装備
テスト終わったーーー!!!第一部の締めに少しずつ向かって行っております。50話くらいで一部終われたらいいな…
「天野さん、好きです!」
「…気持ちは嬉しいです。ありがとうございます。でも、ごめんなさい。私は亮太くんが好きなので…」
「そんな…」
膝から崩れ落ちる田中。なにを『信じられない』みたいな顔してんだか。俺がいる時点でダメ元で行くべきだろう。ちなみに天野というのは真子の名字だ。ちなみに俺は篠原なのでお忘れなきよう。
「じゃあ、せめて最後にキスしてくださ」
「撲殺、絞殺、刺殺、銃殺…」
「はいごめんなさい諦めます!」
む。殺し方が口から漏れていたようだ。あまりの怒りに殺気(親父譲り)も漏れてたな。危ない危ない。
「今度からはサイレントに殺さないとな…」
「もう手出さないんで勘弁してください!」
そう悲鳴を上げると田中は逃げ出してしまった。うん。お勤め果たせた。
「じゃ、俺パトロール行くから。何かあったら連絡してくれ」
「はい!ありがとうございました!」
急いでパトロールに戻る。こっそり抜け出してきたからこりゃどやされるな…
「遅い!」
「すまんアネゴ。ちょっと事情が…」
戻るとやっぱりアネゴがカンカンだった。おかしいな。俺がどやされると思ったのは先生にであって、アネゴはむしろ率先してサボりそうなのに。
「せっかく今日は先生が話があるからさっさと戻ってこいって言ってたのにねえ。あたしは何があるか知ってるけど、取り消されると怖いよ?」
取り消されると怖い、ねえ。
「つーか何でアネゴにだけ伝わってるんだ。差別か」
「差別じゃないさ。区別だよ。あたしは二軍リーダーだからね」
二軍リーダー?
「サブリーダーは?」
「あんたに決まってるじゃないか」
要するに二人しかいないから先輩がということですねわかります
「じゃ、行ってみよ~」
「おー…」
まあ、口ではどうこう言いつつも、結構楽しみにしている俺がいたりするので、素直に武道場へ入る。
中にはもう千葉先生がいた。手に付けているのは…なんだあれ?いや、マジで何アレ!?
先生は手に何か名状しがたいうねうねした感じのものを付けていた。緑色してるし、ヤバそうにしか見えない。
「あれ、先生、またスライムかい?好きだねえ」
「そりゃ私の唯一の趣味だよ?当たり前じゃないの」
「ってスライムかよ!」
激しく騙された気がする。
「で、何ですか先生?俺に話って」
「ああ、それなんだけどね。君の固有武器をあげようと思って」
固有武器。
なんだその胸踊る響き。引っ込め俺の中の中学二年生。君はもういらない。
「というわけで、こっちで勝手に決めさせてもらったわよ。見てたよ昨日の模擬戦!君は遠距離苦手で、近距離は相当得意なようね。まあもちろん、それを見切って遠距離から撃ってたかぐ…もとい、アネゴさんも凄いけどね。実際、アネゴさんが勝ったし」
「ちょっと待った。先生までそう呼ぶのかい?」
「だって皆アネゴって呼んでるじゃない」
「そうだぞ、アネゴ。」
「これは私がおかしいのかい…?」
だってアネゴの本名ってアネゴだろ?
昨日の模擬戦というのは、昨日の仕事の内容だ。アネゴと再戦した。結果は惨敗。負けた後に家で真子とにゃんにゃんしたからいいけど。
「で!ここからなんだけど、亮太くんに質問があります!亮太くんは今までどんな武術やってた?」
「そうですね…かじった程度のやつも合わせたら、空手、柔道、剣道、フェンシング、合気道、八極拳、太極拳、杖術、棒術とかかな?」
他にも色々やってるけど、面倒だから言わない。メインだとこれくらいだし。
「ちなみに、弓道とかは?」
「やってないです。遠距離は全く才能無くて」
そもそも、八極拳とか太極拳もそうと知って始めたんじゃない。初代プリキ○アの動きを真似てたらそれが中国拳法だと知ったんだ。
「へえ…まあ、じゃあこれ使えるよね。はい!」
そう言って渡されたのは黒光りした変なもの。なんだこれ?指を通す輪があるし、今度こそメリケンサックか?
「はい、それ。指入れて握ってみて」
デジャヴを感じつつ言われた通りにする。すると…
「うおお!?」
ポケットに入っている携帯が震える。見ると、メールが届いていた。
「そのメール見てみて」
言われた通り開くと、液晶に大きな文字で三つの項目が出てきた。
○拳
○剣
○盾
「これってまさか…」
期待にワクワクしつつも一応先生に聞く。先生はただ一言、「押してみて」と言った。
タッチパネルを握ってから興奮で汗が垂れる手で『剣』を選択する。すると…
ビュッ!
サーベルのような形で握っている部分の隙間から剣が出てきた。もちろん刃ではないので棒とも言えるが、なかなか剣の形をしていてカッコいい。
次に『盾』を選択する。すると、剣が引っ込んでメリケンサックの相手に当てる部分が広がった。あまり大きくはないが、盾として使うには十分だ。
そして、『拳』を選択して元に戻す。俺は感動と興奮に打ち震えていた。
ーーー俺の中の中学二年生。存分に出てこい。ここがお前の生きる場だ。
「本当は別々にしても良かったんだけど、それだとかさばるし、そっちの方が燃えるでしょ?」
キラーン、と先生の目が光る。素晴らしい!
「ありがとうございます!」
「ふ、先生の凄さを思い知ったかね?」
「それはもう!」
今なら先生に五体倒置できる。躊躇わない。
「何よりスマホ持ちながら戦うスタイルがカッコいいでしょ!?」
「そうです!俺仕事のとき制服着なくてもいいですか!?」
「私の権限でマントの着用を許そう!うちの制服なら見映えするはずだ!」
「やったあありがとう先生!じゃ、せっかくなんでそのマントにこんな機能を…」
「…帰っていいかい?」
アネゴのそんな悲痛な声は俺たちには届かなかった。
亮太くんの中の中二病は抑えられません。




