結婚
ドキッ!男だらけの、補習大会~!
なんて言ってはみたが、これ読みたいやつ居るのだろうか。
まあ、一応の描写は必要だろう。
補習を受けているのは、俺と慎、その他大勢の男子たち。結構居る。
もっとも、真面目に受けているとは一握り。真面目でない奴らはというと…。
「ウノ」
「くっそ!言い忘れなかったか!」
「革命だー!」
「うわっ!くっそ、俺の残しといた2が!」
「食らえチャージショット!」
なんて具合だ。ゲーム機を持ち込んでるやつも居ることに驚きを隠せない。
「チー!」
麻雀!?
「ロンです、先生」
「なっ!?くっそ……」
「おい先生あんたなにやってんだ」
そこに居たのは懐かしの先生。(3部 問題を参照)数学教師だったが、たまたまこの学校に倫理教師として赴任してきたのだ。つーかこのコソコソしなきゃいけない状況でなんでスペース取る麻雀ができるのかと思ったら、そういうことか。
「ええ?だって、ここに来るような奴補習しても勉強しねえじゃん。あ、くそ、足りねえ…ほらよ、2500円だ」
10点1円らしい。レートは普通だ。
「そんなんでいいのか倫理教師」
「いいんだよ。倫理なんてクソ喰らえだ」
「本当にそんなんでいいのか倫理教師」
「俺の専門は数学だ!」
はっはっは、と高笑い。変わらねえな。この先生は。
「それより、お前はいいのか?」
「は?」
「帰ってもいいぞ?昔、お前が愛欲に溺れてもいいって言ったが、別に嘘言った訳じゃない。本心だ。
お前だって帰りたいだろう。俺だって嫁が居たんだ。それはもう溺れた。好きで好きでしょうがなかった…。ま、もっとも結婚してしばらく経ったら変わっちまったし、俺のあいつを見る目も変わっちまった…。
何が言いたいかっつーと、好きな人を好きなだけで居られるのは、今だけだ。存分に恋の快楽を味わえ」
恋の快楽、ねえ…。
「先生」
「なんだ?」
「俺は、いつまで経っても真子を好きなままで居ますよ」
「だから、今俺が…」
「それでもです」
力強くそう告げると、先生はきょとんとした顔をして、それからニヒルに笑った。
「そうか。お前はそういう奴だったな」
しっしっ、と追い返される。結局追い出されるのか。
校門の前には真子が立っていた。
「悪い、待たせちまったか」
「いえ、そうでもないですよ」
まあ、待ってるなんて一言も言ってなかったから俺が謝るのも変な話か。
「帰ろうか」
「そうですね…」
てくてくと、歩いて帰る。二人並んで、手は繋がない。
「…なんか、最近は日常が濃いですよね」
「濃い…か、確かに」
急に転校してきて、戦って、風邪引いて、テスト。あまり体験している人も居ないだろう。
「なあ、真子。今、俺と居て楽しいか?」
さっきの先生の言葉も気になり、聞いてみる。好きな人を好きなだけで居られるのは、今だけだ…ねえ。
「楽しくはありますけど、疲れます…」
「つ、疲れる、か…」
重い男だったりするんだろうか、俺。何故か頭の中で慎から「重いよ」って突っ込みが来た気がする。
「だって、いつもドキドキしてるんですもん」
ふわりと笑って、恥ずかしそうに言う真子。その姿は、夕焼けに照らされて、とても可愛く見えた。
「…それなら、決まりだな」
「へ?」
「なあ、俺は来年18になる」
「…?知ってますけど…。同学年ですし…」
言わんとすることがわからないらしい。遠すぎたか?
「高校卒業したら、結婚しよう」
大学は、既婚者が居ても普通だ。俺はできるだけ最短で結婚したかった。
「…どう、だろうか?」
「…それなら」
真子が三歩俺より前に出て、振り向く。とびっきりの笑顔で、言った。
「いっ…ぱい、幸せにしてくださいね?」
当然だ。
俺は答える代わりに、真子の手を握った。その手は、暖かくて、心地よくて、幸せだった。
ぽんぽん、と紙の入った筒を肩に当てる。周りは完全にお祭り気分。泣いている人や写真を撮っている人など、やっていることは多岐に渡る。
「僕たちももう卒業かー…なんか実感無いねえ」
「気持ちは分からなくもないがな」
とはいえ、多分そろそろ実感をくれる人が来るはず…。
「亮太くぅ~ん、慎くぅ~ん!」
ほら来た。両手を広げて飛びかかってくる綺麗な女性。なんか色々台無しだ。
いつもなら避けるのだが、今日はそんな無粋なことはしなかった。
「そ、卒業おめでど~!いづでも、あぞびにぎでいいがらねぇ~!」
「先生、何言ってるのか分かりません」
パン、と銃を撃つ。この銃は卒業時に貰えた。これで大事な人を守れ、とのことだ。
「あいたっ!…もう。本当に、いつでも遊びに来てね?」
「了解です。メールアドレスでも交換しときましょう」
「そうだね。…え?亮太くん、ガラケー?」
「悪いんですか」
普段はまともに使わない敬語も、今日は使う。じゃないと、本当にこの人を恩師だと認識できなくなる。
「じゃあ、またね!…あ、そうそう!女子陣は向こうに居るよ。…結婚式は呼んでね?」
「招待状は送ったはずですよ」
ぴゅー、と逃げるように去っていく先生。俺たちもそろそろ女子陣の方へ行くか。
「おーい、二人ともー!」
「あ、亮太くん!」
「…なんか僕を居ないもののように扱うね」
「宿命さ…」
俺はきちんとアネゴを呼んでやったし。
「そろそろ市役所行かないか?」
筒のなかに入っているのは、卒業証書と、もうひとつ。俺たちの夢の証だ。
「そうですね。ね?アネゴさん?」
「う…」
アネゴと慎、この二人は二人で結婚するらしい。俺たちに充てられたのか、否か。
「お!なんだ、もう行くのかお前ら!」
「結婚式には呼べよー!」
「余興くらいやってやるぞー!」
周りから飛ぶ歓声。俺たちの前途は、祝福されていた。
「さあ、いこうか、真子!」
「はい!」
人だかりを二人で駆け抜ける。しっかりと、お互いの手を握って。
~Fin~
くぅ疲!応援して頂いた皆様、ありがとうございました!
伏線を投げっぱなしにしている自信がありますので、気になることや質問等あればお便りください!
では、この私の次回作にご期待ください!
※友人とのコラボ作品を書くかもしれません。しばらくしたら載せますので、是非そちらも見てください。




