返却
思いきり遅くなりました!すいません!
以降は特筆すべきこともなく、一週間後。俺たちはテストを返却されていた。
「先生。テストの点というのは人生においてそこまで特筆すべきことなのでしょうか。人生には国の位置や名前が必要なのも分かります。しかし、それは人と関わりを持ついじょ」
「はい、篠原は追試」
「くそーっ!」
先生の声はいつも無情だ。結局俺は数学以外追試になってしまった。唯一免れた数学もギリギリだ。
「…」
ぽん、と慎が俺の肩に手を置いてくる。同士よ、とでも言いたそうだ。しかしあえて言おう。お前のせいだ。流石に恨みから視線に殺意がこもる。
「が、頑張ってください。亮太くん…」
申し訳なさそうに言う真子。彼女は彼女で隣で奇声を発する俺に気を取られながらも普段と変わらない点数を取っている。圧巻だ。
俺はそんな真子が心配しないように、頭に手を置いて言った。
「大丈夫だ。お前のせいじゃない。しばらく贅沢はさせてやれんが、我慢してくれるか?」
「もちろんです!」
「…見た?あの会話。もはや夫婦だよねぇ」
「贅沢はさせてやれんって、共働きなのにそんなこと言うかねぇ」
そんな会話を見る友たちの生暖かいこと。放っておいてほしい。
恨み言の一つでも言いたいものだが、ここはぐっと我慢する。大丈夫。復讐のチャンスは来る…!
「追試ねぇ。でも亮太は成績はそれなりだったはずだろう?何かあったのかい?」
アネゴが俺の点数を不審に感じたのか、話題をシフトする。俺には助け船どころか宝船のような話題だ。
「いや、なんか金色の全身タイツが現れてな」
ビクッ!と慎が反応する。俺はそれを目ざとく捉え、慎に話を振った。やっぱりお前か…!
「あれぇ?どうした慎くん?なぁんか反応したけど~?あ、そういえばあのステルススキルといい、変なイタズラといい、なぁんか見覚えがあるんだが、気のせいかなぁ~?」
だくだくと冷や汗をかく慎。真子も俺から話を聞いていたためか納得した様子だ。
そして見逃さない。アネゴがまるで獲物を見つけた猫のように目を輝かせていたのを。
「へえ、そりゃどこの誰だろうねぇ?そんなこと許せないよねぇ?」
「そうだよなぁ、アネゴぉ。常識があれば、そんなことしないよなぁ?」
「あれぇ?そういえば、あの影の薄さ、心当たりがあるぞぉ?」
「誰だろうねぇ…?そういえば、授業中、妙に長いトイレに行っていた人が居た気がするねぇ。ナニかしてたんじゃなければぁ、きっとそいつが犯人なんじゃないかねぇ?」
冷や汗が止まらない慎がキラリと目を光らせる。しまった!奴め、どこに突破口を見いだした!?
「確かぁ、そいつの名前は…」
「…な……たんだよ…」
「ええ?なんだってぇ?」
まずいっ!
「アネゴ、やめ…」
「ナニしてたんだよ!保険体育の授業だったからね!」
教室中が一斉にこっちを向く。一気に俺たちは視線の、そして話題の中心だ。
「ボクだって正常な男子高校生だし!?しょうがないと思わない?男子高校生だし!」
「わ、わかった、わかったから…落ち着け。周りが見ている」
ハッとなって周りを見渡す慎。もはや手遅れだ。慎はorzしていた。
「まさか慎にこんな一面があったとはねぇ…」
俺たちは、友の新たな一面を知ったのだった。




