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女だらけの国の少年領主 “男はみんな戦場送りです。” (旧題:少年領主と後宮の女たち)  作者: 麗瑠楽
第一章 使用人の乙女たち 「えっ!まさかの主人公ほとんど出番なし!?」
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第1話 扉の向こうの足音 「はじまりはじまり」

近日中に大幅改稿予定。

 灯りが落とされた暗い室内にギシギシと軋む音と荒い息遣い、そして時折甘く切ない声音が響く。

 唯一の光源、閉め切られた雨戸の隙間から漏れる微かな月明かりは大きな寝台の上で蠢く二つの影を映し出す。

 影は激しく、時に緩やかに絡み合い、やがてひとつとなって重なった。

 己の上で繰り広げられる荒々しい行為に抗議するように、寝台が煩く軋み悲鳴を上げる。


 だが突然、上になって責め立てていた一方の影がピタリとその動きを止める。


「・・・ど・・・した、の?」


 気のせいか・・・。


 叫び声を聞いた気がしたのだ。だが暫く耳を澄ましてみても聞こえてくるのは己の下で大きく胸を上下させる彼女の吐息のみ。


「いや、なんでもないよ」

 そう告げると営みを再開すべく彼女へと身体を預けるように上から覆いかぶさる。汗ばみ火照った肌と肌が合わさり心地よい一体感をもたらした。


 程なくして彼女は身体を仰け反らせ、ぐったりと脱力する。

 ついつい調子に乗ってやりすぎてしまったかと反省しつつ、こちらも一息つこうと傍らに置いた水差しへと手を伸ばし、触れる直前で手を止めた。

 

 伸ばした手の先を見つめる表情に緊張が走る。


 結局、水差しに触れることなく手を戻すと、いまだ力なく横たわる彼女へと顔を寄せた。

 こちらに気付き気怠く開きかけた彼女の唇をそっと口付けで塞ぎ、首に腕を回して来る彼女から口を離すと代わりに人差し指を当て静かにするよう合図する。


 すぐに状況を理解したようで頷く彼女を確認すると、猫を彷彿とさせるしなやかな動作で音もなく寝台を降り、一糸まとわぬ身体のまま真っ暗な部屋の中を危なげない足取りで扉へと近づくと耳を当てた。


 気付たのは幸運だった。水差しへ手を伸ばした時、その水面に微かな波紋が起こったのに気付いたのだ。こちらが動きを止めても、波紋は水面を波立たせ続け、遅れて耳も微かな音を捉える。

 音より先に波紋が此方に近付く存在を教えてくれた。そうでなければ、こうも早く対処出来なかったかもしれない。


 扉を通して届く廊下の床を打つ複数の足音。間違いない。誰かがこちらへと向かって来ているようだ。

 こんな時間に誰だ?

 そもそも今日ここは使用されておらず誰もいないはず。だからこそと密会の現場に選んだのだから。


 やがてカチャカチャと金属がぶつかる独特の音も聞こえてくる。その聞き慣れた音は鎧を着込んでいる証しだ。

 兵士の見回りか?

 ひと部屋ずつ扉を開けて中を確認している訳ではなさそうだ。ならばこちらが音さえ立てなければ見つかることもないだろう。

 ほっと胸を撫で下ろし息を潜めて通りすぎるのを待つ。


 程なくして扉を隔てた向こう側をこちらに気付いた様子もなくただ歩き去ってゆく。だがそこでふと感じた違和感。


 聞こえる足音は三つ。先に一人、後に二人。けれど、歩調が・・・おかしい?

 それになぜ三人?見回りならば兵士二人ひと組での行動が基本のはずだ。しかも一人は鎧を身に付けていないように思う。


 先の一人は鎧金具が打ち鳴らす音はなく衣擦れのみ。燭台を持って先導しているのだろう。通り過ぎる際に扉の隙間から明かりが漏れてきていた。こちらの足音に変わったところはない。

 問題は後ろの二人。鎧を身に付けた兵士。・・・いや、近衛か?この重い音は全身鎧のものだ。この屋敷内で普段から全身鎧を着込んでいる物好きなど近衛兵ぐらいだ。

 だが何故近衛が?奴らがこんな時間に無人の施設を警備などするはずがない。

 それに普通に歩いてるにしては変だ。左右の足でズレる足音の調子。そして何かが床に擦れるような音。まるで二人で何か重い物を抱え引きずってでもいるかのようだ。


 ふいに好奇心を刺激され、悪い癖だと思いつつも充分に足音が離れたのを見計らい僅かに扉を開け外をそっと覗き見る。

 隙間から見える光景。頼りない燭台の灯りの中に揺れ動く影。そして闇の中にあってさえ、その存在感を失うことのない金の・・・。


 ・・・あれは。

 いやいや・・・まさか、ね・・・。

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