敗北
今回も短いです…。ちょっとスランプ気味?
「ちぇー…」
慎が悔しそうにため息をついている。気持ちは分かるんだが…。
「僕何もやってないよ。活躍したかったなー…」
「そんな事言ったら、あたしはほぼ参加すらできなかったよ?」
「真子さんは一人、亮太はほぼ全員倒したし…」
俺は結局、リーダー以外の全員を殲滅した(慎曰く「鬼神のようだったらしい)後、向こうのリーダーに一撃でやられた。あれは完璧な気配の消し方だった。
「でも、私も不意討ちで倒しただけですし…」
真子も心なしかテンションが低い。俺も負けたし、落ち込んでいるんだけど。
「でも、本当、亮太の最後はすごかったよね。2分くらいで殲滅してさ!」
「そんなことないさ。まぐれだ」
「またまた~」
とはいえ、多分俺が使う分には『拳』が一番強いだろうことは分かっていた。
剣道はやったものの、いかんせん剣の競技は多くない。しかし俺は中学時代に友人から「無茶苦茶だ」と言われるくらい武術に励んだ。場合によって使い分けられる強みがあるのだ。
「でも、亮太が武術やってたのって、中学時代だけだよね?何か理由とかあったりするの?」
慎が場合によっては失礼にもなりうることを聞いてきた。理由か…。
「今、真子を守るためだな」
俺は、少々照れながらも答えた。
「中一のとき、家族皆居たときに泥棒が入ってきてさ。ナイフ持ってたんだけど、速攻で親父が叩きのめしたんだ。それで、なんでそんな強くなったのかって聞いたら、親父が大事な人を守るためだ、って言ったからやってみた」
飛び付いてくる真子を受け止める。真子も多少思うところがあったようだ。
「ま、今は『守る』の定義も俺の中で変わってきてるけどな」
そこまで言うと、真子が俺の腕の中でしゃくり上げた。
「…私、このメンバーでいけば、負けることはそう無いと思ってました」
唐突にそう言い出す。
「このメンバーで負けたことが無いから、そう思っていたんだと思います。でも、実際はそうじゃありませんでした。私、凄く悔しかったです…!」
嗚咽が漏れないよう強く抱き締めてあげたものの、声が少しずつ漏れていた。
「大丈夫さ」
俺は確信を込めて言った。
「負けることは悲しいことじゃない。だから悔しがる筋合いはないんだよ」
俺は、精神面でも真子を守ってみせる。
その覚悟が、今やっとできたのかもしれない。




