第十六話 保管庫を探せ③
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「やっと、騎士の間………」
私達は絵画の間を出て、しばらくは廊下を真っ直ぐ歩いていたのだが、途中から急に入り組んでいって………気がつけば騎士の間の前だった。
王宮は中心部に近づこうとすればするほど、自分がどこにいるのか分からないようになる造りになっているらしい。
エドワードが途中で「絶対に僕から離れないでね。」と言い出したときは、こいつ何言ってるんだろ、いきなり乙女ゲーム設定復活したな……
__なんて思ったけれど、これだけ入り組んでるなら納得だ。
もうどの道を歩いてきたか分からないし、これで途中の道で止まっていたとして、エドワードを見失って焦って変な方向に歩きでもしたら、一生見つけてもらえない気がする。
と、まあ迷路のような廊下を歩いてやっと騎士の間についたわけだが。
「ねぇ、入るのやめない……?」
「私も……前で待っていようかしら……」
予想以上に怖い。この部屋、王宮の中心部にありすぎて窓がない。廊下のライトに照らされて薄暗く中が見えるだけだけど……
奥に細長い部屋。1番奥までは暗くて見えない。
右端と左端に、騎士の鎧が武器を持った状態で立たされている。それが奥まで等間隔で、20体ずつ程並んでいるのだ……
真ん中に赤い絨毯が敷いてあって、どうやらそこを歩けという事らしい。
こわっ、鎧の中に人が入っていないのだから動かないとはわかってるけど……こんな挟み撃ちみたいな状況の中に入っていけるほど、私の心って、強くないかも……
「大丈夫だよ、僕も初めは怖かったけど慣れれば普通にかっこよくて面白いよ。」
「俺もちょっとわくわくするな、格好いい……」
なんでぇーー。慣れても怖いでしょ!
1、2体なら格好いい!で済むけど……
流石に、合計40体程集まっていれば怖い。
何が出てくるかわからないお化け屋敷よりも、中身が見渡せて、怖いと入る前からわかっている部屋に入る方が怖い。
結果……私とイブはこの部屋怖いんだもん!!入りたくない!!
「私達……外で待ってる……。」
イブと目を合わせてコクコクと頷きあう。
「ここ、真ん中だけいくつか小さなライトつくよ?」
「それでも嫌です!」
「マリーも行こうよ、手を繋いでてあげるからさ、こんなに鎧を見れるなんて、そうそうないよ?」
「手はこの部屋に入らなくても繋ぐでしょ!鎧はここからでも見えてるし!」
………沈黙が流れる。どちらかが折れるまで続くのだろう。
__最終折れたのは……
「むー、しょうがない、僕たちだけで行くか。」
「だなぁー、なにか手がかりとか、不思議なものがあるかもしれないのにな。」
……男子勢でしたっ!
いつでも、どこでも、男は好きな女に弱い生き物なのだろう。
「へへ、いってらっしゃーい。」
手がかりとか、不思議なものって単語には引かれたけれど、入る気にはなれない。
何かあったときに呼んでもらえば良いや。
「光の炎」
エドワードがそう唱えると、赤い絨毯のちょうど真上、小さなライトが前から順に奥までパチパチとついていく。
この世界では部屋の明かりも魔力でつける。
大人に近づいて魔力が安定してくると、呪文を唱えなくてもつけられるようになるのだが、まだ習い始めたばかりの子供には難しい。
そのため、一般には各部屋に魔力を貯めたものが設置されている。
呪文で明かりをつけたのみると、やはりこの国の王太子といったところだろう。
「じゃあ行ってくるね。何かあれば呼ぶから」
そう言って2人は、さっきより少し明るくなった部屋に入っていく。どうやらこの部屋は元から薄暗く設定されているらしい。
明かりのお陰で見えるようになった1番奥の壁には、この部屋の騎士に似合うようなちょっと格好いい造りの暖炉があるだけで、その他は騎士でいっぱいいっぱいだ。
………本当に何のために作ったんだろ。
最低限人が歩ける分の通路を残して、あとは全部鎧なんて……理解できない事ばかりだ。
時々「うわぁ」とか「すごい」みたいなレオの声が響いて聞こえてくるけど……
この部屋の使い方ってこれであってるわけ?
そりゃ、格好いいのは格好いいけど……それよりも不気味。‘’ある意味がわからない部屋”の称号にピッタリだ。
「マリー!この暖炉なんかおかしいよ!」
暖炉の前から、廊下にいる私に向かって叫ぶレオ。なにもそこから叫ばなくても戻ってきてからで良いよ?
それに、なにがおかしいの?ここからみるかぎりどこもおかしくないけど………
「なにがおかしいの~っ?!!」
部屋に入る勇気がなかなか出ない私は、大きな口を開けて叫ぶ。モリスが見ていれば「公爵令嬢らしくしなさい!」と怒られるだろうけど……いないからバレなきゃ大丈夫!!
「この暖炉、毎年使わないんだって!なのに、使ったみたいな魔力のあとがあるんだ!」
魔力のあと……?
「じゃあ誰かが使ったんじゃないの~?」
ん?自分で言っておいてなんだけど、誰かって……誰だ?
「僕も、父上も使った覚えはないし、母上は君たちと同じでこの部屋が怖くて入れない!使用人も入ることを禁じられているんだ!」
「え……じゃあ、本当におかしいの?」
「マリー、私たちも入って見た方がいいのでは?」
「えー、でも怖い……」
「私も怖いですけど……ここにいても前に進めません!それに、入ってしまえば慣れるかもしれないですわ。」
「………そうだね、行こう。ひとつお願いがあるんだけど……いい?」
「ん?なんですか?私にできることなら良いですわよ。」
「へへ、怖いから手、繋いでて?」
「ふふ、勿論ですわ!」
私達は手を繋いで通路の上を歩き始めた。
初めはどうしようもなく怖かったけど、地面をみてゆっくり歩いていけばただの道だ。
私達は少し時間をかけてだが、暖炉の前までたどり着くことができた。
「マリー、よく頑張ったね。」
レオが私の頭を優しく撫でてくれる。
へへっ、褒めて貰えるのはとっても嬉しい。
「それで……暖炉がおかしいって……国王様がエドワードの知らないうちに入ってつけただけじゃないの?」
「いや、それはない。父上はほぼ母上と行動を共にしているし、僕は毎日玄関まで父上を迎えに行くんだ。それからはずっと父上と一緒だし、この部屋には一週間程前に来たのが最後だよ。」
…………じゃあ……暖炉をつけたのは、知らない人?
「え、こわ、不法侵入?」
「何のためにつけたんでしょうか……」
「暖炉の謎……。保管庫を探す前にこの謎を解いてみようか。」
「はぁー、僕の家は謎ばかりだな。」
「じゃあさ、1回暖炉をつけてみようよ!何かわかるかもしれないでしょ?」
「そうだね、じゃあ俺が。炎」
ボッ!と暖炉に火が灯る……と思ったのだが。
「きゃあ!?」
私達は暖炉のなかに吸い込まれていった。
冒険したいなぁ。




