学校1
真子かわいいよはあはあ
結局あの後は何事もなく帰宅して、抱き合って眠った。そして朝。
「ふあぁ…」
朝起きて、腕の中の真子を起こす。やっぱり少し眠いな…昨日少し遅くなったからな。
「真子。ほらまーこー。起きろー」
「んぅ…」
あ、起きた。朝から癒されるなあ。
「よし、おはよう、真子。今日から学校だぞ」
真子がきょろきょろと周りを見回して、制服を取り出す。そして着替え…
「ストップストップストップ!!!!!お前寝ぼけてるだろ!」
真子が着替えるのを必死で止める。危ない、本能に負けそうだった…!
「…?………はうっ」
ボン、と赤くなる。大丈夫かこの子。
「…まあ、俺もすぐに出ていくから。大丈夫だ」
「はい…おはようございます…」
「ああ、うん、おはよう」
大丈夫なのだろうか、この子。本当に。
「ん、そういや、電気ガス使えるかな?」
朝の水道水をコップに注ぎながら思う。親父は三日と言っていたはずだ。
「えっとレンジは…っと。お、点く。つーことはガスも…おお!点いた!」
レンジが点けれたり、ガスコンロが点けられることで大喜びする高校二年生。なんか斬新な光景かもしれない。
「おはようございます」
顔でも洗ってきたのかしゃきっとした真子が起きてくる。寝ぼけた真子もいいけど、やっぱりいつものモードだなあ。
「おう、おはよう真子。喜べ、電気が点くようにようになったぞ」
「ほんとですか!よかったです!これで亮太くんに私の手料理が食べてもらえます!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
恋人の手料理を食べる。男として夢のようなことだ。
「さ、じゃあ登校しようか。初日は早い方がいいだろうからな」
「はい!」
電気ガスを使えるのでなにやら真子の機嫌もいい。今日はいい日になりそうだった。
「…と思ったらこれか」
「ヘイ姉ちゃんお茶しなーい?」
「ちょ、ちょっと!困ります!」
分かりやすいナンパだった。男はウチの制服を着てる。こんなやつと同じ服なんて汚らわしい。本気で嫌だ。
「自警団だが、真子は嫌がっているぞ。やめろ」
「はあ?ナニ?やるの?いいよ?ほらこれ見ろやコラ」
言ってナンパはナイフを取り出す。バタフライナイフねえ…
「バタフライナイフじゃ人は殺せないぞ。というか人の肉を斬ると歯こぼれしたり最悪刃が折れる。やってみるか?」
俺がそう言うとナンパは一瞬ポカン、としてわなわなと肩を震わせた。
「ざっけんな!舐めてんじゃねーぞコラアアァ!!!!!」
そら来た。
こういう『ナイフ持ってれば勝ち』みたいに思ってる奴はナイフなんて練習してない。素人が使うナイフなんて全然怖くない。当たってもアレだしそんなにダメージないだろ。
予想通り上から下に肘も曲げない単調な振り下ろし。…こいつ運動神経悪いだろうな。
「そら」
こんなんなら俺でも投げれる。ナイフを持った腕を取って体育の授業で習った一本背負い。バーン!と音がしてナンパの背中が地面に叩きつけられる。その一撃で完全に伸びていた。ナンパが切れてから約3秒。非常にあっけなかったな。
「亮太くん!」
タタタ、と真子が走ってくる。その顔は心配に染まっていた。
「大丈夫ですか!?」
「もちろんだ。一太刀も食らってないさ」
心配をかけないよう爽やかに笑ってみせる。…おっと。
「おい誰か!ガムテープ持ってないか!紐類でもいい!」
そう言うと、いつのまにか相当数集まっていた野次馬の中から一人の女生徒が出てきた。
「ほら、手錠だ」
「おお、すまない…手錠!?なんでこんなもん持ってんだあんた!」
脳内の危険信号が鳴り響く。SMプレイか!?危険人物だ!
「…やっぱり自警団じゃないんだね。あたしは自警団の二年生だよ」
「ん、あ、ああ…自警団ってのはこんなの持ち歩くのか…ああ、そうだ。名前借りて悪かったな。一応入る予定ではあるんだが」
「そうかい。まあ、ナイフ持ちを制圧できるほどの能力があるなら一軍にはなれるさ。じゃあ頑張ってね」
女生徒はポイ、と手錠の鍵を投げて去って行く。格好いいな。なんかこう…アネゴみたいな。
「…むー」
…なんだろう。真子の機嫌が悪い。多分俺があの女生徒とばかり喋っていたから嫉妬しているんだろう。
「大丈夫だよ。俺が愛してるのはお前だけだ」
「りょ、亮太くん…」
野次馬の中から舌打ちや「リア充爆発しろ!」という声が聞こえてきた。ふむ、優越感。
「…ぎゅ」
「へにゃあああ!?公衆の面前でなんてこと!?」
真子が戸惑っている。しかし色んな理由からこうせざるを得なかったのだ。主にキモいナンパと触れあってたから癒しが欲しかったとか。
「…よし。こいつ運ぶか」
というわけでまず気付けのために腹に踵落としを食らわせるのだった。
亮太くんは以外と強いのです。




