親父
「…で、お前らは永遠を誓ったと。」
「そういうことだ!」
「何元気に返事してんだボケが!」
「へぶっ!?」
さっきの事を説明すると、親父から凄まじい威力の右ストレートが飛んできた。なぜだ…
まず、状況説明。
俺と少女が永遠を誓い、イチャイチャしようとした矢先に親父が帰ってきたので、何があったかを説明しなくてはならなくなった。
以上。
「あのなぁ。お前自分が何歳だと思ってんだ?まだ16だろ?結婚できる歳なのか?ああん?」
説明した結果、このガラの悪い親父(職業運送会社のお偉いさん)に説教をされている。おお、怖い怖い。
「お前なんか失礼なこと考えてるだろ。」
エスパーか。
「別によ?お前らがイチャイチャしようと、夜を楽しもうと知ったこっちゃねえがな?」
「キャ♪そんなお義父さん、夜だなんて♪」
「そっちの姉ちゃんは黙っとれ。あんたも殴られたいか?」
「ごめんなさい」
人の部屋に這入ってくるような根性のあるストーカーを圧倒するほどの殺気を出す親父。恐ろしい。いやほんと。
「大体お前ら、自己紹介とかしたのか?」
「「あ」」
親父のもっともな発言に俺と少女は目から鱗を出す。そうだった。俺この娘の名前も知らない。いや俺の名前は知ってるだろうけど。
「あ、あー…えっと、篠原亮太です。高二。よろしく。」
「え、えと…天野真子です。よろしくお願いします…」
「名前も知らなかったのかよ…どんだけノリで言ったんだ…」
だって可愛かったんだもん。(男が使ったらただただキモいけど女が使ったら可愛い言葉第一位)
「まあいい。息子の恋愛に口出すほど野暮な真似はしねえ。ンなことより、真子ちゃんだったか?こんな時間に女の子が外に出てて大丈夫か?」
確かに。気づいてなかったけど、もう9時近い。親としては心配なんじゃないだろうか。
「大丈夫ですよ。うちの親は仕事で色んな所駆け回ってますから。今は故郷で仕事するんだって張り切ってフランスに行ってます。」
「フランス…画家か何かか?つーか、やっぱり外国の血が混ざってたのか。」
俺が耳賢く故郷の事を聞くと、微笑みながら否定された。
「いえ、私の故郷は日本ですよ。親はハーフですけど、フランスで生まれたのでフランスが故郷らしいです。」
「クオーターってことか?でもその髪、天然だよな?」
「多分隔世遺伝です。それに、厳密にはクオーターでもないんですよね。父も母もフランスと日本のハーフですから、血の濃さ的にはハーフと変わらないんですよ。」
なんかややこしくなってきたな…まあいいか。要するにこの娘は可愛い(なんか何でもこの言葉で片付けられそうだ)。
「ところで亮太。結婚を約束した恋人ができたんだ。お前にはこれをやろう。」
そう言って親父が俺に手渡したのは自転車のもののような小さい鍵。
「親父、こりゃなんの鍵だ?俺は免許なんざ持ってないぞ?」
「家の鍵だが?」
…親父は何を言ってるんだ?
「親父。今時理科で使う顕微鏡の箱の鍵でももうちょっとでかいやつが付いてるぞ。」
「ああ、いや、そこ、すっごい田舎にあるんだがな?田舎すぎて誰も鍵なんざ掛けねえんだよ。つー訳で、それで十分なんだ。」
そんなもんなのか?
「そして、これをお前にやる。結婚したいんだろ?同棲くらいできらあな。」
「こ、困ります!」
それに対して異論を挙げたのは真子。そりゃ、年頃の女の子だしな。
「二人きりで過ごすなんて…その…自分で慰めることもできない…の…で…」
どうやら、思ってたのとは違う方向で年頃だったみたいだ。
「大丈夫だ。同棲してんだから亮太に鎮めてもらやいいさ。」
「そ、それもそうですね!」
しかも何か変な方向で話が纏まってる。親父としてそれでいいのか。
「でも真子。親は説得できるのか?」
女の子が男と同棲なんて、親からすれば不安しかない。実際、なんか期待されてるし。
「大丈夫です。さっきメールで言ったところ、快く了承して「プルルルルルル…プチ、ツー、ツー、ツー」…してもらいました」
鳴り響く電話を電源を消してやり過ごす真子。いや、本人がいいならいいんだけど。
「亮太。お前次第みたいだな。どうするんだ?」
親父がにやにやしながら聞いてくる。
「………俺は…」
この時、俺の脳内では誰かが俺に囁きかけていた。
「据え膳食わぬは男の恥」と。
「同棲を、する。」
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