夢と映画と大事なあれこれ
辺りは暗闇と静寂に包まれる。
四角い光が視界を埋め、言葉と旋律に乗って物語の序章が連なる。
人々とカバの兄弟とカメラとパトランプが踊り、最も長い道への扉が開く。
物語はここからだ。
*
視界も頭もひどくぼんやりしている。白く霞がかっている中、目をこすると、だんだん辺りの景色がはっきりしてきた。
俺の目の前には、大きないすに座った、これまた大きなじいさんがいる。家一軒分、いや、それよりも大きいだろうか。
「おぉぬぅしぃの、いぃぃちばんたぁいせつなぁ、ものぉはぁ、なぁんじゃぁ?」
体全体を覆ってるくらい膨大な量の髭をもさもさと動かしながら、地響きのような声でじいさんは言う。
はっきりしない頭をどうにか働かせ、大切なものを思い浮かべた。
「えーっと、俺の部屋のブルージーンズ」
俺たちの間に一陣の風が吹いた。
「そぉうかぁ」
どこからかかつーんという乾いた音が聞こえた。確かこの音は木槌の音ではないか。
何となくそう思ったがそのときの記憶ははっきりしない。
*
気づけば俺は一人で小さなバス停の前に立っていた。目の前には田圃が広がり、水の張られた田の向こうには緑の山。空は青々として綺麗に晴れている。ピクニック日和だが、俺は別に山を歩きにきたわけではない。
そもそも俺はなぜここにいる?
記憶が曖昧で、直前のことが思い出せない。特に荷物も持っていないし、服はいつも着ているパーカー、Tシャツ、黒のジーパン。
一体ここはどこなのかとベンチが置かれた小さな小屋のような建物の中を見てみたが、ポスターのようなものは一切貼られておらず、バス停だということを示す看板の地名も聞いたことがないものだった。相当田舎のようで、バスの本数もかなり少ない。それに今何時なのかまったく分からなかった。
ともかく誰か人を捜した方がいい。
バス停の前は一本の道が横切っているが左右どちらを見ても似たような景色が広がっている。何となく利き手である左手方面へ進んでみることにした。
*
まず、学生らしい若い女の子とすれ違った。彼女は急いでいるのかショルダーバッグのひもを両手で握りしめ、早足で通り過ぎていった。俺の方をちらりとも見なかったが、さすがにあんなせっぱ詰まった様子の人に、ここはどこで何時なのか、聞くのははばかられたので、俺は先に進む。
辺りは相変わらず水田くらいしかない。後は川と雑草くらいだろうか。遠くの方にまばらに民家が建っているのが見える。最悪あの家を回ってみるか。
そう思っていたところに人影が現れた。それが二人目の人物だ。
その人は小さな犬をつれた小太りのおばさんだった。犬の散歩をしているらしく、急いでいる様子はない。
話しかけるとしたらこの人だ! と俺は早速声をかけた、のだが、おばはんはちらりとも俺をみない。完全無視である。
「おい、無視すんなよ!!」
普段出さないような大声を上げたが、犬を連れたそいつはつんとすました顔でさっさと歩き去ってしまった。 ここまで綺麗に無視されると、怒りを通り過ぎて悲しくなってくる。
次にはランニングをしているやせたじいさんが通りかかったが、じいさんはまっすぐ前を見据えたまま規則的な息づかいとともに去っていった。
皆足を止めるどころか、俺を見もしない。まるで俺の姿が誰にも見えていないみたいだが、まさかそんなはずはない。まさか俺が”ゆ”から始まって”い”で終わるようなものになっているはずがないではないか!
