パート2
「うえ~気持ちわる~」
星と星との間を行き来するのに使われる「船」と呼ばれる乗り物だが達也はどうも好きになれないな…と思っていた。ゆさゆさ上下に揺れるし、トイレもないのでかなり不便だった。
「がまんしろ。もうすぐ…う」
「ペンパーのおっさんもだめなのかよ~…うげ」
見るとペンパーも口を押さえていた。
「ん…もうすぐ着くぞ。武器忘れんなよ」
見ると窓の外に星があった。外見は大半が雲に覆われてよくわからなかったが、時折雲の隙間から海が見えた。名を「ブルー・プラネット」と言うらしい。いままで達也がいた星はジャングルに覆われていた「グリーン・プラネット」と言う少し原始的な星だったが、今回のブルー・プラネットはどんな星になるのか少し楽しみだった。
プシューと言いながら「船」が海に着陸した。グリーン・プラネットでは陸から離陸していたが、海に着陸したのでより「船」らしい感じが伝わってきた。
「う~やっとついたのか~もう二度と乗りたくね~」
「これからも何回…いや何十回だな、乗ることになるぞ」
「ええ~!!もう無理~」
船を降りるとぐらっ、と地面がゆれた。正確には地面ではなく、海の上にいかだのような形で海に浮いていた。なのでしっかりとした足場ではなく、常に波に揺れてゆらゆらゆれていた。
「とりあえずはここのモンスターの把握と宿取りだな」
「そんな堅いこと言わずに討伐…とはいかなくても採取クエストぐらいでよくね?」
「ここのモンスターは前の星と比べて凶暴なモンスターが現れるそうだ。だから前の星よりも慎重に仮をする」
そういってペンパーは「ギルド」と呼ばれるクエストの管理をしている「ギルドハウス」に向かった。
ギルドハウスは星にひとつずつあり、ギルドハウスからはクエストが受けられない。そのため通常であれば末端であるギルドカウンターからクエストを受ける。
「なあ、なんでギルドハウスなんだよ?」
「ん?ギルドハウスならギルドカウンターから集められたこの星全体の情報が得られるからだ」
「ああ~」
達也は納得した。確かにギルドハウスではクエストは受けられないが、代わりに情報を共有できる。
狩り人は武具と同じくらいに情報が重要だ。その情報は当然人が多いほうが多く集まる。その情報の中枢であるギルドハウスには人の多い街よりも莫大な情報が得られる。
10分後一人ギルドハウスに入っていったペンパーが出てきた。
「どうだった?」
「ここの星は最近やたらと凶暴なモンスターが増えているそうだ。この街にも時々進入してきては狩り人が撃退しているらしい」
「え?マジ!?ここも安全じゃないの?」
「ああ、だが生活するためにも抜け出すためにもここの星をもう少し滞在する。そうだな…100時間はここだな」
ここには時間が無いのでプレイ時間で計算する。100時間と言えばだいたい1日4~5時間プレイして3週間ぐらいだ。
そんなことを計算しているうちに、いつの間にかギルドカウンターの前まできていた。
「まずはこいつだな」
そういってペンパーは達也に向かって一枚の紙を差し出した。
「ん?…特産海草10束の納品?なんだ特産海草って」
「特産海草とはここ、ブルー・プラネットで唯一採れる海草だ」
「海草ってことはまさか海に潜るんじゃ…」
「なにを言っている、当たり前だそんなこと」
ええ~、達也は心のなかでがっかりしていた。実はまだペンパーにいっていないのだが、達也はかなりのカナズチで現実世界ではプールをまともに10mも泳げなかった。
「な、なあ…」
「ん?なんだ」
「実はオレ…泳げないんだ」
達也は思い切ってペンパーに言ってみた。そうしたらペンパーは
「ん?ハハハハハ」
「な、なんだよ笑うことないだろ!」
「あのなぁそろそろ理解しろよ。ここはゲームの世界だぞ。ずべてが平等だ。そんな中で現実で泳げないからってゲームの世界でも泳げないわけがないだろ」
「あ、あはははは…」
そうだった。ここはゲームの世界だ。ここの世界がだんだん現実の世界に思えてきた。
「装備を整えておけ、何が出るかわからん。ひょっとしたらいきなり大型が出てくる可能性もあるからな」
「ん、わかった」
そういうととったばかりの宿に戻って、装備やアイテムが入った箱の中から必要なものを取り出した。
装備はまだ一セットしかできてなかったので変えることはできない。
「よし、おわったぞペンパーおっさん」
「オレも終わった。よしいくぞ」
そうしてまだ見ぬ新しいフィールドへと出発した。