24:依頼が来ましたよ
「やあやあ、久しく!」
「誰だっけ?」
「やだなぁ、ローちゃんだよ」
「おぇ」
流石に20代後半の奴がニッコリしながら自分をちゃん付けは気持が悪かった。一郎は軽くえづきながら
「なんだよ、いきなり。仕事か?」
「仕事は暫くないかなー、話は君のルサルカちゃんのことさ」
いきなり話が重くなる、かわいいね!とかそんな言葉がローテッドから出るわけがない。
「…かわいいよねー!」
「…まじで?」
「冗談だよ、その視線は死ぬ」
付き合い悪いなぁとローテッドが椅子の背もたれに背中を任せる。椅子を傾けプラプラしている様はとても1国の王に見えない。
「姿勢どうしたよ」
「糠漬けは時々手で回してやらなきゃ駄目なんだぜ?」
「よし、俺が石を乗っけてやろう」
「これ以上いらんて」
ローテッドのお酒が届く。ウィスキーのストレート、始めに飲むものとしては少し強過ぎる気がした。
口に含むと即座に静止し約5秒経過した。
「…あー、こんなん飲んでんの?」
「そうそう飲まんよ、こっちこっち」
グラスの縁を持ちローテッドに渡す、彼は受け取ると少し怪しみながら含んだ。渡した時の一郎の顔がニヤけていたからだろう。
「おっ飲みやすい」
「だろ?清酒は好みなんだ」
「個人的にはワインよりも良いな。次は最初からこれを頼もう。」
「そうしろそうしろ」
一郎がローテッドからグラスを返されると残りを一気に飲んだ。
「はぁ〜、で。何がわかったんよ?」
「正規品じゃないかもしれないんだよね」
「店が?」
「いや、卸した方かな。少なくともあの店は正規店だ、わからなかったっぽいね?」
「まー面倒臭いわね。それで何、殺してこいかい?」
「馬鹿いっちゃいけない、それは最悪の手だ」
「ですよね」
空になったグラスを回し、カラカラと氷を掻き回した。
氷を1つ口に含み、転がす。
「しかしだな、俺の武器は制圧に向いていないんだが?」
「なぁ、一郎さん。僕はね、貴方に殺しを覚えて帰って欲しくない」
「そりゃな」
「貴方は最後自分の世界に帰るべきなんだ、それにこちらの常識を持ち帰っては行けない」
「当たり前だ、こんなこと誰が好んでやるか」
「そうだ、だけど。出来るのと出来ないでは大きな差がある」
「いっちょ前だな、有り難く頭の中心で記憶しておく」
口の中の氷をグラスに戻し、再びカラカラと鳴らす。
「で、制圧なんだが」
「このタイミングで言う胆力は凄いと思うぜ、俺」
「それは、とりあえず置いとこうぜ」
「まぁいいけど、プランは?」
「スニーキングミッションだ、女湯を覗くような感じの!」
ローテッドは椅子から立ち上がり、拳を強く握って腕を震えさせている。
「バッカじゃねぇの?」
「内容は単純、見つからずに関連書類なり何なり証拠を見つけて持ち帰ることだ」
「無視かよ」
「という訳で明日から宜しく」
「今何時だと思ってる?」
「大体午前2時位じゃないか?」
「それが分かってるなら喧嘩売ってるんだよな?」
「だってそうでもしないと君の付き人ついて行っちゃうだろ?他人のプライバシーだから関わる奴は少ない方がいいと思ったんだが」
「あら、色々考えてらっしゃる。とりあえずそろそろ座れ」
「おう、座る」
大きな音を立てて席に着いたローテッドはそのまま話を続けた。
「で、場所と地形は?」
「こいつだ」
手のひらを上にして一郎に見せる。その上には立体映像の地形と建物が表示されている。今現在のこの場所からそこに行くまでのルートも丁寧に記載されている。
「これもらえない?」
「はい」
「あ、とれるんすね」
「そりゃ魔法だし。ここの分払うから後はお願いするよ」
「じゃあ行って来るよ。スワローの世話よろしくな」
「え?それは難題だな」
一郎が出て行ってからしばらく、スワローがローテッドの前に現れる。
「あ、あの。一郎様を見ませんでしたか?朝から私のレーダーに反応していないんです」
(うわあこいつこわい)
スワローがその日町中を駆け回ったのは言うまでもない。