こうなれば民家に直接行って話を聞こう。
*
遠くに見えていた民家につく頃には薄々俺が今一体どういう状態にあるのか気づき、それを受け入れ始めつつあった。
今まですれ違った人は全部で五人。うち声をかけたのは二人。二人とも完全なる無視を決め込み、ほかの三人も俺を見もしない。
信じたくないし、到底信じられないが、俺の姿は見えていないのではないか。または、ここらに住んでいる人は非常に警戒心が強く、見知らぬ人は見てもいけない、とか。
まさかそんなことはないだろう、と思ったが、俺の姿が見えないなんてことよりも、後の考えの方がいい。
しかし、俺は人の目に見えなくなっている、ということ以上のショックを今、受けた。
俺は今ある民家の前にいる。かなり躊躇した後、インターホンのボタンを押す決心がつき、いざ押した、というとき、俺の指はボタンをすり抜けた。
「う、そ、だろ?」
俺の頭の中には俺が漢字二文字のあれになってしまったという考えしか出てこなかった。さっきもいったがひらがなで書くと四文字のあれだ。
しかし、認めたくない、認められるはずがない。
いつ俺がそんな状態に陥ってしまうようなことがあった? 俺は何をしたというんだ?
一人全く知らない他人宅の玄関先で悶絶していると突然声をかけられた。
「あの、何してんの?」
振り返った先にいたのは背の小さな女の子だった。
*
唯一俺に話しかけてくれた子の家の庭先、縁側に腰掛けて、俺は話をしていた。その小さいのは見た目からすると小学4年生くらいだろうか。その割にはしっかりしているが、やはりどこか子供っぽいところがある。
「なるほど、同級生の女の子とルームシェアですか」
小さいのは目を細め、どこかにやにやしながら言った。
そうだ、俺は、一人暮らしはイヤだから一緒に暮らしましょ、と誘ってきた奴と一緒に暮らしている。
世には友達以上恋人未満という言葉があるが、俺と彼女の関係は知り合い以上友達未満と言ったところか。お互い知ってるだけなんて言い方だけでは、同棲してるわけだから足りないだろうが、友達、というわけでもないと俺は思っている。
向こうはどうか知らないし、時折、休日暇だから、と映画を見に行くこともあったが、大抵は別行動で、夜も各自の部屋で好きに過ごしていた。
「ところで、俺は一体どうなってるんだ?」
この小さいのはどこまでこういったことについて知っているんだろう? 俺みたいなのを見ても動じないところからすると、こういうことの対応には慣れているような気がする。
「よく分からないね。でも、何度かこんなことあったよ。お兄さん何かひっかかってることとか、何か間違えたこととかない?」
ひっかかる? 間違えた?
「あのさ、あんまりはっきり言うのはあれだけど、お兄さんは、今お兄さんが思っている通りの状況だよ。もしかしたらうちが手伝えるかもしれないけど、これからどうなっていくのかは兄さん次第」
小さいのは妙に落ち着いた表情で言う。見た目小学生のくせにどうしてそんなにどっかり構えていられるんだ?
俺はどちらかというとごつい方だし、話しかけにくい見た目をしていると自負している。それをこいつは平然と会話しているんだ。俺たち初対面だよな?
