7:本気?でイラついたようです
こんかいちょっとみじかいですね。
「きゃあああああ!」
そう悲鳴を上げたのはウエス。スワローテイルとともに討伐数を競っていた。
「くそ、なんでこんなところに大蛇が・・・!」
「どおすんのよ~!?こんなの勝てっこないわよ」
この獣はたった二人で倒せるようなものでなく、少なくとも勇者なら。そう、私の主様なら。そう思って
「ウエス、ここはわたしが引き受けます。主様を呼んでください」
「耐えられるんですか?」
「やらなきゃいけないでしょう。このくそったれ」
「しぬんじゃねえよ、のみ」
ウエスがこの場を去ったとみると、改めてそいつを目にとらえ
「さて、この技はあまり使いたくないんですが本気でないとあなたは止められないから・・・」
「|Ich schwöre Treue.《私は忠義を誓う。》|Absolute Gehorsam gegenüber der Summe der Haupt- und seinen Willen.《和が主とその意志に絶対の服従を。》」
「|Wir haben nicht zum Aufstand verzeihen gibt keine Gnade Keine.《反逆に容赦せず、そこに一切の慈悲はなし。》|Wir möchten, dass Sie mich in Ihrer Macht ertrunken. Da mein Haupt weil absolut!《あなたの力で私を溺れさせてほしい。なぜなら私の主は絶対だから!》」
「|Raum der Zeit die Welt, Konflikt《時間世界、相克の空間》」
周囲の気温が下がる。時間が止まる。この空間、スワローテイルとオロチは世界から隔離された。
(これで・・・多少は持つ。)
どれぐらい持つかわからないが、一郎が来れば・・・そう思った時にオロチの蹂躙は始まった。
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「かぁ~うめえぇ~」
酒は潤滑剤、と言わんばかりの消費量。昼間から飲んだくれている一郎は女二人を酒を飲みながら待つという結果に落ち着いた。
「あいつらいつ帰ってくるのかな」
口が軽くなる。それを聞いていたおかみさんが
「あんたはどっちが本命なんだい?」
と、一郎の恋路を聞いてくる。一郎は「本命とかわからんな」と軽く流す。「そうかい」と返答したおかみさんは少し満足そうな顔をして
「あんた歳がいってるとはいえいい男なんだから引く手あまただろうに。早く誰かに手を付けとかないとめんどくさいよ。貴族とか」
「知らないな、俺には貴族や王の偉さがわからん。其の都度他人と同じく相手をするさ」
ジョッキに残った酒を飲み干しながら、これぐらいで控えておくかなんて考えていると
「イチローさん!イチローさんはいますか!?」
息も絶え絶えで焦っている声の主はウエスであった。
「スワローはどうした」
「それがディザスタクリーチャーのオロチを引き留めています!」
宿屋の雰囲気が一瞬にして変わる。中には「ディザスタだと!?」「急げ!道営線を張る!」と焦って対策準備を始める。
「お願いします、スワローテイルを助けて!」
「・・・おう、じゃあいくか」
軽い返事で行くと
「まちな」
おかみさんから一言
「代金はらってないよ」
「ああそうだった」
ここでも抜けていた。
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「ぎっ・・・・」
表皮は焼けただれ、腕関節はあらぬ方向へ曲がり、ただ立つことさえ難しい。しかしスワローテイルの時間世界により修復を始めている。時間を止めているためこちらが傷ついても元に戻ろうと働く。しかしそれはその世界にいるすべてに働く、つまりオロチも範囲内だということ。
(一撃で死ななければ・・・死ななければ!)
必殺のみを避ける。しかし生きてる以上体力の限界、気力の限界が来る。
足を踏み外す。
(しまっ)
ここでくる必殺の一撃。直撃コース。
「くそがあああああああああああああああ!」
精一杯の怒りを自分にぶつける。私はこんなことすら満足にできないのかと。主様の盾にすら成れてない。
バァン!
一発の銃声。必殺の一撃はスワローの体からそれる。
「お~お~、女が出す声じゃあねえな」
独特な酒のにおいに、たばこの煙さ、大好きな男のにおいだった。
「主様・・・」
まさに、神でも見ているかのようだった。
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「こりゃでかいな」
スワローの時間世界は入るときに壊してしまったため、傷はそのまま残ってしまった。
「しかし、でかいな~。蛇ってか龍ってか。両方とも爬虫類か」
軽口をたたくと、銃口を向ける。
「俺はこんなに感情的だったのか・・・わからない・・・」
(あなたに力をあたえます、有効に使ってください)
久しぶりに聞こえたミステリアス(チビ神)の声。それと同時に世界を回す力を得たことを感覚的に覚える。
「|Gott die Welt in sieben Tagen.《神は7日で世界を作った。》|Also, ob es, wie viel des Tages zu brechen.《では、壊すのにどれだけの日にちがいるのか。》」
頭に入ってきた文章を述べる。ただひたすらに。
「|Welt berührt den Zorn der Götter am Ende eines Tages.《神々の怒りに触れた世界は一日で終わる。》|Was sah der Kano Tages sagte jeder sagte.《かの日を見たものはみなこういった。》」
最後の文賞を、世界に書き記す。
「Dies irae」
その瞬間、オロチはただの一回の生物に成り果てる。終わり。頭で理解しなくても体が知っている。誰にでも訪れる終わり。死ではなくただひたすらに終わっていく。一郎の手に握られている銃が引き金を引かれ弾倉が回転し、撃鉄が落ちる。その直線状にいたものにただ一切の差別はなく。浸食し、終わっていく。
オロチとの戦いは1分ほどで終わった。
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「うっ・・・」
草原ではない、森の中ではない。家だ。スワローテイルはそう思う。
(勝ったのですね・・・主様)
誇りに思うとともに悔しくなってくる。主様に助けていただいた。とても、とてもうれしいことだが。情けない。
「おい、しんみりしてないでのみいくぞ」
目を覚ましたと見るや、ねぎらいの言葉は一切なくただいつも通り。
「・・・はい」
いつも通り、何も変わらず同じように接してくれる。そんな一郎により一層の恋慕を抱いたのはこの時だろう。
(かならず、必ず隣を歩けるようになって見せます)
今はまだ、数歩後ろで我慢しよう。肩を並べるには程遠い壁は、大きなかっこいい男性のものだった。
中二病といったらあのゲームですよねというわけで詠唱はパクリました(ごめんなさい)