第6章:運命との出会い
長谷川は、全ての生きる楽しさを失ってしまった。
そして、頭を冷やすために、外に出る。
下り坂… 風が当たって、気持ちがいい。まるで、僕のことを包んでくれるような安心感。
僕は、学校のほうへ行く道を、自転車で進んでいた。
僕は考えた。何故、こんな風になってしまったのか…何故、佐藤は僕のことを裏切ったのか…。
考えているうちに、ひとつの結論に辿り着いた。
彼は、僕に負けたくなかったんだ…
今までの過去を出来る限り、思い出してみると、そんなように思えてきた。
いつも、僕のほうが
テストの点数がよかった。
テニスの大会に出れた。
友達の数が多かった。
ほめられる回数が多かった。
男子だけではなく、いろんな女子・大人に好かれることが多かった。
だから、彼はいつも僕のことを密かに恨んでいた…
そして、昨日、ついに彼は立ち上がった。
僕に負けないために…
予想の部分が多いが、あいつに関しての僕の感は90%あたる。
14年間、見てれば、そうなるか…。
考えているうちに、僕は学校についてしまった。
もし、あの時、あいつを心配しないで、みんなと帰っていたら、何もなかったんだろうか…。
あの日、僕がテストでいい点数を取り、母さんに説教されていなかったら、テニスクラブにも行かず、その後も何もなかったんだろうか…。
でも、その真実がその時じゃなくても、知るときは必ず来る。
…複雑だな。
5分ぐらいその場にいただろうか…僕は、その場を立ち去ろうとする。
その時だった。
校庭の桜の木の下に一人の少女が立っていた。
奇妙で怖かったが、もしかしたら、迷子かもしれないという、僕の中にある良心が動いた。
僕はいつも開いている門を通り、すぐ隣にある、自転車置き場に自転車を止めて、少女のところへ向かう。
「でも、こんな夜遅く、しかも学校で迷子なんて…。」
とつぶやくも、足は自然と動いていく。
小学3年生ぐらいの少女だろうか。空を眺めている。僕は勇気を持って話しかける。
「大丈夫?迷子なの?」
少女はぱっと、こっちを向く。可愛らしい子だった。
「違うわ。窓の外を見たら、空が綺麗だったから、家から飛び出してきて見てたの。」
声も幼く可愛かった。
確かに、今日は雲一つなく、星が空に輝いていた。だから、さっき僕も外に出たくなったのか?
「そうなんだ…。」
「ねぇ、お兄ちゃんは、何か願い事ってある?」
急に少女は、無邪気な笑顔で僕に問いかける。
僕の願いか…。僕の願いは自由かな。
でも、こんな小さい子に言っても分かるだろうか?
「君はあるの?」
とりあえず、少女に振ってみる。
「あるわ。」
「それは、なんだい?」
「…それじゃ、ついてきて!!」
僕は、少女に手をつかまれ、校庭のど真ん中を横切っていく。
「どこ行くの?」
僕の問いかけには、答えてくれない。
ある場所で少女の足が止まった。
「ここは…。」
校庭の隅にある、ビオトープだった。3年前ぐらいに出来上がって、去年、蛍が出たと言うことで、話題になっていた。
まだ、蛍が見られていないのか、見に来る人はいない。
と僕は、思っていた。
「蛍だ…。」
少女はしゃがみこむ。
「昨日から、いたんだよ。」
「へぇー、よくここにくるんだ。」
「うん。それでね、私の願いは、蛍になりたい…。」
蛍!? こんな早く死んでしまう、蛍に?
「蛍?なんで、早く死んじゃうじゃないか。」
「…だって、人間のように裏もなく、素直だから…。」
今僕が一瞬、この子が大人に見えたのは、気のせいだろうか…。
「それで、お兄ちゃんは?」
まぁ、言っても減るもんじゃないし…。
「自由だよ。」
「自由?」
「うん。誰にも囚われずに生きてみたい…。」
少女は少し怖い顔になる。
「なんで?」
「今、僕に生きる楽しさがないからさ…。」
こんな子に言っても、やっぱ分かるわけないか…。
「そろそろ戻るよ。母さんが心配してるだろうし…君も…えっ?」
少女が何かつぶやく。
「それが本当にあなたの願いなら…私が叶えてあげるよ。」
うーつかれた!!7作目もぜひ、読んでください!!