そもそも、俺は今ゆから始まる漢字ニ文字のあれ状態だと思っているが、こいつの言うことを信じれば、俺の思っていることは事実、と言うことになる。
しかし、本来動悸が激しくなったり汗をかくはずが俺は案外平然としていた。それもそのはず俺には今お肉がないのだから心臓そのものがなく、汗をかく必要もないのだ。自分としてはいまだ複雑な心境。
「お兄さんここにくる前のことなんか覚えてないの?」
「ここにくる前?」
バス停に着く前の記憶。そこだけがすっぱりと消えている。
「あのさ、うちは見えちゃう人でね。姉さんもうっすら見えちゃう人なんだよ」
俺が記憶を探っていると、独りでに小さいのは話し始めた。
「姉さんはぼんやりとしか見えないから、そういうの見たらすぐ逃げちゃうんだ。すっごいせっぱ詰まった顔して、何か握れる物があったらぎゅっと握ってさ」
そこで俺はぴんときた。一番最初にすれ違った女の子こそ、今小さいのが言った特徴とぴったり合う行動をしていた。
「だから今までうちが対応してきた。こういうときのキーワードは記憶と大切な物」
小さいのは人差し指と中指を立てた。
「大切なもの?」
「何か心当たりがあるの?」
俺はうなずいた。そうだ、俺は大切な物は何か聞かれた記憶がある。
「それで、なんて答えたの?」
少し間を空けて、俺は答えた。
「ブルージーンズ。俺の部屋の」
小さいのは俺の答えを聞くなり顔をしかめた。きゅっと鼻にしわがより、そこがピクピクと動いている。こんな表情はマンガくらいでしか見たことがない。
「何で?」
絞り出すような小さいのの声に、「話せば長くなるがなぁ」と語りだした俺の声は思ったより嬉しそうだった。
今は額に入れて飾っているが、それはただのジーンズじゃない。年代物で何十万とするのだ。
これは、俺がまだ小さかった頃、事故で亡くなった両親の形見でもある。大事な思い出の品なんだ。父さんが大切にしていた、と、世話になった叔父さんが言っていた。
「ジーンズって額に入れて飾るもんなの?」
「知らねぇよ。でも父さんがそうしてたんだ。だから俺もそうして、ずっと大切にとってる」
「だからそれが一番大切なもの? ほんとに?」
「そうだ。俺と両親との思い出はこれだけだ」
「本当にそれだけ? 本当にそれが一番?」
「しつけーなぁ、そうだって!」
さっきからこの小さいのは何を気にしているのだろう。
もしかして、俺が元の状態に戻る方法について考えているのか? いや、もうこうなっちまったもんはどうにもならないか。
だとすればこいつは俺を解放する方法でも考えているのかもしれない。
「じゃぁ、何か印象に残ってること話してよ。ほら、一緒に暮らしてる彼女のこととか」
「彼女じゃねぇよ」
そうは言ったものの、最近の思い出と言えばそいつと一緒にいるときのものばかりだ。小さいのも話せ話せとうるさいから話してやることにする。
彼女から連想するものといえば、テントウ虫だ。あいつはなぜかテントウ虫がものすごく好きだった。何かとテントウ虫のグッズを買い集め、至る所にテントウ虫を飾り、至る物をテントウ虫柄にした。
食器類も、俺だって使うというのにいつの間にかテントウ虫柄になっていた。俺が愛用していた無地の黒いマグカップもいつのまにかテントウ虫のシールが貼られていたっけ。
俺のブルージーンズへのこだわりと同じようにあいつにはもテントウ虫に対する想い、というのがあったのかもしれない。
さすがに自室にはテントウ虫の波も進入してこないし、カップも安い物だったから、好きにさせとくことにしたが。
「ほかには?」
「まだ話せってのか!」
仕方なく、もう少し連想してみる。
そういえば彼女は台所が好きだった。
「台所?」
「あぁ。まぁ、キッチンって言った方が似合うデザインだったが」
調理台と向き合うようにカウンターがついている。よく彼女が料理しているのを見ながら食事をした。
俺はキッチンって言うよりも台所って言う方が好きだ。何でもかんでも外国風の呼び方をするのは好きじゃない。
「その人料理うまかったの?」
「いや、奴は台所にいるのが好きってだけで、大して料理がうまかった訳じゃない」
下手ではなかった。俺よりかはうまかったんじゃないかと思う。
