表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/77

亡国のお姫様

 そもそもの所、ミカヌレの両親は誰だったのか?



 隠密になってからいろいろ調査を重ねた結果、漸くと謎が解けた。

 どうやら当時、自身の水色の髪と瞳は、この国では珍しいものであったから。



 任務の時は髪を染めたり、目の色を変える目薬をしていたので、特段目立つことはなかった彼女。

 隠密達はいろんな場所で拾われた孤児が多かったから、いろんな色の髪や瞳で溢れていた。



 それこそ金銀の髪や桃色の髪など、多くの者に好まれる色の者も複数存在していた。



 一見、派手ではない色味のミカヌレだが、瞳は太陽の光で濃紺に変化する。そのコントラストは鮮やかで、誰もが引き込まれるような輝きがあった。





 それは一族の先祖が、水の精霊と結ばれた影響であった。


 その先祖エヴァンは、とてつもなく美しくて筋肉隆々の彫刻のような肉体を持ち、かつバリトンボイスで優しい人格者。


 ただ頭の回転は普通だけど。



「すごい、好み。こんな人間いるのね♡♡♡」


 そんな精霊に望まれた彼は、重い程の愛を囁かれた。



「もし私と結婚したら、種族全体に祝福をもたらしてあげるわ。その代わり、ずっと私だけを見て頂戴ね」



 妖精は全身が青い体で、美しい(かんばせ)をしていた。キラキラと光輝き、手のひらくらいの体で彼の周囲を微笑みながら飛び回る。



「綺麗だな。でも……そんなに小さいのだもの、結婚なんて無理だよ」


 大きさを理由に断れば、妖精は笑う。



「大丈夫よ。大きさなんて自由に変えられるから。えぇい♪」


 そんな掛け声と共に、エヴァンと同じくらいの大きさになってしまう。


「どう? これなら良いかしら?」



「うん、うん、すごく綺麗だ。こんなに美しい人、初めて見たよ。結婚しようよ。そう言えば、名前も聞いてないね。教えてくれる?」


「私はメディアルよ。よろしくね、旦那様♪」



 そんな軽いノリで、微笑み合い抱き合う二人。でも彼は精霊の特性を知らなかった。彼らは気まぐれなのだ。




 水の最高精霊、ウンディーネのいる海に赴き、結婚を認めて欲しいと挨拶する二人。

 眩い光に包まれながら姿を現したウンディーネは、少しだけ困惑していた。


「結婚は、止めないけれど……。メディアルが人間の妻なんて出来ないと思うわよ。落ち着きがないもの。恋人くらいにしておけば?」



「大丈夫よ、ウンディーネ様。私ってば、彼を愛しているもの。絶対平気よ」


「こう言ってはいるけど、エヴァンはどうする? 私は普通の人間の方が良いと思うわよ。以前にもこんなことが「駄目よ、ウンディーネ様、しーです」うっ、目が怖いわよ、メディアル。もう……好きになさい」


「ありがとうございます、メディアル様。大好きよ♡」

「ありがとうございます。彼女(メディアル)を幸せにします」



「もう、仕方ないわね。頑張りなさい」 




 微笑みながら、ふぅと息を漏らすウンディーネは去っていく。その後に結婚した二人。


 実はエヴァンは海に浮かぶ島、ガシェーラル王国の王太子だった。



 その後愛し合う二人は、三人の王子と王女を授かる。精霊の能力なのか、嵐の時に祈れば一時的に風は収まって船は無事に岸に着き、雨が乏しい時も「そろそろ、畑に雨が欲しいな」と思うと、雨が降るのだ。


