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記憶の書庫

作者: 天宮 雨斗

アカネは1人だが、決して孤独ではない。

 クラシックを、聞いていた。

 体の芯を揺らすほどの重低音に、軽やかに鳴り響く吹奏楽器。個性豊かな音たちが混ざりあい溶けあって完成されたクラシックという音楽が、私は大好きだった。

 ある日、ちょっと背伸びして高いヘッドホンを買った。大好きなクラシックが、今までよりもずっと綺麗に聞こえた。心まで溶けてしまいそうな音の温もりは、私を夢中にした。

 気がついたら、周りの友達はみんないなくなってたけど、不思議と寂しさは感じなかった。むしろその時の私は、満たされてすらいた。わざわざ分かってもらわなくてもいい。関わらなくてもいい。クラシックさえあれば、それだけで。

 

 たしかその頃だ。私があの不思議な本に出会ったのは。いつものように静かにクラシックを楽しむために入った図書館の棚に、その本はあった。色あせた黒色の表紙を持つその本は、どうやらかなり古い楽譜集みたいだった。驚いたのは、本そのものから音楽が聞こえてきたことだ。ヘッドホンなんて関係なしに、まるで頭の中に直接響いてくるみたいだった。冷静に考えてみればまともな本じゃないことは確かなのに、なぜだか恐怖は感じなかった。ただ何となく、本から流れてくる四重奏が私を誘っている、そんな気がした。だから手を伸ばして、本を掴んで。

 気がついた時には、私は言葉通りクラシックの中にいた。全方位から叩きつけられる、それでいてどこか優しい音の奔流に包まれて、私が少しずつ薄くなっていく。

 ああ、そうか。本当の意味で音楽を愉しむために身体はいらない。感性と、心があればそれでいいんだ。

 

 私は今、幸せです。満たされています。愛されています。音に、音に、音に。

久しぶりなのでだいぶ粗が目立つような気がしますが御手柔らかにお願いします……

感想もアドバイスもお待ちしております。

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