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[2.5]和装の種類:その伍【女性バリエーション:洒落着・街着編】



 長くなりました【女性和装バリエーション】編ですが、今話でとりあえず一区切りです。「木綿の着物」を中心とする【日常着編】は、改めて【浴衣(ゆかた)】の話と一緒に説明させていただきます。

 それでは「準礼装・略礼装(セミフォーマルウェア)」の復習です。



 「留袖・振袖」以外の礼装は、『準礼装(じゅんれいそう)(第二礼装)』と『略礼装(りゃくれいそう)(第三礼装)』に分けられます。こちらは既婚・未婚の差による衣装そのものの違いはありません。『準礼装』と『略礼装』は、衣装そのものによる区分よりも【(もん)の有無】の方が重要です。乱暴にまとめるなら、紋付きは「準礼装」、紋なしは「略礼装」です。略礼装は『平服で~』のシーンに相当します。

 準礼装の代表は【訪問着(ほうもんぎ)】です。【絵羽付(えばづ)け】と呼ぶ『一続(ひとつづ)きの模様』であることが特徴です。袖と右前身頃(右肩から胸にかけて)に柄があるか無いかが、色留袖との見分けポイントです。【付下(つけさ)げ】は訪問着の簡略版で「絵羽(えば)柄」ではないのが特徴です。【色無地(いろむじ)】は、後染めによる模様が一切入っていない礼装です。多くは色の美しさや「地紋(じもん)」という生地そのものが持つ織り文様を楽しみます。「色無地」は『慶弔(けいちょう)問わず』着用できるのが最大の特徴です。

 合わせる帯は、『袋帯を二重太鼓(にじゅうだいこ)』もしくは『織りの名古屋帯をお太鼓(たいこ)一重太鼓(いちじゅうたいこ))』に結びます。

 いずれも洋装において「マキシロング丈でないフォーマルドレス」や「ツーピース・フォーマルスーツ」などの着用シーンが相当します。現代社会ではもっとも出番の多い和装です。



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 ということで、最後に【カジュアル着】についてのお話です。


 和装のカジュアル着は、「ちょっと気張ったお出かけ」シーン用の【洒落着(しゃれぎ)】、「デートや街にお買い物」シーン用の【街着(まちぎ)】、「ちょっとそこまで」シーン用の【普段着(ふだんぎ)】に大別されます。これらは『染め』と『織り』いずれでも構いません。そして「紋なし」が大原則です。(家紋ではない意匠(デザイン)としての「洒落(しゃれ)紋」は、洒落着でのみ可。)



(か)【小紋】 (こもん)

 :【洒落着(しゃれぎ)】や【街着(まちぎ)】の代表例です。気軽に着用する「染めの長着」です。

  『小紋染め』という型染め技法で、全体的に模様が入ります。「付下(つけさ)げ」との違いは【柄が同じ方向を向いているか、否か】です。先述の『付下げ』は、染めの段階で仕立てた時に柄が同じ向きになるように考えられています。一方『小紋』の場合は、元の生地が“同じ向きの模様付け”ですので、仕立ての際に柄が上下逆転することがあります。

  よって「小紋」の模様は、上下左右の向きをあまり気にしない意匠(デザイン)が多くなります。(『付下(つけさ)げ小紋』は、小紋の製法(型染め)で柄の向きを付下げ風に染めたものを差します。)

  『柄が上下ひっくり返ってる!』と思っても、それが仕様です。失敗作ではありません。和装になれないキャラに疑問を持たせたりすると、ちょっとした話題ネタになりますね。

  洋装における『プリント柄ワンピース』や『セットアップ』に相当します。柄(模様)次第であらゆるシーンで活躍します。

  カジュアル着として「キレイめ」感を求める際、最も便利な長着です。色柄や意匠(デザイン)も豊富で、価格も比較的安価なものが多くなりますので、“礼装以外の着物”を初めて(あつら)える場合は「小紋」が無難です。

  小紋の柄付けは【総柄】(そうがら)という『全体にもれなく柄が入っているもの』と、【飛び柄】(とびがら)という『地の部分が多く、柄がところどころに入っているもの』があります。「総柄」の方が華やかで小紋らしさがありますが『(かく)』でいうと「()(がら)」の方が上です。洒落着(しゃれぎ)なら「飛び柄」が無難です。

  小紋でも【江戸小紋(えどこもん)】だけは別格です。これはパッと見た目は無地にしか見えない、非常に細かな型染め技法で作られます。元々武士の(かみしも)製作用の技法であったこともあり、『紋を入れた、特定の柄(「留柄(とめがら)」と言います)の江戸小紋』は「略礼装」としての格を持ちます。


  「洒落着(しゃれぎ)」として着用するなら、原則として『金銀の入っていない、織りの名古屋(なごや)(おび)』もしくは『染めの名古屋(なごや)(おび)』を締めます。「街着(まちぎ)」なら『染めの名古屋(なごや)(おび)』もしくは『半幅(はんはば)帯』を締めます。「染め帯」が最も活躍する長着です。

