第二十六話 アイザック撃退
今までで1番長かった分、4日かかりました( TДT)
お待たせいたしました。
「ふぁーー、つかれちゃった!」
私は大きく伸びをしながらあくびをする。
時は、レオをウラノスに任せ、スイに今までの経緯を話し終わり、先生にレオの早退を報告し終えた直後の休み時間。丁度、50分のお昼休みだ。
「お疲れ様ですわ、マリー、さっそく連れていかれてからのお話を、中庭でランチでもしながらどうですか?」
「お!いいね、もうイブに聞いてほしいことたくさんあるんだから……」
隣には私をいたわってくれる親友。イブには話したいことがたくさんある。先生に私が連れていかれてから、まだ一時間半ほどしかたっていないのに、これ程までに話したいことが溜まるとは。
「僕もご一緒してもいいかな?」
「いいよ、いつものことでし……あ、いいですわよ!エドワード様がいた方が話が弾みますわ!」
「そうですわ。是非、ご一緒に。」
「そうかい?それは嬉しいね。」
エドワード、私、イブは、お互いにいつもは見せない、丸ごと仮面を被った顔を作り、弧をかいて笑う。
この間、私たちはお互いを守るためにも、教室では仮面を被り、ファンサービスに徹すると決めた。
普段、私とイブは2人だけなら他と変わらない令嬢だ。身分も釣り合っていて、注目を集めることもない。
だが、エドワードが加わると話は別。エドワードは人気をひっつけながら歩いているも同然。いつも注目の的だ。隣にいる私たちも自然と注目されてしまう。
他にも、王太子と公爵令嬢が気楽に話すことは、無礼……たとえ今はよくても、やはり男尊女卑のこの社会ではバッシングを受けかねない火種となるとか、社交の場に出たときにボロが出にくくなり、良いだろうとの意見もあった。
加えて、いつでも憧れられる存在であった方が立ち回りがしやすく、これから神の手伝いをするときに役立つだろうと思ったのだ。
エドワードはいつもキラキラ王子様、私はふわふわ可愛い公爵令嬢、イブは静かで優しい公爵令嬢。それぞれ決めたキャラを頑張って演じている。
「では、行きましょうか!」
私は、ゲーム中いつも見ていた、マリアのあざと可愛い笑顔を真似するように笑う。
「ああ、行こうか。マリア嬢、イブリン嬢」
エドワードも王子全開、陰りのある静かな笑顔で答えた。いつもはもう少しキラキラがマシなのに……
でも、どちらのエドワードも、ゲームの中の彼とは違う。
たぶん、ヒロインの私がレオ一筋、イブとは親友になった事でエドワードの性格が変わったのだろう。彼自信もレオと仲良くやっているから、レオから教わることも多いらしい。
ゲームの中の、無能で手の打ちようがないほどの、最悪王太子の姿はなく、代わりにどこに出しても恥ずかしくない、最高の友人である彼がここにいる。
考え深いものだなと思いながらふたりの横を歩く。
今私の隣を歩いているイブは、本当はエドワードに叶わぬ恋をして私をいじめる役だった。こんな風に3人並んで歩くシチュエーションなんてもっての他だっただろう。
こうして過ごせていることは、奇跡なのかも…‥そう思ってやめた。奇跡じゃない、私が生きた結果だ。
♡◇♤♧
「ぬあぁぁーー!」
中庭にでて、木の下の芝生にハンカチを引いて腰かける。気が抜けた私は思い切り叫んだ。
「マリー、ここは人が少ないとはいえ、数人はいるのですよ。あまり叫ばれてはまた面倒……いえ、注目を集めることになりますわ。」
当然のことながらイブに注意される。
だが、ここ最近イブが言葉の選択を誤ることが多くなったというのは気のせいだろうか。イブリンの性格としてプロフィールに載るほどの、『超毒舌』が多少なりとも出てきているのかもしれない。
「あははっ、イブは本当に面白いね。」
「面白くありませんわ。それで?本題に入りましょう。」
イブは冷ややかな視線でエドワードを一刀両断、話を進めた。私はエドワードの意見に賛成なんだけどな~~、本題ね、本題はー。
「結論を初めに話すと、先生は優しい人だった。全部誤解!」
私は結論から聞きたい派だ。だが、その結論が初めから理解されるとは限らない。
「はい??ロシャード先生がですか?」
「いや、それはないだろう、怖いの塊だろ」
イブは難しそうな顔をするし、エドワードは私をバカにしたような顔で見てくる。
やっぱりロシャード先生のイメージは強力なのか。
ごめんね、先生。内緒って言われたけど私の親友にだけは話させて!
