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[2.3]和装の種類:その参【女性バリエーション:礼装編】

 少しずつ説明が“ややこしく”なってまいりました。難易度はいかがでしょうか?

 なるべく最小限の説明にとどめたいと思いますが、『作中キャラに着せて、動かす』ために必要な用語は最大限取り入れたいと思いますので、全部を読むというより『自作品にとって必要なところだけ』活用していただければと思います。各話の冒頭に、前話の要旨(本当に重要な部分だけの抜粋・要約)をつけていますので『難しいっ!』と思われましたら、そこだけ読んでもらえればOKです。

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■お知らせ■前話『2.2:男性バリエーション編』に修正追記事項があります。(02.21_22:40付け) ※男性の第一礼装『黒紋付羽織袴』が抜け落ちておりました。




 前回は、実社会ではあまり目にしない『男性の和装姿』のバリエーション(種類分け)でした。着物男子、いいですよ。

 ということで、男性和装バリエーションの復習です。


 男性和装の基本形は【着流(きなが)し】姿です。「襦袢(じゅばん)」+「長着(ながぎ)」+「角帯(かくおび)」+「下駄(げた)」か「雪駄(せった)」の組み合わせ。外出するならば、これに「羽織(はおり)」を加えましょう。【羽織姿(はおりすがた)】は洒落着(しゃれぎ)街着(まちぎ)スタイルです。

 ちょっと改まった場では【袴着姿(はかまぎすがた)】です。全てを身に(まと)うと【羽織袴(はおりはかま)】姿となり、フォーマル~セミフォーマル着になります。

 完全なフォーマル姿(礼装(れいそう))にする場合は、羽織に「家紋(かもん)」を付けた【紋羽織(もんばおり)】が必須です。【黒紋付羽織袴くろもんつきはおりはかま】が最もフォーマルな衣装です。

 男性和装において【羽織(はおり)】は『ジャケット』、【(はかま)】は『ネクタイ』、【家紋(かもん)】は『カフスボタン』にそれぞれ置き換えると、着用シーンがイメージしやすくなります。

 襦袢の代わりに洋装のスタンドカラーシャツを下重ね着にすると『書生風(しょせいふう)』スタイルになって、カジュアルな個性がでます。


 以上、復習終わり。



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 今度は【女性の和装バリエーション】です。


 ……正直、これをどこまで“詳しく”もしくは“おおざっぱに”紹介するか、難しいところです。女性の和装バリエーションは、先述した【(かく)】の話が主体となる為、はっきりいいまして『面倒くさい、分かりにくい、難しい』の三拍子です。

 とりあえず基本用語の紹介と、作中キャラに着せる場合の基本バリエーションに絞り込んでまずは紹介いたします。より詳しい内容は、ご要望があれば追って「応用編」とでもして取り上げたいと思います。


 前振りはさておき。

 「フォーマル」「セミフォーマル」「カジュアル」の区分は【(かく)】と呼ばれ、女性の場合は主として【長着と帯の素材・製法】と【長着の模様(柄や文様)の種類・付け方】で区分されます。

 具体的には、【絹(+ポリエステル)】なのか【木綿・麻】なのか、という素材部分と、【染め】製法なのか【織り】製法なのか、という製法の部分、【模様は、長着のどこに、どんな方法で描かれているか】です。

 なお男性と同じく、浴衣やくつろぎ着(部屋着)以外、全てのバリエーションで【襦袢(じゅばん)】を必ず下に着ます。また足元は、「街着(まちぎ)」以外は基本的に『草履(ぞうり)』を合わせます。



 それでは【長着】のバリエーションを、おおざっぱに紹介します。……三分割されていますが、この分量でもまだ“おおざっぱ”なんです。女性和装の“沼”の深さ、おそるべし。



 まずは【礼装(れいそう)】(フォーマルウェア)の種類です。全て『染めの着物』です。



(あ)【留袖】(とめそで)

 :女性の「第一礼装その1」です。模様以外の生地の色(「地色(じいろ)」と言います)が『真っ黒』のものを【黒留袖(くろとめそで)】、地色が黒以外のものを【色留袖(いろとめそで)】と言います。「黒留(くろとめ)」「色留(いろとめ)」と略すこともあります。

  袖は普通の長さで、袖や上半身には模様が一切無く、下半身部分(帯より下)にのみ模様が入ります。よって着座形式(椅子に座り前にテーブルがあるスタイル)だと模様が見えず、地色(じいろ)だけの無地に見えます。その代わり、必ずといっていいほど【紋付(もんつ)き】にする長着です。

  洋装における『アフタヌーンドレス/イブニングドレス』に相当します。マキシロング丈ワンピースドレスですね。

  「黒留」は既婚女性の第一礼装(もっともフォーマルな衣装)、「色留」は既婚女性および“未婚女性”の第一礼装です。「黒留」を未婚女性が着ることはありませんが「色留」は既婚未婚を問わず着用します。

