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侍の心得

行け、子供たちよ。未来を開け。

(武刀集、始祖の遺言より。)





「あ~、暇だな~。」

ユウが、後頭部に手を回して愚痴る。

「まあ、確かにな~。」

たくが、それに同意するように何度もうなずく。


「早く敵さん現れてくれないかな?」

一見、普通の高校生が、ゲームか何かの話をしてるかのようだが、次の言葉でそれが間違っていることを、早くも認識させてくれる。

「そんな事言ったらアカンって。確かまた、誰か死んだらしいよ。」

さらりとは言ってのけたものの、その表情からそれが比喩や冗談の類いではないことは分かる。

「そうですよ、たか先輩の言う通りです。」

この三人の中で一番年下の西仁も、それに同意するように、頷く。

彼らは、それきりなにも言わずに黙々と歩き続ける。


「なぁ、辛くないか。」


「何が?」



質問を返すが、等の相手はしばらく押し黙る。

自分たちの感覚で30秒位たった頃、やっと口を開く。




「ただ戦うだけってのは」



そう言うと、ユウは口をつぐむ。

しばらく沈黙が流れる。

そこには明るい空気など皆無で、周りの雑音などは、まるで気にならない程だった。


そんな空気を振り払うかのようにたくは何度も頷いて、こう締め括った。

「まあ、仕方ないよ、この際。」

「そうですよ。それに此方にいるのは、自分達の意思じゃないですか。」

鷲遊も、同意するようにそういった。


彼らは、常人に有らざる真の侍、それも日本国家に認められ、この世界に災いをもたらすもの全てを葬り去る“武刀集”と呼ばれる存在であった。


相手は、時により時代により様々。

とある毒ガス事件を起こしたある宗教法人の霊的特殊部隊を無力化し、結果として彼らを逮捕に至らしめる要因を作ったのが彼等である。


また、有るときは、ハルマゲドンと呼ばれるあの有名な1999年世紀末の予言すらも、その圧倒的武力により覆してしまった謎の超戦闘部隊でもあった。

故に、各国は霊的に何の備えもないと見ていた日本に対し裏側で積極的な活動を行えなかったのである。




しかし、その能力も日本政府が弱腰なため殆ど意味をなさないものになっている。

「なぁ、お前ら」

「なに?」

ユウが問いたくが答える


「敵さんだ。おいでなすった。」

たくも西仁もはっとする。

確かに2、3人の気配を感じる。

話しに気をとられて、気配を感じる事を怠っていた。


一方ユウはそれを怠らなかった。

それが今の二人とユウの違いだ。

早速、敵は回りを囲んだ。

結界が張ってあってあったらしく、他には誰もいない。

「用意が速いな。」

たくが呟く。

それは二人も思ったことである。

もしかしたら霊能部隊の応援があるのかもしれない。


理由は簡単だ、結界を張ればそれだけで精神力を消耗し、また集中力も削がれるからだ。

だが、彼らにはどちらにしろ関係ない。

何故なら彼らもまた、そういった保護を受けているからである。




三人は、精神を統一し、それぞれのお守りを紐を指に絡ませた状態のままつき出す。



そして、同時に同じ真言を唱える

「オン・バザラ・ダド・バン」

すると、光の柱に包まれて、三人の姿が変わっていく。


ユウは、元々少し高かった背がさらに高く延び深紅の甲冑に包まれて、手元にはいつの間にか刀、それも日本刀を持っていた。


たくも同じだか、甲冑は青そして手元には槍を持っている。

西仁に至っては、甲冑はオーソドックスに黒、手元には何故か鉄砲を持っていた。


相手の衣装は少し太った感じの奴が悪役の着るような黒装束、さらに丸々したのが似合わない金の甲冑を着て、最後のやつに至っては何故か覆面に彼らが通う学校の体操服であった。


全員顔が隠れていて良く容姿が判別できない。

ただし、放つ気迫は常人のそれとは比較にならない。




6人は早朝の太陽が照らすなかで激突した。




ユウの日本刀と、相手の短刀が激突する。数合の打ち合いの後、また鍔迫り合いとなる

時折懐に潜り込まれそうになるが、相手の剣技が未熟なため、余裕で防ぐ。


たくはでかい相手の間合いに潜り込めず苦戦していた。何故なら近づく度に相手の持つ馬鹿でかい大砲が連続で隙を与えず火を吹くからである。

おまけに一定の範囲に近づけば、漏れ無く全身に仕込まれた自動小銃と腹の大砲がついてくる。


西仁は、得たいの知れない相手に戸惑っていた。

相手の服は体操服にしか見えないのに、自分の撃った弾は、全部効いていないのだ。

それに、相手のパンチは見た目の細さによらず強力だ。一撃で地面すら割って見せた。



...あれを避けなければ、今ごろはただじゃすまなかっただろう。


「くっ、こいつ馬鹿力だけはある。」


一方、ユウも最初こそ余裕だったもののさすがに苦戦していた。

何故ならいざ仕留めようと、連続で出した剣技は、何故かひらりと避けられ、または受け止められ鍔迫り合いに持ち込まれたからである。

今また、連続で、左、右、上、下と目まぐるしく一秒につき100回は出されている刀の剣筋を、まるで読んでいるかの如くかわすのである。

そしてまた、懐に潜り込まれて鍔迫り合いとなる。

通常、鍔迫り合いとなれば、刀身の長い刀の方が有利である。だが、相手はその馬鹿力で押し返してきた。

故に剣技で通常勝るはずのユウが、珍しくジッチャン以外に押されていた。


「くそ、何でだ?」


通常、人間の筋力はどれだけ鍛えても限度がある。また、下手な場所に筋肉をつけたとしても、それでは全身の力を拳に、ひいては剣に伝えられず、スピードも落ちるため、結局無意味である。


しかし、目の前の刺客はどうみても全身の筋肉のバランスは、良い方ではなくまた、目に見えない内側の筋肉、西洋で言うインナーマッスルも鍛えているようには見えない。



とすると、これは単純に馬鹿力を気で強化したとしか思えない。

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― 新着の感想 ―
1話だけですが読ませていただきました。 10年以上前でこのクオリティなのですね。 今でも小説は書かれているのでしょうか? ちょっともったいない、そんな風に思ってしまいました。
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