「本当なんだって!例えば眉間のシワ、あれ老眼のせいだったんだよ。それに、すごく面白いひとだった。」
「へぇー、老眼。それでシワがよってたのか。」
「面白い……想像がつきません。」
イブは探偵のように顎に手を当てて考え込む。
「うーんとね、老化に回復魔法は使えないからって笑ってたよ!」
こういう時は、イブが納得するまで話してあげるのがいいんだよね、途中で諦めると不機嫌になっちゃうから。ふふ。
「あのロシャード先生が笑う………信じきれませんが、マリーが言うのだから本当なのでしょうね。」
お、今日は早かったみたい。
「そうなの。それで着替えも貸してくれてね。いま来てるやつなんだけど……」
「おー、良かったじゃないか。」
「うん!!乾いてる服ってやっぱいいよね。」
願わくば、レオの話はしたくない。はじめは聞いてもらおうかと思っていたけど、考えてみれば着替えを見られたなんて恥ずかしすぎるし、ましてやスイに蹴られて、頭をうって早退なんてレオも知られたくないだろう。起きてから甘えん坊になったなんて余計に言えない。
忘れてくれ、レオがいないことは気にしないで………
「それで?レオナルドはどうしたんですか?なぜか今はいませんけれど、マリーを追いかけていきましたよね、会えましたか?」
ぬあーーー、そうだよね、考えてみれば自分の従者が昼休みに来ないなんておかしいよね。しかも最後に見たのは私を追っていく姿。そりゃ心配にもなる。
どうする、本当のことを伝えるか?………嘘をつくのは嫌だなぁ、ぼかす………?うん、ぼかそう。
「ちゃんと会えたよ!レオは、ちょっとなんだかんだあって、頭が痛くなっちゃったからウラノスに連れて帰ってもらっちゃった」
だいぶぼかしたけど、嘘ではない。
「マリア……ウラノスに連れて帰ってもらっちゃったってそんな呑気な。忘れてるかもしれないが、ウラノスは神だぞ?」
「そうですわよ、あまり気安く使っていい相手ではございませんわ。」
うわぁ、それスイに言われたとこだなぁ。そんなに気にしないでいいと思うんだけどなぁ。たいして神らしくないし………
「うーん、まあそうなんだけどねー……まあそういうことだから、帰りにレオのお見舞い行っていい?」
「勿論いいですわよ。」
「あ、僕も………
エドワードが僕も行っていいか、と聞きかけたとき………
「やあ、皆さんお揃いでぇ!僕もご一緒していいかなぁ?」
アイザック…………やっぱり来たか。しかも丁度レオがいないときに………どうしよう、どうにかしなくちゃ。
「ああ、いいよ。君は………」
しまった。まだエドワードにはアイザックのことを話していない。
「これはこれはぁ……失礼いたしましたっ、私、アイザック・カートと申します。」
「あー、カート子爵の……。僕はエドワード・ルイス・フォテレシア、この国の王太子だ。よろしく。」
「よろしくお願い致しますっ。」
アイザックが最敬礼をして挨拶を終えると私とエドワードの間に腰かけた。
まあいい、これで問題を起こせばエドワードが自発的に消してくれるだろう。
______…………少々隣で殺気だっているイブが恐ろしくはあるが。
「今日はシュゼット嬢の従者殿はいないのですねぇ。どうかされたのですかぁ?」
イブの不機嫌に気付かないアイザックはわざわざイブに話しかけるような質問をする。レオのことだ。きっと近くにいないか探っているのだろう。
「彼は具合がよくないようで早退いたしましたわ。それに、私の従者がいようといまいと、貴方には関係ありませんわ。」
「申し訳ありませんっ………、差し出がましい質問をいたしました……。」
「わざわざ謝らなくても別によろしいわ。」
イブがバッサリ切ったことで、アイザックはそれに続く言葉が見あたらなかったようだ。しゅんと落ち込む姿は可哀想な小動物のようだが、謝るときもねっとりした話し方は健在だ。せめて相手が怒ってるときくらいは、はっきり謝れ、はっきり。
会話が途切れ、沈黙が流れる。イブは好き嫌いがハッキリしているからなぁ、でも大体嫌いの方に入る人は私達に危害を加える可能性のある人だ。
「あーーー、そう言えばアイザック様って、なに魔法がお得意ですの?」
私はこの空気に耐えかねて、話しかけたくもないアイザックに笑顔で話しかけた。
「僕は~、水魔法が得意ですねぇ、マリア様は何がお得意ですかぁ?」
「私………私は……
あれ、私って、なに魔法が得意なんだろう?
