ブルーベルからの手紙
タバサの指導のもと、ブルーベルは生まれて初めての謝罪文を書き上げた。
「拝啓、コロネ様。
私からの手紙を受けとるのは、正直嫌だと思います。
捨てられている可能性もありますが、けれど読んで頂けていると思いながら、書かせて貰いますね。
私がお茶会で言った言葉は最低です。
今も懸命に捜索している貴女方に、なんて愛のない酷い暴言でしょう。
いくら知性のない私でも、後から振り返り震えました。私の両親は善良とは呼べないですが、それでもいなくなったと思えば、とても悲しいですもの。
それなのに、ミディア様を庇う貴女にその言葉をぶつけてしまいました。
思い通りにならない腹いせに。
本当にどうしようもないです。
我ながら今考えれば、幼子でもそこまで酷くないだろうと思いました。
許されると思っていないですが、ごめんなさい。
何度でも謝ります。
この手紙が届いていなくても、また書きます。
今は体を鍛えているので、ビンタをして貰うのは少し待っていて下さい。
心から反省しています。
敬具」
コロネは手紙を読み終わり、座っているソファーの背に深くもたれた。
「ねえ、アンナ。ブルーベルはどうしたのかしら? 彼女が謝罪するなんて、何だか不思議だわ」
そう思うのは、当然のことだった。
ここに突然訪れた時にも、碌に挨拶もせず、会えば文句か不快な顔しかされていなかったのだから。
極めつけはあのお茶会。
ミディアを守ろうとした時、両親がもう戻らないと断言された。
閉じ込めていた不安な気持ちをこじ開けられ、無意識に気絶してしまったのは、コロネからすれば恥ずべき失態だった。
使用人達は勿論、心配しかしていないが。
彼女が目覚めたのは、翌日の昼近く。いつ目覚めても良いように、食事は常に温められていた。
特にアンナは、片時も離れず看病をした。
◇◇◇
そんなことの後なので、今一つ腑に落ちなかった。
それでも手紙を手に取ったのは、タバサからの言葉掛けがあったからだ。
「すごく嫌だと思うけど、読んで貰えないかしら? 今後は私が指導していくつもりだから」と。
指導…ね。
ブルーベルは、タバサにも何かしたのかしら?
それにビンタって? 頬を叩くことよね?
謝罪に??? この国でそんな習慣はないわよね?
「えーとですね。タバサの祖母の生家が辺境の方なので、そう言うこともあるみたいな、ないみたいな感じです」
「まあ。この国のことなのに知らなかったわ。勉強不足ね、私ったら」
あぁ、不味いな。
コロネお嬢様は、超記憶持ちだった。
調べだしたら、嘘がバレるな。
でも前世記憶とか、ちょっと情報過多だし。
今知らせるのも、どうかと思うのよ。
アンナは強くて優しい、けれど結構適当で嘘が下手である。あんまり後先のことを考えないで話すので、内緒にされている情報もある。
以前チェロスト子爵家のサイダーと取り引きがあった時も、彼女だけ蚊帳の外だった。だからその際に、「チェロスト子爵家で、クリムを引き取りに来ないなぁ」と文句を言っていたのである。
嘘が下手なので、万が一にクリムに聞かれた時に途中経過を漏らしそうだった為、レイアー達からいろいろ内緒にされていた。まあそんな心配は、そもそもなかったのだけど。
今はサイダー達を仲間認定したので、彼女が裏切ることはないのだ。
◇◇◇
「まあビンタは、ちょっと過激な禊かもしれないので、状況を見てから対処しましょう。それくらいの気持ちで反省しているようですし」
「そうね。過ちを認められるのは、とてもすごいことだものね。うん、待ってるわ」
コロネは既に、ブルーベルを許すことに決めていた。両親のことは心配だけど、死体が出た訳ではない為、独自で調査を続けるつもりだった。希望を捨ててはいないのだ。
そしてその後日。
覚悟を決めたレイアー達から、スライストとミカヌレの所在が明かされる。
それはある意味、セサミとの決別だった。




