追試3
ポイント100突破!やったーーーー!!!!
おかしい。ありえない。
今、俺は絶対にありえないことを体験している。誰か、教えてくれ。
場所は会議室、時刻は朝9時半。
目の前には問題用紙、シャーペンを武器に戦う行事、それはテスト。
部屋にはカリカリという紙とHBの芯が擦れあう音だけが響く。部屋に居るのは俺と真子の二人だけ。
そう、二人だけだ。なんとここには試験監督が居ない。
だというのに何故だろう。
カンニングしちゃいけない気がする…!
少し、たった少し横を見れば真子の答案用紙が見える。でも、なんだろう。プライドとかじゃなく、見た瞬間何かが終わる…!
問題を解きながら頭の片隅で考えを巡らせる。やはり、隠しカメラか…!?最近はすごいもので、一見しただけじゃカメラだと分からないものも多くある。自警団でも何度か捜索し、見つけている。
目だけで周りを見渡す。何か、それらしいものは無いか…!?しかし、見つからない。
カメラではないか、と思って少し警戒を緩める。見られている訳ではないことに安心したのだ。
となるとこのオーラはなんだろう、盗聴機か?音だけでも以外と状況は分かるものだ。もしかすると何故かハイテクなこの学校のことだ、ソナーのような感じでこちらの様子を伺ってるのかもしれない。
考えていると、つい手元がおろそかになる。俺は机に置いていた消しゴムを落としてしまった。
「…」
どうしたもんか、とは思うが、試験監督が居ないから仕方ない。自分で取ろう。椅子から降り、床に膝をついたその瞬間。
「…どうぞ」
全身タイツの男(と思われる)が消しゴムを取ってくれた。
「…!?」
叫びそうになる口を慌てて塞ぐ。今こいつ、どこから現れた!?思い出したくない過去が現実であることを裏付けるように、彼は机の下に潜っていった。
…何故気づかなかったんだ俺!監視カメラよりよほど分かりやすいだろう!
ちらりと真子を見ると、一連の騒動など無いかのように必死で問題を解いていた。なんとも強固な集中力をお持ちだ。
なんとなく思い付いて、机の下の男が居る辺りを蹴る。が、足には何の手応えもなかった。
ーーーかわされた!
気づけば、俺の頭はテストなんて考えていなかった。まずいまずい、全身タイツの男の思うつぼだ(彼の目的は知らないが)。
しかし彼、あまりに気配が無い。まだ机の下には居るのだろうが、居なくなっても気づかない自信がある。案外居なかったりしてな、ともう一度消しゴムを落とし、机の下を見てみる。
誰も居なかった。
「何でだあああぁぁぁぁ!!!!!!!」
耐えきれずに叫ぶ俺の声は、しかし真子以外誰にも届くことがなかった。図らずも、誰にも見られてないことを示した結果となる。




