IF設定-SS シアンとソル(2)-
森の一軒家にとある一家が住んでいました。
しかし、今日は一家は半分しかいません。
フィヨとソルが花畑に出かけているので、お家にはヨシュアンとシアンしかいないのです。
「お父さん」
つつっと忍び寄ってくるシアンにヨシュアンは困ったような顔をしました。
薪割りをしている途中なのでとても危ないからです。
「シアン。近寄ると危ないですよ?」
注意すると、言うことを聞いて距離を取りますが、しばらくするとまた近づいてきます。
これにはヨシュアンも仕方がない、という顔をしました。
「何か用事ですか?」
「なんでもありません」
言葉とは裏腹に、じっと眺めてくるシアン。
ヨシュアンも父親です。娘の望みは大体、見当がついていました。
それでも気づかないフリをするあたり、ド畜生ですね。
シアンの頭を撫でて、再び薪割りに戻ると今度は露骨に切り株に近づいてきました。
「危ないですよ」と注意してもシアンは知らん顔です。
シアンも父親が知らないフリをしていることに気づいているようですね。それでも理由を口にしないあたり、親に似たのでしょう。
とうとう根負けしたヨシュアンはシアンを、おいでおいで、と招きます。
その仕草を心待ちにしていたシアンは飛びかかりたい衝動を抑えて、ゆっくりと父親の腰に抱きつきました。
至福の表情を浮かべるシアン。
ヨシュアンは仕方ないような、嬉しそうな笑みをしていました。内心、嬉しいのでしょう。
「ソルがいないと甘えたになりますね、シアン」
「そんなことはありません、うきゅー」
娘が猫をかぶっていることも弟の苦境を嬉しそうにする様も知っていますが、そのように教育した手前、どう矯正したらいいかわからないヨシュアンでした。
ただ、何があっても、たくましく生きてくれるだろうことだけは予感よりも明確に感じていたのでした。
一方、花畑ではフィヨが花を摘んでいました。
食卓に飾るための花を一つ、摘んでは籠に入れ、一つ、摘んでは籠に入れを繰り返しています。
「母さん!」
少し遠くで採取していたソルがフィヨに走って近寄ってきます。
フィヨはその光景が微笑ましくて、つい笑みがこぼれました。
「見てよ! 父さんが言っていた薬草だよ!」
嬉しそうに語っているソルですが脳内では「俺って冒険者の才能がある!」と大騒ぎしていました。
そんなソルの密かな慢心にフィヨは気づいていましたが、微笑んで抱きしめるだけでした。
突然、抱きしめられたソルは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていましたが、花の香りのする母に抱きしめられるままになりました。
母の匂いに安堵したのでしょう。甘えたですね。
「ソルはいつも元気ね」
「……あー、うん」
ぼんやりとしながら答えるソルが我に返って母親から逃げ出すまで、もう少しかかりそうです。
※
「ほら、姉ちゃん。これってオレが見つけた薬草なんだ」
その日の晩ごはんの時にソルは薬草をシアンに見せていました。
とても自信満々な顔にシアンはちょっと困ったような顔で笑みを浮かべました。
「それ、毒草ですよ。ねぇ、お父さん」
「そうですね。危ない植物として教えたはずですが覚えていませんか?」
毒草と聞いて、ソルはしょんぼりと肩を落としました。
その様子を見て、満足気にしているシアン。
いつもの子供たちの様子に両親は顔を見合わせ、苦笑しました。
子供たちは二人にとって愛すべき子供たちです。
失敗も変な部分も、全て含めて見守り、育んでいくのでした。