複雑な料理はできなかったが、食事に困ることはお互いなかった。
普段は各自別々で料理することも多かったが、鍋物は一緒に食べた。カレーなんかもそうだ。
印象に残っているものでいえば、カレーシチューだな。
「カレーシチュー?」
「そうだ。具のカボチャが完全に溶けちまった黄色いシチューもインパクトがあったが、カレーシチューは特に印象に残ってる」
その見た目は、普通のカレーの茶色が薄くなった感じだ。カレーとクリームシチューが混ぜてある、マイルドな仕上がり、だな。
「俺は辛い物は苦手な方だからよかったけど、普通の人からしたら邪道なんじゃないか?」
俺の質問に小さいのから返事は返ってこなかった。小さいのは何やらうつむいている。
「どうした?」
「分かったよ。つれていってあげる」
「は? 何言ってる?」
突然訳の分からないことを小さいのは言うと、まじめな顔で立ち上がった。
「兄さんがここにきたのには理由がある。おそらく見るべきもんがあるんだ。何を見るべきか、何となく兄さんの話で分かった」
*
俺は小さいのに連れられ山を歩いた。本当にハイキングに来たような気分だ。
しかし、気分はそれほど明るくない。忘れかけていた昔のことを思い出したのだ。
両親と俺は小さかった頃こんな田舎に住んでいた。ちびだった時の俺はよくこうやってハイキングをしたんだ。
「ここだよ」
小さいのは木々の影で立ち止まった。今まで木が影を作っていたが、急に道が開け、目の前に広々とした草原が広がっている。
広場に出てみると、ここが高台になっているのが分かった。下の方に広々とした田圃が広がっているのが見える。
そして、目線の下の草原には至る所にテントウ虫がいるのが見えた。
そこで俺の脳裏にある光景が思い浮かぶ。
「そうだ。俺は母さんとよくこういうところで遊んだ」
テントウ虫が沢山いる草原。母さんと、たまに父さんも一緒にのんびりとした昼を過ごした。
あのときは幸せだった。
俺は一匹のテントウ虫を捕まえると、人差し指を立てた。虫はちょこまかと動きながら指の天辺まで上り詰め、やがて羽を広げて飛んでいく。
不意にあいつの顔が脳裏に浮かんだ。空へと飛んでいくテントウ虫を見上げ、台所で楽しそうに料理をしている彼女を思い浮かべた。
あいつのカレーシチューが食べたい。
*
俺は再び白い霞の中にいた。
目の前には見覚えのある巨大なじいさんの姿がある。
「おぉぬぅしぃのぉ、いぃちばぁんたぁいせつぅなぁ、ものぉはぁ、なぁんじゃあぁ?」
相変わらず地響きのような声でじいさんは言った。
さっきまでの記憶ははっきり覚えている。そうだ、俺が最も大切にすべきはブルージーンズじゃない。
「テントウ虫の沢山いる思い出だ」
ブルージーンズの思い出、その繋がりより大事なもの。
再びかつーんという木槌の音が響いた。
*
俺はまだ解放されていなかった。俺は一面の草原に立っていた。
俺のすぐ脇にはあいつと暮らしていた所にあった台所が設置されている。草原の中にぽつんと立つ俺、そして、台所。かなり異様な光景だ。
ふと見ると台所のカウンターの上には二人分のカレーシチューが置いてあった。普通のカレーの割には色の薄いそれ。
これはカレーを食べろと言うことか? そうは思ったもののスプーンがない。手で食えってことなのか? それに二つある、ということはもしかしてあいつもここにいる?
いや、そんなことを考えるよりも、周りの状況を把握するのが先だ。まるでこの空間は寝苦しい夜の夢のようだった。恐怖も不安もないのだが漠然と嫌な感じがして苦しい。
下を見ると、沢山のテントウ虫が草の上を動いていた。そいつらを踏まないように振り返ると、俺の背後、数メートル離れた所に、俺の思い出のブルージーンズがふわふわと浮かんでいるのが見える。
目を疑ったが、じっと見てもそれを支えているものは見つからない。紛れもなくそれは浮いているのだ。あわてて目を逸らし、後ろを振り返ると、そこにはおびただしい数のテントウ虫が集まってできたかたまりが出現していた。そのかたまりは人の形をし、もぞもぞと動く。
いつの間にか俺はジーンズとテントウ虫に挟まれていた。わけが分からなかった。
何がどうなって俺はこんな状況にある? ここで俺にどうしろと言うのか?
