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[2.2]和装の種類:その弐【男性バリエーション】

■2017.02.21-22:40【修正追記あり】

前半部分「おおざっぱな種類分け」において【(お):黒紋付羽織袴(くろもんつきはおりはかま)】を追加しました。記載漏れ、失礼いたしました。




 和装のバリエーションは、大きく【礼装】と【カジュアル着】に大別されます。礼装は何といってもフォーマルウェア。作中キャラに着せる場合は、アレンジは控えるのが無難です。

 カジュアル着でも、【洒落着(しゃれぎ)】は“ちょっと改まったお出かけ”用、【街着(まちぎ)】は“気軽なお出かけ”用です。アレンジしやすく自由度が高いのは街着です。厳しく言えばキリがありませんが、カジュアル着としては正直“なんでもあり”です。基本形と【季節感】だけ外さずに、『素敵っ』と感じるようなアレンジでキャラを活かしましょう。季節感については、後日説明します。



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 続いて【男性の和装バリエーション】です。


 男性の場合、「フォーマル」「セミフォーマル」「カジュアル」の区分は、女性と違いどちらかというと【着物の素材・製法】よりも【「長着+帯」の基本形に、何を加えるか】で区分されます。

 具体的には、先に紹介した【羽織(はおり)】【(はかま)】を合わせるか否か、です。なお、『浴衣(ゆかた)』以外、全てのバリエーションで『襦袢(じゅばん)』を必ず下に着ます。また、礼装以外では足元は『下駄(げた)』か『雪駄(せった)』、羽織袴の礼装時は『草履(ぞうり)』を合わせるのが無難です。


 おおざっぱに分けると以下の通りです。


(あ)【着流し】(きながし)

 :長着と帯だけの組み合わせです。男性和装の基本形。普段着や街着(まちぎ)としての着こなしです。時代劇の浪人(ろうにん)姿でおなじみですね。【浴衣(ゆかた)】は「着流し」スタイルです。

  洋装において『Tシャツ+デニム姿でも問題ないシーン』に相当します。


(い)【羽織姿】(はおりすがた)

 :長着に【羽織(はおり)】を組み合わせる着方です。外出着としての着こなしです。羽織と長着の素材(布)が同じ場合(共布(ともぬの)、と言います)は「アンサンブル」と称します。

  洋装において『ワイシャツやジャケットが必要なシーン』に相当します。


(う)【袴着姿】(はかまぎすがた)

 :長着に【(はかま)】を組み合わせる着方です。「羽織姿」よりフォーマル度が上がります。

  洋装において『スーツにネクタイが必要なシーン』に相当します。


挿絵(By みてみん)


(え)【羽織袴】(はおりはかま)

 :長着+羽織+袴の組み合わせです。最も「改まった感」がある着こなしです。

  洋装におけるフォーマルウェア。『礼服(れいふく)が必要なシーン』や『()(ぞろ)えスーツ(ジャケット・ベスト・スラックスのセット)が相応しいシーン』に相当します。


挿絵(By みてみん)


(お)【黒紋付羽織袴】(くろもんつきはおりはかま)

 :男性の第一礼装(最も正式なフォーマルウェア)です。和装ウェディングでの新郎の衣装です。

  洋装における「モーニングコート」「ホワイトタイの燕尾服(えんびふく)」に相当します。

  長着と羽織は黒に染めた羽二重(はぶたえ)という絹生地に(いつ)(もん)(家紋を五カ所に染め抜く)を入れ、袴は通常仙台平(せんだいひら)という縦縞模様の絹生地です。



 男性の場合、【羽織(はおり)】を洋装の『ジャケット』、【(はかま)】を洋装の『ネクタイ』に置き換えて考えると、着用シチュエーションがイメージしやすいかと思います。


 また「フォーマルウェア」としての位置づけを高める場合は、「羽織(はおり)」(およびそれに合わせる長着)に【家紋(かもん)】を付けます。いわゆる【紋付(もんつ)き】というスタイルです。

 女性の場合は「羽織」がフォーマルウェアアイテムではないため、長着だけに付けるのが基本ですが、男性の場合は「羽織につける」のが基本です。【紋羽織(もんばおり)】と言います。

