第十二話 改心
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今、私とエドワードはクラスメイトの女子に、「先生が呼んでいるそうです!」と、報告を受けて職員室に向かっている。
「なんの用事だろうな。聖女の事とか?」
「うーん、たぶんその件でお礼でも言われるんじゃない?私の立場を救ってくれたわけだし。」
「そうか……別に礼とかいらないけどなぁ。それよりも早く帰ってイブの服を選びたい……うーん、どんなのが似合うだろう………」
エドワードはどこまで行ってもエドワードだなと思う。ここまで愛されているイブが羨ましいくらいだ。まあ、私にも愛しのダーリンがいるからいいけど~っ。
「あははっ!エドワードらしいね。イブの服、白に赤の刺繍とかだったら可愛いよね~イブの目の色に合わせてさ!」
軽い気持ちで、思い付いたデザインを言ってみた。
「それ良いな!天才か!?今すぐ発注しよう。おい、リーク!そこにいるだろ、聞こえていたな?今のマリアの案通りの物を、今日中に用意してくれ!」
わわ、早い、悩まないの!?てか、リークって誰!どこにいるの……?
「話を聞いている前提で頼まないでください……いつものマダム・シャルロッテの服屋さんでいいですか?」
男の人が横の柱から出てきた。
って、え……そんなとこから人って出てくる!?
「ああ、良い。3通りほど用意しておくよう伝えてくれ。」
「かしこまりました。仰せの通りに。」
あっという間に発注が完了してしまった……。
エドワードといるとビックリすることばかりでしんどい。
「ねぇ、本当に私の言ったデザインでよかったの……?」
「ああ。ピンときたからね!早く着ているところをみたいなぁ……」
それなら良いのだけれど……
「あ、それと、さっきの人誰?めっちゃ凄かったよね、壁からペロン!って出てきて……」
「ああ。僕の護衛だ。名はリーク。毎日ずっと横にいたぞ?」
「え……うそ……」
怖っ、……全然気がつかなかった……
「エドワード王太子!!マリア様!!イブリン様と、レオナルド様が!……たった今……保健室に、運ばれました!!」
後ろから保健委員の生徒が、なにやら叫びながら、息を切らして走ってくる。
イブとレオが保健室に?……なんで?転んだのかしら?……運ばれたって!!え!?
「どうして!?2人はどうしたの!!」
「わかりません!階段の下で倒れているところを発見されたそうです!気は失っていますが、目立った外傷はありません!!」
「今すぐ保健室に案内してくれ!!」
「はい!!」
*
*
*
「はぁっ……はぁ……はぁ………」
まさかの、北館3階から南館1階まで猛ダッシュとは。
今日ばかりは、いつも「綺麗ね」と言って休み時間に散歩をしたりしている広い中庭が忌まわしく思えてならなかった。
あんなに広くなくていいよ……半分でいい……
「イブっ!!」
エドワードが保健室に飛び込み、ベッドと室内を仕切っていたカーテンをめくる。私も遅れて到着した。本当に私には体力がないな……ちょっと鍛えた方がいいかも……
「レオっ……先生!本当に2人は大丈夫なんですか……気を失っているだけ……??」
「ええ。もう少しすれば目を覚ますと思うわ。一応治癒魔法はかけておいたし、あなたの加護の力で守られていたみたいよ。まったく、2人揃って階段から落ちるだなんて……一体どうしたのかしら。」
よかった、無事で……私が聖女で、よかった。
初めて聖女の力に感謝をした。私の知らないところでも誰かを守れるというのは、案外いい能力かもしれない。
この能力と上手くやっていけそう。そう思った。
*
「ん……」
「イブ!大丈夫か……?無事でよかった。一体君の身に、何があったんだ……?」
「エド……マリー……。__私ったら、階段から足を滑らせてしまいましたの。レオナルドが助けてくれようとしたのですけれど、運悪く、2人とも落ちてしまいましたわ。心配かけてごめんなさい。」
イブはそう言って、申し訳なさそうに笑う。
少し何かを考えたような様子だったけれど、階段から落ちて目覚めたばかりなのだから仕方のないことなのかもしれない。
「イブが無事で……本当によかった。」
「ふふ……ありがとうございます。」
私がそういうと、イブが嬉しそうに微笑む。
あとは、レオだけ……。
「う……」
「レオ?目が覚めたのね……よかった……」
私達の頭に不安がよぎる中、レオも目を覚ました。あぁ、よかった……
「あ……マリー。……お嬢様は?」
レオは、私の顔を見ると、ふわりと笑って、私の頭を撫でた。よかった……いつものレオだ。
先に階段から落ちたイブの事を、自分よりも心配するところも優しい、いつものレオ。
今は、いつも通りがたまらなく愛しい。
「私はここよ。ごめんなさいね、勝手に足を滑らせて落ちてしまって……」
イブがレオに謝る。
「___!!いえ……お嬢様が無事で良かった……です。」
レオ……?一瞬なにか言葉を飲み込んだような、選んだような気がしたのは私だけ……?