鑑定の時は七色に光った上、宝石を割ったからなぁ………全属性持ち……?聖女属性?なんて答えれば……
「マリーは光魔法が得意ですわ。ね?マリー?」
「へ?あ、ええ!そうね、そうです。私は光魔法が得意ですわ。」
イブが出してくれた助け船に乗って、私は光属性が得意なことにした。まあ、確かに光属性なら複合魔法も使えるし、ゲームの中でマリアも一番多く使っていた気がするし、光魔法が得意なことにしておこう。
「光魔法かぁ、美しいマリア様にピッタリですねぇ」
「あははは……ありがとう……ございます。」
美しいとか、急に来るから嫌なんだよね。
さっきから少しずつ近寄ってくる気がするな……
あー、もう!これ以上こっちに来ないで、気持ち悪いって。
「あ、この後お暇なようでしたら、僕に学校案内していただけませんかぁ?」
「昨日もお断りしたはずですわ……私は忙しいと。それに、案内は先生にしてもらった方が確実ですわ。」
「まあまあ、そう言わずにぃ~。」
断っても諦めないのはポジティブ思考、ねっとりした話し方はおっとりした性格だから…………なぜそれだけで済まされているのか。
私には、運営の考えることも、この世界の人々の感性も理解できないようだ。
私は、近付き手をのばしてくるアイザックから逃げるようにイブの方に座りなおす。それに気づいたイブとエドワードがニヤリと笑った。
「うふふ、誰しも困ったところはありますわよね……私の口も、時々私の意思とは関係無く、独り歩きいたしますの。あなたは首から上のようですわね………心より同情いたしますわ…………_____では……私たちは教室に戻りますわね。楽しいひとときをありがとうございました。行きますわよマリー、エド。」
「う、うん!!」
「シュゼット嬢は何をっ…………
「ご自分でお考えになってください。マリア、僕たちも行こうか。」
「あ、う、うん!では、さようなら!」
アイザックに別れの挨拶をして、スタスタ歩いていってしまうイブ。
アイザックの問いかけに、自分で考えろという言葉を残してエドワードもイブを追って荷物をまとめ、立ち上がる。
私もそんな二人を追って歩き出した。
アイザックは事態を掴めていないのか、ポカンとした表情をしている。私もきっと似たような表情をしていることだろう。
だって、だってイブが…………イブが、毒を吐いた!!
ゲームの時より酷いし、この世界に来てからもこんな分かりやすい嫌みは、聞いたことがない。首から上………頭だ……
「イブっ!アイザックにあんなこと言って良かったの!?私はすっきりしたけれど、イブの立場が……」
イブに追い付いた頃には、私の頭の中からアイザックはもう消え去っていた。イブの立場や、これから生きにくくならないかが心配で、アイザックどころではない。
「マリー、私はいいのです。元より他人から好かれようなどと思っておりませんわ。それに、今回は私自身が腹をたてた結果です、マリーが気にする必要はありませんの。それよりも、気持ち悪かったでしょう?気分は大丈夫ですか?」
イブ………なんていい子なんだ………私はなんて幸せ者なの…………うぅ………
いつの間にか涙が私の頬を伝う。だめだ、止まらない。
「いぶ、ありがとう………ありがとうね、いぶのおかげで、あいざっくのことなんか、すっかりわすれてたよぉ!……ありがとう………」
「マリー、泣かないでくださいまし。それは良かったですわ。さあ、教室に戻りましょう?」
「うん……」
「イブの事は大丈夫だよ。僕が守るんだから誰にも負けない。それに、僕のまわりにいる人がいじめられるわけないだろ、たちまち争いになる。」
そういってケラケラと笑うエドワード。確かに、王族にわざわざ目をつけられにいこうとは誰も思わないだろう。メアリー嬢も一人だったし、今はイブを守る側だ。
「ありがとう、エドワード。良かった……」
エドワードが守ってくれるならイブの安全は確実だろう。本当に良かった。
「あまり地位を使いすぎると、批判をくらいますわよ。ほどほどにしてくださいませ。」
ありゃ、イブの真面目スイッチ入っちゃった。エドワードは冗談半分だったんだろうと思うんだけどなぁ、それにもう手遅れ……………
「あはは、イブは真面目だからなぁ。」
「エドを思っての事ですわ。」
エドワードは再びあはは、と笑いながら後ろを見やる。
彼の目線を追うとそこには………木陰げに隠れている護衛の姿。胸元には王家の紋章が刺繍されている。
これだけならエドワードが自分の護衛を見たのかなと思うのだが。
実は彼ら、イブが単独行動をするときはイブの方についていく……そう、イブ用の護衛なのだ。それは、イブが階段から突き落とされたあの日からついている。エドワードなりにイブの安全を配慮した結果なのだろう。
ちらりと後ろを向いてアイザックの方を見ると、彼は途中まで追いかけてきていたらしい。
今は親指の爪を噛んで立ち止まっている。相当悔しいかったようだ。私もイブにあんなこと言われたら泣いちゃうなぁ、御愁傷様。
私は知らない。私の「アイザックの事なんかすっかり忘れていた」という一言が追い撃ちをかけたことに。その他にも、アイザックのことを考えているようでイブの事しか考えていなかったことに。
_____この日からアイザックは姿を見せなくなった。
先生に聞くと、引きこもりになった上、カート子爵の海外出張が決まったらしい。
私たちからすると、とっても嬉しい知らせだ。
カート子爵の海外出張は、アイザックルートを回避できたという証拠なのだから。
イブの一言が個人的には好きです。マリアの無自覚攻撃。
さようなら、アイザック(^o^)/~~




