開会
昨日はどうもすみません。最近忙しいので、投稿できない日が続くかもしれません。
「それでは、一軍昇軍戦、開会式を行います!」
どこからか機械を通したノイズ混じりの声が聞こえる。それは開会式の始まりを告げていた。
新兵器を貰ってから一週間。できる限りの対策を練って、とうとう戦いが始まった。
「き、緊張します…」
真子はぶるぶる震えている。その肩を持って少しだけ抱きよせる。真子曰く、緊張が多少治まるんだそうだ。俺に対する憎悪の視線は忘れられなさそうだが、それはそれ。真子の心の平穏には換えられない。
「ではまず、一軍の出場グループ『十字砲』のリーダーからの儀式をおねがいします!」
「「「…」」」
俺たちは黙っていることしかできなかった。
『十字砲』て!
何と言うか、他に何か無かったものか。特に、何故グループ名なのに十字軍じゃなく、十字砲なんだ!
しかし、俺たちの葛藤は露知らず、飄々と向こうのリーダーは話を始めた。
「こんにちは。リーダーの村田健です。本日はお日柄も良く、とかで始めてもアレなので、こちらから言わせてもらうことはただ一つです」
おお。
その中二ネームからは程遠い、素晴らしい挨拶だ。きちんと笑顔もくずれていないがしかし、一つが気になるな。何を言うつもりだ?
「篠原亮太さん」
俺?
「その格好全然似合ってねえんだよバァァァカ!!!」
解説しておこう。
この間も彼の笑顔は一点も曇っていない。
「うっわー…。ナチュラル中二病な亮太にとっては今のキツいんじゃない?」
「ま、まあ、なんだ、元気出しなよ」
「私はその格好、似合ってると思いますよ!」
仲間たちからのフォローもかなり痛い。
「以上です。失礼しました」
「ちなみに、儀式は、笑顔で相手を罵倒することです」
儀式って…
「では、次!えー…すみません。二軍側、グループ名がありません。今即興で決めて下さい」
司会が少々困った風に言ってくる。名前か…
「アネゴ、何かいいの「あんたに任せたよ、リーダーだろ」無いんだな分かったよ」
ありえないほど使えない。
グループ名か…まあ、適当でいいか。
「『ベアリング』です」
「べ、ベアリング?それはあまりにも…」
「『べアリング』です」
「ですので…」
「『ベアリング』です」
「…はい、では『ベアリング』のリーダーからの儀式をおねがいします!」
ちょろいな。
「…悪魔みたいだね」
慎のツッコミなんて気にしない。
「…えー、『ベアリング』のリーダー、篠原亮太です。『十字砲』という中二な名前の皆さんには負けたくないとは思うものの、別にこんな名前の奴等だし、負けても恥じゃない、というか、真面目に戦うことが恥だとも思うので、まあ、ぼちぼち頑張ります」
一つ罵倒するたびに向こうの人が倒れていく。司会の人も若干引いてる。こっちの人は慣れてる。三者三様とはよく言ったものだ。
「こ、こほん。では、ルールを説明します!皆さんには、このセンサーを付けてもらいます。これにより、自分に何発被弾したかが分かるようになります。五発攻撃が当たったら退場ですが、頭、股間に当たった場合は一撃で退場となります。それから、この五発というのは通算ですが、フィールド中に回復アイテムがあり、それを使った場合は二発分回復します。ただし、五発以上には回復しないので、ご注意を」
わー。長ーい。読みにくーい。
皆さん、読み飛ばしていいですよ。そして後でルール確認に読み返してくれれば分かりやすいですよ。
「…ハッ!」
「…亮太、今誰か乗り移ってなかった?」
「いや、なにやら意識が無くて…」
「それでは、『十字砲』の四人vs『ベアリング』の四人、勝負の前の握手をどうぞ!」
俺はリーダーの手を握った。
それにより、確信した。
ーーー勝った。
だ、誰が乗り移っていたんだ…。




