様を迎えに行くと、お嬢様は誰かと話しているようだった。


 お嬢様の陰になって顔は見えない。

 ドレスが見えたからきっとお嬢様と同い年くらいの女の子なんだろう。




 しばらく待っていると、お嬢様が俺を呼んだ。


 お、やっとか、と思ってドアを開くとお嬢様と話していた相手の顔が見える。




 はっきり言うと、一目惚れだ。


 真ん丸で大きな瞳や、高くて整った小さい鼻、血色のいい口。

 ふんわりウェーブのかかった栗色の髪は光があたってとても綺麗で……。



 今までお嬢様に感じていたのは、ただの愛着だったのだと気づく。



 比べ物にならなかった。


 この胸の高鳴り。

 今にも心臓が口から飛びだしそうだ。



 彼女を見ていると、目があった。

 彼女は俺を見て驚いている?みたい。

 俺たちだけ時が止まったようだった。



 なんでだろう。

 まるで怖いものを見たような顔。

 俺は嫌われてしまったのか?



 そんなことを考えているとお嬢様が俺の名前を呼んだ。


 しまった。


 そう思っていると、

「あの方は……?」

 彼女が俺のことをお嬢様に尋ねているのが聞こえてきた。


 興味をもってもらえているのか……?




「あら、そう言えば、紹介がまだでしたわね!レオナルド、こちらに来なさい。こちら私のお友達のマリアよ!マリー、こちらレオナルド。冬から私の従者として勤めてもらっているわ。」



「こんにちは。マリア・クリスティよ。よろしくね」



 彼女はマリアと言うらしい。

 それより聞き間違いか?クリスティって……

 この人まで公爵令嬢だなんて……

 俺のこの恋は叶わないのかもしれない。




「こん……に……ちわ。イブリン様の従者しております、レオナルドと申します。……よろしくお願い致します。」



 あぁぁぁ。テンパった。失敗した!


 でも彼女は俺が自己紹介をすると、とても嬉しそうな顔になった。




 可愛い……可愛すぎるだろう。




「行かないのか?そんなにとろとろしてると馬が寝ちまうぞ!」



 御者のおじさんが笑って言った。

 まだ彼女を見ていたいのに。



「今参りますわ!マリア、また一週間後ね!レオナルド、行きますわよ。」



 一週間後??

 どういうことだ……?

 一週間後……一週間後!



 うちでお茶会がある!

 彼女もお茶会に来るのか。



 じゃあ、また一週間後に会える。



 俺は一週間後、必ず彼女に話しかけようと心に決めた。


 身分が違うことはわかっている。年の差もある。

 仲良くなるだけでいい。



 とにかく、一週間後会えるというだけで嬉しい単純な俺だった。



レオ様、いかがだったでしょうか。


次回は、いよいよシュゼット家でのお茶会です!

マリアとレオはどうなるのか……

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