第二十一話 アイザックルート
毎日投稿できなくてすみません!
スマホが調子悪かったので変えたらアプリ取り直しとか書き直しになってしまって……
そこからアイザックこだわってたので時間かかっちゃいました(。>д<)
今日は夕方にまた投稿できたらなと思っております。
コンコンコン……
馬車のドアが叩かれる。ああ、アイザックルートに入ってしまった。
彼はカート子爵の息子で、カート家は子爵とは言えども歴史のある家。昔から王家に忠実に仕えているため、実際のところ伯爵より力を持っていると言われている。
アイザックは、表面はニコニコしていて優しいけれど、本当は嫉妬深く、ヒロインはほとんどの確率で監禁される。捕まったら最後だ。
そして今、そのルートが始まりかけている……今すぐに逃げたい、でもドアがノックされた以上、それを無かったことにはできないし。開けなくてはならないだろう。
「すみません、前をゆく馬車が窪みにはまってしまったようで、カート子爵の物と思われる馬車なのですが……。私共が力を貸せば、すぐにでも抜け出せそうなのです。」
ドアをノックしたのはうちの御者の一人だった。
そして、前に停まっているのはやはりアイザックの乗った馬車。
どうしよう、私達が助ければアイザックはお礼を言いに私のもとへ来るだろう。出会うことは避けたいのだ。でもこの狭い道で、前に停まっている馬車、しかも、私達は状況確認のため1度足を止めてしまった。無視をすれば、お父様の面子は丸潰れだ。
「レオ、どうしよう。」
「助けたらどうなるんだっけ?お礼を言いに来たときに、マリーに一目惚れするんだっけ?」
「うん。ゲームのなかではそうだった。助けなければアイザックルートには入らなかったはずだし、アイザックは転校することになるはず。」
「____……じゃあそれでよくない?」
「良くないんだよ~!本当は発生時期がもう少し後なの。お父様の大切なおつかいで王宮に荷物を取りに行った帰り、急いでたからって理由で、しょうがなかったことになるの。でも、その理由もない、王宮に遊びに行って、これから帰るだけの私達には子爵の馬車を無視できるほどの十分な理由はない。公爵だから、法的には許されることではあるけど、世間が許さないわ。」
「そうだね……じゃあ今は、彼を助けることしかできないのか。」
「うん……」
そう。悩む余地もなく、助けるという選択肢しか、今の私達には用意されていないのだ。
それでも出会いたくないものは出会いたくない、嫌なものは嫌だ。
今ある幸せを守り抜きたい私は、助けることを渋った。
「……そんなに、身構えなくてもいい。大丈夫。そのヒロインに俺はいなかったけど、マリーにはいるでしょ。自分の大切な彼女くらい、完璧に守ってみせるよ。愛してる……」
そう言って、私の額に軽いキスをしてくれるレオ。
うぅ……うちの彼氏、かっこ良すぎませんか?
そうだよね、私も簡単に負けてられない。
アイザックルートに入ったとしても、レオのために抜け出すくらいの気持ちでいなくちゃ。
「じゃあ、俺も従者として行ってくるね。」
「うん。」
レオが手を振ってアイザックの馬車の方へ歩いていく。御者や、ついてきていた護衛、アイザックの使用人達に指示を出しているのが聞こえた。
レオは、私と話すときと、イブと話すとき、使用人と話すときで話し方を変える。
だから、私以外の人と話す所を見るたび寂しい気持ちになるのだが、話し方で私の特別さがわかるため、嫉妬はしない。
しばらく、爆睡中のイブの寝顔を眺めながら待つ。私にかけられていた膝掛けをイブにかけてあげると、イブは暖かさが心地よかったのか、なんだか顔が柔らかくなった。
それにしても、本当に起きないんだなぁ、以前イブが「私、1度寝たら殆ど何があっても起きられないの」と言っていたことを思い出す。
そして、クスリと笑ったときだった。
「お控え下さい。お嬢様は仮眠をとっておられますし、マリア様は少々お疲れになっておられます。」
「まぁまぁ、そう言わずに。お礼はしっかり言わないとね~。それに、寝ている人を起こすほど野暮な事はしないよ?起きているマリア様が君たちに指示を出したのだろう?マリア様にお礼を言わせてくれない?」
「どうか、お控え下さい」
レオの声と、アイザックの声が聞こえる。
レオは必死に止めてくれているみたいだが、アイザックは全く聞く耳を持たない。
「あ!」
___ガチャリ
レオのビックリした声が聞こえて、ドアが開いた。そこに立っているのはやはりアイザック。
「こんばんは、助けていただきありがとうございます!私、アイザック・カートと申し……ます……」
アイザックはきれいなお辞儀をして顔をあげた。
そして、私の顔をみた瞬間……固まった。
おそらく私に一目惚れしているのだろう。
その間にレオに、アイコンタクトで、少しは私も頑張ってみる、と伝える。レオは心配そうな顔をしていたけど、そのうちこくんと頷いた。
「こんばんは。当然の事です。困っている人がいれば助けますわ、お気になさらず。私は、マリア・クリスティと申しますわ。」
暗に、別に貴方だから助けた訳じゃないわ、という意味を込めながら自己紹介をしてみた。
私の自己紹介が終わると、アイザックがハッとしたように私のもとへ駆け寄ってくる。
「なんて優しい人なんだ、今度お礼にお茶でもどうですか~?」
私の手をとり、きらきらした目でお茶に誘ってくるアイザック。
ちょ、手!普通初対面の人の手を掴む!?
