第3話
「くかぁ~…」
彼女は机の上で腕を組み、そのまま突っ伏して寝ていた。
「み、美香子ちゃん…」
その様子をとなりにいた真理は額に汗を浮かべて見つめていた。
すると教官が美香子の傍にやってきて、ごほんっ!!といかにもわざとらしい咳払いをした。
「はっ!!」
それを聞いた美香子は、がばっと飛び起きた。
「速水くん、この問題を解きたまえ」
起き抜けの美彼女に教官は問題を解くよう指示した。
「はえ?え~っと、x=2分の√3-i?」
「…ではこれは?」
教官はしかめっ面で次の問題を指さした。
「x=±√3-iですよね?で、その隣が…」
「もういい、座りたまえ」
苦虫を噛み潰したような顔で教官が言った。何でにらまれるの?と内心思う美香子だった。
美香子が座ると、真理が話しかけて来た。
「相変わらず頭良いよね」
「いやぁ、あれに比べたらどんなに楽な事か…」
「そう?あたしあっちの方が良いんだけどな」
「そこ!無駄話はするな!」
二人は教官に指摘された。
美香子たちがいる学校からほど近い場所に、何のために建てられたのか分らない、大きなモニュメントが立っている。学校ほどではないが、それなりに広い場所ではあるが、なぜかモニュメントの周辺が大きくえぐれている。
そのため、都市に住む者は誰も立ち寄らない。
政府もそこだけには何も設置せずそのままの状態にしてあるため、皆きっとここには何かとあるのだと考えているのだった。
実際、日が沈むと物音一つしない不気味な場所となる。
そんなモニュメントの上に、紺色を主とした中世の軍服ような服を着た人物が立っている。
その人物とは明日だった。
どうやってここまで登ったかは謎ではあるが、彼は今朝美香子を殴った剣を逆さにし、モニュメントに突き刺して柄の先端に両手を乗せ、静かに海を眺めている。
彼には美香子と出会う以前の記憶が無かった。
まだまだ平和な時が続きそうです。
教官が出した問題がどんな物だったのかは読者様にお任せいたします。