 島である為その秘密は漏れず、少しずつ島の暮らしも豊かになっていった頃、メディアルはエヴァンの元から去って行った。



「ごめんね、エヴァン。私やっぱり、母親でいるよりも恋がしたいの。サヨナラ!」


「うそ、だろ? 待ってくれ、メディアル~!!!」



 メディアルは小さい姿に戻り、空を飛んで去って行った。



 泣き崩れるエヴァンは、息子のライナン、ワンタ、娘のクロッカスに慰められた。



「お父さん、元気だして」

「もう王様になったんだから、シャキッとしなよ」


「私達がいるわ。だから泣かないで」

「お前達~、ありがとうな。うわ~ん」



 そんな島民1万人の、和やかな島で暢気に暮らしていた彼ら。



 それが…………200年後。

 周囲が渦潮で守られた島は、周辺国の造船技術の向上により、進軍され軍に囲まれた。


 その際に拷問され命乞いをする島民から、王族が不思議な力を持つことを聞いた軍はその力を欲した。


「そんなことが出来るなら、是非協力して貰わんとな。(王族が)数人いるなら解剖しても良いだろう」



 不穏な発言と蔑んだ嘲笑に、戦うことに決めた国民達。戦力の差は歴然だが、多くの者が諦めずに相手に向かって行った。


 ただ幼い王女だけは逃がしたいと思った王と王妃は、王女の乳母と若い騎士に王女の亡命を託した。


「手持ちの現金を全て渡そう。だから王女だけは、エクレアーヌだけは、頼む。情けない王で済まない」


「残念ながら、私達は敵わないわ。ギリギリまで戦って、捕まることがあれば私達は命を絶ちます。だから、最期のお願いを聞いて頂戴ね」



 

 乳母と若い騎士は 「必ずやお守りします」 と誓い、流れる涙を拭かぬまま王女を抱え、隙を見て小さな船で渡航したのだ。



 流れ着いた場所がコロネが住む国だった。



 だが丁度その頃は、その島以外にも幾つかの小国が大国に攻められ、難民が多い時期だった。


 乳母と若い騎士は、ならず者と化した他国の難民に襲われ、金品を奪われて切り付けられた。


 乳母は二人を庇って致命傷で倒れ、若い騎士も酷い傷を負いながら、孤児院の前に王女を置き力が尽きた。


 倒れているところを、ワッサンモフ公爵家の隠密ミルキー(レイアーの先輩)に拾われ、命を繋げた。酷い怪我でリハビリを要する状態だったが、ミルキーの妻フェオレに介護を受け回復。


 若い騎士は病で亡くした息子と似ていたらしく、そんな縁が繋げた出会いだった。

 孤児院では怪我人を治療をする余裕も意欲もなく、そのままなら恐らく命を落とした筈だ。


 命の恩人に彼は感謝し、ミルキーとフェオレも息子のように育て、隠密のこともいつしか話していた。



 その後剣術の腕を買われ、外部採用枠で彼も隠密となり恩を返すことになる。

 合間、合間でエクレアーヌを探したが、リハビリを受けている間にミズーレン伯爵に引き取られ、彼女の消息を辿れなかった。


 孤児院には多くの賄賂が渡されていた為、彼女の縁者である彼にも、居場所を教えなかった。

 それでなくとも、引き取ったミズーレン伯爵に逆らうことは出来なかっただろう。




 その時の若い騎士が、冒険者ギルド長のモロコシだ。

 ミカヌレは、王女であったエクレアーヌである。


 ミカヌレは活動時、変装して姿を偽っていた為、モロコシはずっと気付けなかった。



 けれどスライストへの任務の際、これで最期の仕事だと思い元の姿で挑んだことで、モロコシは漸く気付くことが出来たのだ。


 その後は彼女を見守りながら、偶然の接触を図り今に至る。ただコロネと出会ったのは、本当の偶然だった。


 モロコシはコロネの売却を願ったアクセサリーを、実は売らずに保管している。いつでも返せるがタイミングがないだけで。

(腹括って売った筈の物を、今さら返すのもどうかな?)と、思ってしまい。



 ミカヌレの出奔やスライストの落馬のこともすぐ耳に入り、その後何気なく手助けも行っていた。チェロスト子爵領の援助も、その範疇である。



 その後モロコシから声を掛け、ミカヌレは祖国のことを知ったのだった。



 あの後の島は……。

 殆どの島民は戦死し、生き残った者は捕虜にされ大国に連れて行かれた。けれど大きな国だったので周辺国の法律に合わせ、人道的に数年の労役の後解放されたそうだ。


 

 そして王族を失った島は、悲しむように常に嵐が続き、温暖であることも加わりジャングルと化したと言う。大きく広がった渦潮で近付くことも出来ず、モロコシも調査は難航している。



 いつか妖精の色を持つミカヌレなら、上陸が出来るかもしれない。




 そんな秘密をミカヌレは、みんなに打ち明けたのだった。


 コロネ、スライスト、ワッサンモフ公爵家の隠密達は、邪魔をせぬようにと泣き声を殺しながら話を聞き終えた。



「お母様、お辛かったですね、っ、ヒクッ」

「よく、頑張ったな、さすが愛する、うっ、僕の妻だ、ぅくっ」


(ミカヌレ様…………、うっ、よくぞ生き延びました、ぐっ……)

(ズビッ、そう……珍しい髪と瞳は、亡国の……うっ)

(親は死んだのか、そうか…………ぐじっ、あぐっ)




「いや~、私。実は王女様だったみたい。テヘッ」


 少し茶化して微笑むものの、みんなの涙は止まらないのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