第5章:最後のステップ
僕は、佐藤となるべく、話すのを避け、学校生活を送った。
問題なのは、テニスだった。
「おい今日、一緒にテニス行こうぜ。昨日お前休んでただろう。」
僕が昨日の出来事を知っていることを、本人は夢にも思わないだろう。
「悪い。今日も休みそうなんだ。」
「そっか、お大事にな。」
「ありがと。」
帰り道、僕は佐藤と自動的に二人になる時がある。
もうそろそろだ。
「んじゃ、またな、佐藤、長谷川!」
「またな。」
「また。」
沈黙の時間…。
こんなこと今まで一切なかった。
二人が別れるところまで、あと3分ぐらいだが、すごい長い。
「なぁ。」
佐藤がまず口を開く。
「お前、本当に荒井のことが好きなのか?」
どうやって答えようか…
こんな質問だとは思わなかった。
「うん。そうだよ。」
ここは率直に言うしかないと思った。
「そっか…。」
また沈黙が始まる。
結局、別れるまで、口を開くものはいなかった。
「じゃあな。」
「またね。」
僕は走り出す。なんでか、知らないけど、とにかく、自分の部屋に行きたかった。
だけど、10歩行ったところで、後ろを振り向く。
そして、憎き相手にひとつ質問をする。
「お前も好きなの?」
すると相手は、振り向かずに答えた。
「そんな、友達の好きな人奪うほど、ひどい人間じゃない。」
ほんとかよ…。
僕はとりあえず、家へと帰る。
そしたら、帰ったら帰ったなりの試練が待っていた。
「あんた、何よこの点数。」
母さんは、僕の目の前に、この前受けた模試の結果をつきつける。
「あんたね、毎日3時間必ず、勉強してるのに、なんでなの?バカなの?」
バカ…。そうかもしれない。いや、そうなんだろうな…。
「次こんな点数取ったら、ただじゃ、済まされないからね。いいわね。」
「うるせー。」
小さい声で反発した。
「何?聞こえないわよ!」
「うるせーって言ってんだよ!!あんたのために、勉強してるんじゃねーんだよ!!」
僕は、珍しく言葉で荒れた。反発した。階段を一気に上って、バンッと大きな音をたてて、部屋のドアを挑発的に閉める。
母さんは、テニスの時間まで、何も言いに来なかった。
僕は、母さんが料理している間、こっそりと家を抜け出す。
テニスクラブへと向かうと、そこには、当然ながら、佐藤がいた。
「どうしたんだよ、今日、来れないって…。」
「母さんと喧嘩してきちゃって…。」
「なるほど。まぁ、無理すんなよ。」
「ああ。」
昨日の事件がなかったら、君はどんなに僕にとって大事な存在だったんだろうか。
いろんな人と触れ合ってみて、こんなに友情が強かったのはこいつだけだった。
なのに…。
「え〜はじめる。」
斎藤が出てきた。一昨日会ったばかりなのに、懐かしい。
「気をつけ、礼、お願いします!」
「それじゃ、昨日と同じメニューで。よーいはじめ!」
僕はよく分からなかったので、とりあえずみんなに合わせようとした。
すると、斎藤が近づいてきて、
「ちょっと来なさい。」
と言われた。
学校の先生に呼び出されるより緊張していた。
館内の隅に行く。
「なんでしょう。監督。」
「お前、大会に出れなくなったんだ。」
なんだって?もう一度言ってください監督。もう一度…。
「昨日、選手決めたんだけど、佐藤か長谷川で迷ったんだけど、佐藤がどうしても出させてくださいっていうから…。」
佐藤が!?
「ほら、あとお前、何回も出てるレギュラーだろ?一回ぐらい譲ってやってもいいとおもって。」
斎藤、僕がなんのために、毎日クラブ来てると思ってんだ。
「そういうことだ。よろしくな。」
恋愛もだめ…勉強もだめ…テニスもだめ…幼馴染も失った…
僕は、その後家に帰っても、父さんの説教の言葉は、耳に入っても脳には届かず、ずっと今までのことを考えてた。
父さんの説教が終わった後、部屋に戻り、窓を開けて夜空を見る。
「ご飯よ、優、降りてきなさい!」
僕は目の焦点が合わないまま、夕食をとりに向かう。
「なぁお前どうしたんだ。目が死んでるぞ。」
父さんが言った。
「なんでもないよ…。」
僕はその後黙々と食べ続け、好きなバラエティさえ見ることなく、部屋へと戻った。
また夜空を見る。
「なんだろう…外に出たい…。」
僕は下に降りて、ちょっとクラブに忘れ物したからといって、家を出た。
自転車にまたがり、太刀川の橋を渡る。
その夜、僕は自分の運命を変えるはめとなった。
残酷な運命へ…。
ようやく、本格的な内容に入れそうです!
これからも、よろしくです。