「ところで、私達を発見してくれたのは誰なのですか?」
イブが少し前のめりで聞いてきた。そう言えば誰だったんだろ。
「メアリーさんよ。彼女が見つけて叫んで助けを求めてくれたのだそうよ。」
先生が、発見が早くてよかったわね、と笑う。
そう……メアリー嬢が……。
いやー、まさかね。メアリー嬢って、マリアのことは階段から突き落とす設定だけど、イブリンが突き落とされることはなかったはずだから……
「まあ!メアリーさんが見つけてくださったのね……私、是非お礼を言いたいわ。エド、呼んできてくださる?」
「あ……ああ。わかった!」
*
それからすぐに、「呼んできたよ。」と、エドワードが帰ってきた。
「こ、こんにちは。大丈夫ですか……?」
そう言って挙動不審に入ってくるのはメアリー嬢。緊張してるのかな?なんか変な汗かいてる。まーでも、そんなもんか、私も前世なら王太子と2人の公爵令嬢に囲まれてお礼を言われるなんて怖すぎ、真っ平ごめんだなぁ。今はすっかりなれちゃったけれど。
「大丈夫よ、ありがとう。マリー、エド、先生、少し席を外してくれないかしら……私、メアリー嬢と話がしたいのだけれど、たくさんの人に話を聞かれると恥ずかしくて。」
確かにイブは恥ずかしがりやさんだ。
だからといって、普段から一緒にいる私達に聞かれるのも恥ずかしいのはなぜだろう……。
まあいいや、イブがそう言うなら出てようか。
「わかった。ドアの外で待ってるから話が終わったら呼んでね。ほら、エドワード行くよー」
「え……え、いやだぁ、イブといたいよ……」
その気持ちはわかる。でも……
「情けない声ださない!そのイブが出てほしいっていってるんだから、仕方ないでしょ!ほら!」
私はガシッとエドワードの腕をつかんで外に出た。
*
「エドワード、ちょっとちょっと。」
やっぱり、私達だけ知らない会話があるのは嫌だなぁ。出なきゃ良かったかも……?
「ん?なんだ……?」
「絶対おかしいよね、私たちが出るの。」
「だよなぁ。」
「盗み聞き……しちゃおうか?」
すいません、ちょっとした出来心です。やっぱ、ダメだよね……
「__静かにな。聞いてない感じで。」
ですよね~……って、いいのっ!?
☆*#○※★*♪*★※○#*☆
「メアリーさん。私、是非あなたに聞いてほしいことがありますの。」
「__なんでしょうか。」
「私、エドとマリーを譲るつもりはありません。私は何があってもエドが好きですし、何があってもマリーと親友ですわ。」
「__っ!なぜ……それを私に。」
「いいえ、私の決意を聞いてもらいたかっただけです。私は、例え何があっても__階段から突き落とされても、透明の糸で転けさせれても、教科書や、筆記用具がなくなっても、悪口を言われても構わない。だけど、あの2人の側からは絶対に離れない。私の居場所は、エドとマリーと、レオナルドの隣だけですわ。」
え、そんなに嫌がらせをされてたの……?
言ってくれればよかったのに……心配かけると思って言わなかったんだろうけど……
それと、やっぱりこの世界はゲームとは違うんだ……
今までのイブの不審な言動にも合点がいった。
「お嬢様……」
「…………なぜ、なぜそんなに……近づかなければ、痛い目にも怖い目にも合わないのよ!?」
「やはり……犯人はあなただったのね……」
「__そうですけど、なにか?」
修羅場……?
「私に、あなたを責めるつもりはないわ。確かに、私には家名ばかりで、あの2人にふさわしいものはなにもないもの。」
あるよ!優しくて、可愛くて、しっかり者で……
「……ならっ!」
「だけど、無いならこれから作ればいいじゃない。私たちはこれから何倍もステップアップするためにこの学園に通っているのよ。初めから完璧な人なんていないわ。だから……私は、卒業までに必ず、あの2人に相応しい人間になってみせます。もしその時、あなたの思う隣にいて相応しい人間に私がなれていなかったら、私はあの2人にもう近付かないと誓うわ。」
イブぅぅぅ。もう十分相応しいよぉ、私達にはもったいないくらいだよ………一生ついていきます……!!げ、エドワード泣いてるし。
「ぅ……………ひっく……」
メアリー嬢も泣き出したし!!
「そのためには、私の成長を見張る人が必要だと思わない?私にはきっと自分の成長はわからないもの。でしょ、レオナルド?」
「あ……はい、お嬢様!」
急にレオに話をふるから、レオがすごくビックリしてる。
「それに、あなたが1番私達を見張るのに適していると思うわ。エドと、マリーのためにあれだけできるのですもの。私の見張り……頼めるかしら?」
自分を殺しかけてた人に、見張り……頼んじゃったよ……イブ、いい人過ぎるよぉ……
「………はい……今までごめんなさいっ、私……」
わ、メアリー嬢が謝った!ゲームの中では最後まで謝らずに警察に捕まってたのに……イブ……凄い。
「いいのよ。はい、涙を拭いてしっかりしなさい。あまり遅いと2人が不審に思っちゃうでしょ?」
「ありがとうござい……ひっく、ますぅう……」
イブはメアリー嬢にハンカチを差し出して、頭をポンポンっと撫でてあげる。
アフターケアまで完璧……
って、早く壁から離れなくちゃ!
盗み聞きだけじゃなく、盗み見までしてたのがバレるっ!!
やばい、そう思って私とエドワードがサッと壁から離れたところでイブから「もう入ってもいいですわ。お待たせ致しました。」と、声がかかる。
危なかったぁ、そう思いながらも、私達は知らぬ顔をして保健室に入っていった。
やはり設定は変わっていても、イブとメアリー嬢が仲良くなるという運命は変わらないのだなと思う。いつでもイブは格好いいのだ。
丸く収まった……かな。