  和装の世界には【長着一枚、帯三本】という言葉があります。合わせる帯を変えるだけで「衣装」としての雰囲気がガラッと変わり、まるで別物のように感じられるところから来ています。特に小紋では「染めと織り」「名古屋帯と半幅帯」という異なる種類の帯を合わせられますので、「小紋一枚、帯五本」でも良いくらいです。『同じ着物のはずなのに、何だかちょっと雰囲気が違う……?』という情景シーンに活躍します。お試しあれ。


挿絵(By みてみん)



(き)【紬】 (つむぎ)

 :小紋と同じく「カジュアル着」の代表格です。本来「(つむぎ)」は織り製法の一つですが、和装では【絹の、様々な製法の「織りの着物」全般】を現す用語として使われます。それぞれ『大島紬(おおしまつむぎ)』『米琉(よねりゅう)』『花織(はなおり)』『博多献上(はかたけんじょう)』など、産地名や特徴的な柄名を冠した名称で呼ばれます。

  「絹の、織りの着物」でも『(つむぎ)』と呼ばれないものがあります。【御召】(おめし)です。(御召縮緬(おめしちりめん)の省略形) これは非常に細い絹糸で織り上げた生地を指し、滑らかなシボ(凹凸)がありシャリっとした手触りです。無地や縞の御召(おめし)は、男性のセミフォーマル生地の定番ですが、女性ものもあります。一番有名なのは【矢絣(やがすり)御召(おめし)】でしょう。(はかま)を付けた『ハイカラ女学生スタイル』の定番です。紬より一段高い扱いを受け、無柄の御召は「色無地相当の格」とされる場合があります。

  「紬」は先染め糸で織り上げますので、最初から柄がついています。その上から部分染め、刺繍や刺し子をすることもありますが、基本的に織り柄だけです。無地もあれば、(しま)格子(こうし)(かすり)、など多様な柄付けがあります。小紋と比べれば「大人しい」雰囲気になります。

  洋装における『デニム』や『ニット』に相当します。「今日は出かける」という日の、一番気軽な衣装です。

 「小紋」などを『柔らかもの』と称しますが、それに対し紬は「シャキっと感」があります。「着物姿で日常を過ごす」キャラなら、「紬」姿が似合います。「たすき掛け」や「割烹着(かっぽうぎ)」がよく似合います。なお男性の着物は、礼装以外ではほとんどが紬です。


挿絵(By みてみん)



 紬には通常「街着の小紋」と同じく『染めの名古屋(なごや)(おび)』もしくは『半幅(はんはば)帯』を締めます。紬は製法上どうしても縞や格子など柄が多く、地味になりがちです。その分、染めの帯で色鮮やかに、または季節感を取り入れた装いが映えます。場合によっては小紋以上に帯で変化を付けられますので、シチュエーションに応じた帯柄を選んであげて下さい。


挿絵(By みてみん)


 「小紋」や「紬」の際には、帯結びも変えて楽しめます。名古屋帯の基本形は「お太鼓(たいこ)(一重太鼓)」ですが、それ以外の結び方をするとこなれて見えます。代表的なものが【銀座(ぎんざ)(むす)び】です。もしくは【角出(つのだ)し】です。

 「お太鼓」がどちらかというと『背中の膨らんだ部分の【上の方を持ち上げる】形』になっているのに対し、銀座結びでは『背中の膨らませる部分を【下側に垂れ下がらせる】形』になります。腰の辺りで膨らみます。名前の由来になった通り、銀座や花街の粋筋(いきずじ)に好まれた結び方で、お太鼓が少し改まった感があるのに対し、(いき)いなせ(・・・)な感じになります。正直、着ている本人も楽な結び方です。

 半幅帯は、様々な結び方が楽しめますので、さらに着姿にバリエーションをもたせられます。『文庫(ぶんこ)』や『蝶流(ちょうなが)し((かた)流し)』だと若々しく可愛い感じに、『()()』や『(かい)(くち)』だとシャキッとした凜々しい感じになります。





 「洒落着(しゃれぎ)」「街着(まちぎ)」スタイルは、実生活に結びついた和装ですので、作中で用いやすいのが長所です。ちょっとしたお出かけシーンなどで「普段と違う、あの人」を演出する際に、小紋や紬で登場させてみてはいかがでしょうか? ギャップ萌え出来ますよ。

 礼装ではないので「(かく)」にまつわるルールも厳しくありません。『このキャラらしい模様や色合い』を活かした和装にすれば、キャラが一層引き立つことでしょう。

 最近は観光地などを中心に、着物をレンタルして着付けてもらい、街中散策を楽しめることが多いです。作中キャラが和装の経験がない(着付けができない)場合でも、手軽に『キャラに和装をさせる』ことが出来ます。旅行シーンなどで活かしてみてはいかがでしょうか。






-----■予告お知らせ■-----

本話投稿以降、既掲載分も含めて【参考資料としての写真】を追加する予定です。読解の参考になれば幸いです。また『こんな写真が見てみたい』というリクエストなどあれば、可能でしたら対応してみます。

※手持ちの実物着物類で対応できる範囲となります。高価なものはありません(笑) また、人が写るものは無理です。また男性着物はそれほど持っていないのと、写真撮影に対応できる着用モデル(家族)が居ないので難しいです……。

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