戸惑い、どうすればいいのか分からないが、左右を見ると、徐々にジーンズとテントウ虫が距離を狭めてきているのに気づいた。俺には逃げるという選択肢はないように思える。
とっさに、俺は両手にカレーシチューを構えた。皿の底に手を添え、さながら気分はウェイターかインド人もどき。どこのギャグ漫画だ、という風景だ。こんな状況じゃなかったらこの光景を見た途端俺はおそらく3分は笑える。
が、そんな考え事をするような余裕を保っていられるのはそれまでだった。どちらも非常に怖い存在だったのだ。
ジリジリと近づいてくるそれらは妙な圧迫感を出し、このまま手をこまねいていると、押しつぶされそうな感覚があった。
しかし、どちらも大切な思い出だ。壊したくないものでもあるんだ。なのにどうしてこんなに苦しいんだろう?
もしかして、俺が出した答えは完全ではないのか? 俺の答えはもっといい形があるのか?
本当に大切なものは何だ。キーワードは記憶と思い出。大事なものはなくしてから気づく。
このどこか寂しい気持ちは何だ? テントウ虫にも、ジーンズにも埋めることができないこれは何だ。
この感情の先にあるものこそ俺が最も大切なもの。
そうだ、答えはあれしかないんだ。
あいつなんだ。
認めたくない気がするが、時には素直になることも大事よ、という誰かの言葉を思い出した。これは母さんがよく父さんに言っていた言葉だ。
「こんな最後は望んじゃいない!」
腰を低く。
「最後の晩餐はカレーシチューだ!」
構え。
「一番大切な物を置いていったりはしない!」
俺は芸人がパイを投げるかのごとく、ジーンズに向かってカレーシチューを発射した。
べちゃりというどこか可哀想で、悲しげな音を立てて、ジーンズは崩れる。
そして、続けて投げたカレーシチューはテントウ虫をまき散らした。
沢山の赤と黒の粒粒がお天道さまに向かって飛んでいった。
*
はっと目覚めると、まだ辺りは暗いままだった。
横を見るとあいつが眠いのか少し塗れた目をこすっているのが見えた。
前を向くとスクリーンにはスタッフの名前が流れている。
「ほんと、今回の映画は悲しい話だった。本当に大切なものって何なんだ?」
俺は映画の中身がほとんど分からなかった。ぼそぼそという彼女の声はどこか震えている。
泣いていた、それも、感動ではなく悲しみにより。
「大切なものは、記憶の中にある」
あいつが四角い光を反射して光る目で俺を見た。
「今の俺の場合は一番近くの記憶にいるものが一番大切なものだ」
*
「最後主人公の男の子はね、彼女の涙を見た後、最後の手料理を食べて消えちまったんだ。帰ってこなかった」
あいつは映画館を出た後そう語った。会場内はがらがらで、その映画をたまたま見たらしい俺の友人は救いのない話だと言っていたが、大切なことに気づかされる、という意見も多い作品らしい。
家に帰りついた後、あいつはいつものように台所に立ちながら、不意に言った。
「君さ、あの時寝てたけど、いびきぜんぜんかかなかったな。普段はあまり大きくないけどいびきかいてるんだぜ? でもあの時はまるで息してないみたいだった」
夕食の後、部屋に帰ると、暗い部屋にぽつんと飾ってあるジーンズから妙な圧迫感を感じた。後日、一回くらい穿こうと思い、そのブルージーンズを身につけてみると、サイズはぴったりだった。しかし、その日の夕飯に出たカレーシチューをこぼしてしまい、しつこい染みは取れるものではなかった。だが、俺は思っていた以上にそのジーンズに執着はなかったのだ。
最終的にカレーくさいジーンズはあいつに1万円で買ってもらった。
今その思い出のジーンズはあいつがリメイクして相当短くなり、ズボンの裾にはテントウ虫の刺繍が施してある。これが全てのなるべき姿か、と、俺は今日もカレーシチューをすするのだ。
映画は終わり、物語は続いていく。