 つける家紋の数と位置は、フォーマル度が高い順に【(いつ)(もん)】(前の両肩と背中の真ん中と背中側両袖山の5つ)→【()(もん)】(背中側の3つのみ)→【(ひと)(もん)】(背中の真ん中1つだけ)です。

 これは女性も同じです。礼装・略礼装でしか用いません。というか、長着や羽織を【紋付き】にすればフォーマルウェアの扱いとなります。ある意味、便利アイテム。

 【紋付き】は、洋装において【ポケットチーフやカフスボタンが必要な装いシーン】をイメージすると分かりやすいと思います。


 男性の和装シチュエーションにおいては、とりあえず【着流(きなが)し】か【羽織姿(はおりすがた)】にしておくと無難です。寒い時は羽織姿、普段は着流しでOK。



 ちょっと個性的な姿にするならば、「着流し」「羽織姿」に小物アイテムを加えるといいでしょう。一般的なものとしては【帽子(ぼうし)】【扇子(せんす)】【羽織紐(はおりひも)】があります。


 着物に合わせる「帽子」のお勧めは【パナマ帽】と【カンカン帽】。共に定番です。

 全周につば(・・)がついていて、ハットバンド(つば部分の境目に幅広のリボン状の布を巻いてある)がついています。帽子のてっぺん(・・・・)部分(クラウン)が丸くなっていたりへこませて被るのが「パナマ帽」、クラウン部分とつば(・・)が真っ平らなのが「カンカン帽」です。

 明治~戦前においては、男性の街着・洒落着における“正しい着こなし”扱いでした。(西洋文化の影響で、紳士が外出する際には帽子必須!の考え方があったからです。)


 「扇子」は実用品でもありますが、帯に差し込んで飾りとして使う「アクセサリー」感覚でも使います。また、礼装(フォーマルウェアとしての着こなし)においては必須のアイテムです。

 ただし礼装用の扇子は、閉じた時に真ん中に()がくる真っ白の【白扇】と決まっています。普段の扇子は、大きいだけで女性などと同じタイプです。

 浴衣(ゆかた)の時には扇子より「団扇(うちわ)」を背中側の帯に差す姿だと、少しラフな感じです。


 「帽子」と「扇子」は基本的に夏のアイテム。ファッション小物だとしても、礼装以外で冬の和装に扇子を差すのはイマイチですね。


 「羽織紐(はおりひも)」は、羽織の前合わせを止める為の紐です。

 男女とも、羽織は前を重ね合わせずに着用します。ボタンを留めないカーディガンスタイルです。男性は両側の前身頃を胸下あたりで、この羽織紐(はおりひも)でつなぎます。「羽織姿」における最大のお洒落ポイントです。房がある紐は礼装用、房がない紐がカジュアル用です。


 また、よりいっそう個性的な装いに【書生風(しょせいふう)】スタイルがあります。

 これは明治~大正期の男子学生のファッションスタイルに由来します。(コミック『絶望先生』の格好、といえば分かるでしょうか?)

 この場合、襦袢(じゅばん)の代わりに「低めの立ち襟のシャツ」(スタンドカラーシャツ)や「ちょっと襟の詰まったカットソー」などを着て、その上に長着を着けます。さらに袴着姿になれば完璧です。足元は下駄(げた)ですね。中のシャツは白が定番ですが、別に色付きでもOKです。

 「書生風スタイル」は袴着姿ですが【カジュアルな装い】です。羽織を着ようが袴を着けようが、『「襦袢」を着ない時点で「着流し」と同レベル』と思っておいて下さい。



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 現代社会では、男性が和装する機会はあまりありません。成人式や大学の卒業式もスーツが主流ですし、結婚式に参列する場合は黒礼服、自分の結婚式でも多くはタキシードでしょう。(女性側が和装結婚式を望めば別ですが。結婚式の衣装は、色味もカタチも全て女性に合わせて男性が決まります。迫害だっ)

 そんな和装とはほど遠い現代人が、何かのおりに見せる『着物姿』……何もイベントがなくても、それだけで『日常が、非日常に変わる』、シチュエーションアイテムです。

 活用しないともったいないです。ぜひ、おためしあれ。







男性着物に限りませんが、和装の際の「小物コーディネート」もまた素敵です。

リクエストも頂戴していますので、一通りの基礎説明が済みましたら「応用編」として、扇子や羽織紐をはじめとする『小物類』についても紹介できればと思います。

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