  フォーマル度でいうと黒留が一番ですが、色留は“一歩引いた立場”――他に主役がいるような礼装シーンでよく着用されます。黒留を一番よく目にする機会は、結婚式の親族席ですね。色留を一番よく目にする機会は、「園遊会(えんゆうかい)」や「叙勲(じょくん)式」などです。最近の話題ですと、リオ五輪閉会式で小池知事が着ていたのが「色留袖」です。また、後述する『振袖(ふりそで)』を着るのを躊躇(ちゅうちょ)する三十路(みそじ)越えの未婚女性が着用することも多いです。



(い)【振袖】(ふりそで)

 :女性の「第一礼装その2」です。成人式でおなじみです。未婚女性の第一礼装です。礼装ですが「紋付(もんつ)き」にすることは現代ではあまりありません。

  袖が長いのが最大の特徴で、その長さにより『大振袖(おおふりそで)』(もしくは『本振袖(ほんふりそで)』)、『中振袖(ちゅうふりそで)』、『小振袖(こふりそで)』に三分されます。

  『大振袖』が最も長く、立って手を下げた状態で地面に触れるか触れないかくらいあります。和装ウェディングなどで着用されるものが大体この大振袖です。現代において「振袖」といった時には大体『中振袖』を差します。袖の長さが大体1mくらい、足首のちょっと上くらいです。『小振袖』だと90cmくらい。いわゆる「ショート丈」の振袖で、大学の卒業式などで袴に合わせる時によく使われます。(本来は“礼装までいかない、ハレの日用”の振袖です。明治~戦前の華族や良家のお嬢さんが着るヤツですね。)

  洋装においての位置づけは「留袖」と同じです。ですが、現代では【華やかなハレの日用の和装】として、やや気軽に着用します。結婚式でいうと親族だけではなく、一般参列者でも着用可能。「式(セレモニー)」ではない場でも「セミフォーマルウェア」として違和感なく着られます。また小振袖ならば「洒落着(しゃれぎ)」として着用しても差し支えありません。その意味では、結構便利なアイテムです。

  「振袖」の魅力は、何とといっても“華やかさ”に尽きます。多くの場合、袖や上半身を含め全体に続き柄((とお)(がら)とも。和装では【絵羽(えば)】と称します。)の華やかな模様が入っていて、地色も模様の色彩も様々なものが用いられます。一番派手で目を引く衣装でしょう。

  なお「振袖」は、現代では【未婚女性のもの】という認識です。舞台衣装など「役割として未婚女性を演じる」のでなければ、結婚後の着用はNGです。逆に「未婚ならいつまでもOK?」というと、やはりある程度の年齢を過ぎれば、未婚であっても着用を避けるのが無難でしょう。

 現代は婚姻年齢が上がっていますので、二十代ならまず問題ありません。三十路(みそじ)に入ると、振袖の柄およびシチュエーション次第でしょうか。結婚式への参列だと、心情的に避ける人が多いかと思います。そんな時には【色留袖】を着用させてあげましょう。現代では「振袖を着る」シーンの多くが結婚式や見合い・結納などの慶事なので、キャラの年齢も検討して下さい。



 留袖と振袖には、必ず「()りの帯」を合わせます。

 留袖の場合、帯の結び方は【二重太鼓(にじゅうだいこ)】と呼ばれる形です。着物姿で一番よく目にする、あのランドセルを背負ったかのような後ろ姿です。

 黒留袖の場合は【金銀がふんだんに入った豪華な礼装用袋帯(ふくろおび)】を、色留袖の場合は【礼装用の袋帯(ふくろおび)】を【二重太鼓(にじゅうだいこ)】に結びます。これは“礼装としての決まり”ですので、外さないようにしましょう。


挿絵(By みてみん)


 振袖の場合は、【礼装用の袋帯(ふくろおび)】を【()わり(むす)び】にします。一番よく知られている結び方は【ふくら(すずめ)】と【文庫結(ぶんこむす)び】です。いずれも振袖ならではの帯結びなので、どちらかにしておくのが無難でしょう。



 この2種類が【本当の礼装】です。

 フォーマルウェアである以上、厳密な「ドレスコード」がありますので、ここは作中でも冒険せずに「定番」を貫きましょう。もしくは『このキャラを恥ずかしい目に遭わせたい!』と言う時には、この定番を外せばもれなく達成できます。

 (洋装結婚式に「白のドレスで参列する」クラスのダメージです。なお振袖の場合は模様がありますので『白っぽい振袖』でも問題ありません。作者の振袖は白でしたが、誰からも文句を言われたことはありません。)



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