それに意味が通じてない、察してくれ。
お茶まで誘われて……はぁ。
「ごめんなさい、手を離してもらえますか?」
いつの間にか、しっかりホールドされてしまった手は、離そうと思っても離れない。ガッシリだ。
離してと言っても聞き入れてくれないし。
「学園同じですよね~、僕、入学式以来用事で行けていなくて……あ!良かったら明日案内してくれませんかぁ?」
ねっとりした話し方、童顔、もふもふの青い髪……自己中心的なところ。
ゲームのキャラとして人気は高かったけど、私は苦手だった。早く帰ってくれないかな、手を離してほしい。
「同じですわね、でも、私に案内してもらうよりも先生に案内してもらった方が確実ですわよ。」
「僕、マリア様に案内してもらいたいですっ。」
真ん丸な目で真っ直ぐ私を見つめるアイザック。
すごいぐいぐい来る…………
嫌です。そうはっきり言えたらどんなけ楽だろうか。相変わらず手は握られたままだし、さっきよりも強くなってきている気すらする。
「私、心に決めた愛する人がいますし、休み時間は忙しいので時間はお取りできないと思いますわ。手を離してくださいませ、痛いですわ。」
「え~、愛する人?本当にそんな人がいるのぉ?」
アイザックは、ますます詰め寄ってくる。顔に息がかかるほど近い。
もうなんでもいいから、コイツをどうにかしてくれ。私の化けの皮が離れて、萌葉が出そう。
萌葉が出るまでのカウントダウンが始まったところで、私より先にレオが声をあげた。
「俺がその愛する人で、マリアは俺の彼女です。それ以上彼女に近づかないでいただけますか?子爵の息子なら、それらしくしておいてほしいものですね。」
口調は丁寧なものの、言葉の節々で苛立ちが見え隠れしている。いや、隠れてないかもしれない。
「レオ………」
「君は、さっきの……君が彼氏ぃ?身分が違うよね、君は使用人だ。それにその態度は使用人失格じゃないのか?」
「はい。使用人なら失格ですが、今は愛する人を守りたい1人の男なので。それに、俺は必ず、彼女を幸せにしますよ。俺にしかできないことです。」
愛する人を守りたい1人の男なので……名言だ。
そして、私を幸せにすると、にこやかに言い切るレオ。格好いい……
私を幸せにすることはレオにしかできない。レオのお陰で、今でも私は十分幸せだよ。
「へぇ、言い切った……か。使用人の分際でぇ?仕事なくなるんじゃないかなぁ?僕は子爵の息子だよ?」
「ええ。言い切らせてもらいます。それに俺はマリアを守るためなら、仕事を失ってもいいですよ?それに、今こそ使用人ですが、いつか貴方より上の立場になってみせるので、以後お見知りおきを。とりあえず今日のところは、お引き取り願いたいですね。」
「ははっ、言うねぇ。いいよ、面白い。じゃあマリア様、また学園で。休み時間お喋りしようね」
「さようなら。」
アイザックは愉快そうに自分の馬車へと戻っていった。私は、さようならの前に、一生をつけ忘れたなと後悔をした。
「レオ……ありがとう……」
再び動き出した馬車のなかで、レオの肩にもたれかかりながらお礼を言う。
「いや、もう少し早く助ければよかったとか、そもそもドアを開けさせてしまったとか、手を握られたとか、思い返せば俺のミスばかりだよ。ごめんね。」
あれだけ頑張ってくれたのに、まだ彼は反省してくれているようだ。
「ううん、とっても格好よかった。でも、私のために仕事を失うのは良くないわ。私より自分を大切にして。それに、アイザックに触られたことで、やっぱりレオ以外に好意を持たれなくないと思ったよ。」
「自分より、マリーの方が大事だから無理だね。俺もマリーに俺以外の誰もさわって欲しくないよ。」
「レオ、大好き。他の誰かに触られないように頑張るよ。アイザックも、休み時間に来たらイブにも助けてもらって追い払う。でも、これからも私がダメだったときは助けてほしいの。」
「勿論だよ。愛してる、マリー。これから休み時間は、いつも以上に早く行くよう心掛けるね。」
「うん!ありがとう。」
_____アイザックがいたときも、そんな会話が行われた時も、イブの家につくまでも、イブはやはり爆睡していた。この日、イブは馬車の中で、3時間ほど仮眠をとったらしい。そして家に帰ってからも朝までぐっすりと眠った。
翌日、昨日あったことを話されて困惑し、アイザックに「マリーに近づかないで!」と大真面目にレオと同じことを言い始めた時は、思わずクスリと笑ってしまった。




