帰宅
やっと真子ちゃん回です。長かった…この二話長かった…!
「ただいま」
「お帰りなさ~い!」
釈然としない終わり方をして若干沈んでいた俺を真子が元気な声で迎えてくれる。
家に誰か居るっていいな。
小さいときから両親の帰りが遅かったので、帰ったときは一人なのが普通だった。今では、迎えてくれるのは愛しい人。自然と顔も綻ぶ。
「ご飯にする?お風呂にする?それともあ・た・し?」
「なんだそれ」
「言ってみたかったんです!」
真子も俺を迎えることでテンションが上がっているようだ。
「じゃ、飯で。腹が減ってな…」
「そんなにキツかったんですか?」
「精神的にな…」
思い出したらまた凹んできた。うう…
「ま…まさか、いじめでしょうか?」
「いや、そんなことは無いんだが…はぁ…」
真子が心配そうな顔をしてくれる。それだけで大分精神力も回復した。
「大丈夫だよ。平気だ」
「ふにゅう…」
ギュッと真子を抱き締める。あんまり心配させるのもよくない。
「無理してる訳じゃないからな。それより、夕飯は何だ?手料理楽しみにしてるぞ?」
「はい!今日は引っ越し祝いに、蕎麦です!」
余ったら近所に持って行こうってことだろうか。
「♪~♪♪~」
真子が機嫌よく皿を並べる。手料理って食べる方も嬉しいけど、食べさせる方も嬉しいのだろうか?
テキパキと皿、ザルを用意し、蕎麦を乗せて海苔をかける。ざるそばか。いいな。好物の一つだ。
「亮太くんざるそば二番目に好きでしたよね~♪」
「ああ。よく知ってるな」
「寝言で喋ってるの聞きましたから」
聞かなかった事にしよう。特にそれはこっちに来てからなのかあっちにいた時なのかは。
というかどんな寝言なんだ、俺。
「さ、食べようか」
蕎麦につゆを付け、一口すする。
「…うん!美味い!」
「えへへ…」
照れて頬を掻いている。やべえ、かわいい。
「惜しむらくは『あーん』ができない事ですかね…」
確かにそれはそうだ。最初に食べる彼女の手料理といえば『あーん』だと相場が決まっている。
「してみればいいじゃないか。あーん」
口を大きく開ける。真子は若干躊躇ったのだが、蕎麦の箸で摘まんでいるところだけを俺の口に入れる。
ばく。ずるる。もぐもぐもぐ。真子があれで正解だったのかとこちらを見てくる。俺は親指を立ててニカっと笑うことで答えてやった。
俺がきちんと食べられて安心したのか、あるいは緊張していたのか、真子がホッと息をついた。そんな真子に、ちょっとした悪戯心が沸く。
箸をとって皿から一口分蕎麦を取る。
「あーん」
真子は何を言ってるのか分からなかったようで一瞬だけ固まり、その後、トマトになった。
「…どうした、口を開けてくれないと入れられないんだが」
「あ、あう、あうう…あ、あーん」
ぱく。ちゅるる。もくもくもく。
なんだろう。俺の食べ方より上品な気がする。なんか、濁点が取れた感じ。
「美味しいです…」
トマトのような顔を少し元に戻して、感想を言う。
「作ったのはお前だろ?」
「食べさせてくれたのは亮太くんです」
その後はあーんをし合って食べた。二人でラブラブしながら夕飯を食べる。これもたまにはいいかもしれない。
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