ブルーベル、教育的指導を受ける。その1
教育的指導とは、個人の成長や能力向上、問題解決のために、専門家や目上の人から助言・訓練・サポートを受けること。本来の目的は相手の主体的な成長を促すことにある。
タバサの我慢(怒り)は、天元突破していた。
今まで止めていたメロアンとレイアーだったが、もう止められないと諦めた。
尤も、その止める立場にあるメロアンとレイアー自身も、隠してはいたが殺気に満ちていたからだ。
「最悪……◯◯の事故に……見せかけて……」
「それより……ならず者の……◯◯の犯行の……方が…………」
公爵邸の使用人部屋(夫婦用で広い)で、夜な夜な不穏な作戦も立てていたくらい、鬱憤が溜まっていた。
我慢強い彼らがコレなので、短気でキレやすいタバサにしたらもった方なのだ。
ブルーベルが意識を取り戻した時、彼女は、背もたれの付いた木の椅子に座らせられていた。腹部と椅子は麻紐で固定され、動けない状態で。
「ちょっと! 何よコレ。メイド風情がこんなことをしてただで済むと思ってるの? ねえ、答えなさいよ、このブスッ!」
ダンクワーズ伯爵家は全員が美しいと評判の貴族家であり、間違ってもタバサはブスではない。
タバサの母ルマンサーは可愛い容姿ではあったが『ん~、ギリ及第点ね!』と、顔面偏差値重視の義父母に、初顔合わせでこう言われていた。
仕事の特殊性(ワッサンモフ公爵家に仕える隠密職と言う面)もあるが、何故か代々美形だった貴族の血を途切れさせたくないと言う、しょうもない理由でもあった。
まあそれで、ルマンサーが釣れたのも事実である為、役に立つ面も多分にあるのだが。女の美しさは、社交界で武器の一つにもなるしね。
なのでまだ、子供であるブルーベルなんかより、タバサの方が100倍美しかった。スタイルだってボッキュボンだもの。たぶんブルーベルが成長しても、目や髪の色味が味方になっても、造形はタバサの勝ちだろう。
タバサは美しくて面倒見の良い姉御肌だが、その言動とワイルドさから、恋人はいない。女子には大人気だし、素を隠していれば確かにモテる。だが男に素を晒せば離れていくか友人になり、恋愛には育たないのである。
だからこそ、彼女は知っている。
顔が良ければ全てうまくいくのは、ただの幻想であると。
真に愛する者ができるのは、奇跡に等しい運命だと。
そんな達観しているタバサに『ブス』は禁句である。
「黙れ、不細工。お前の目は、ちゃんと見えているのか? 医者が必要なのか?」と。
「ひっ、何で……(何で、こんな態度が取れるのよ。私はこの家の孫なのよ。何れお父様がこの家を継げば、私は公爵令嬢になるのに。怖いわお母様。助けてお父様!)」
タバサのドスの利いた声に、すっかり縮み上がっているブルーベルだが、どうしても「もう許してとか、ごめんなさい」と言えない彼女。これも(悪い方の)教育の賜物なのだろうか?
噛みつく相手は選ぶべきだ。ブルーベルでは、美・毒舌共に勝てない相手なのだが、力量・経験共に不足しており、それすらも分かっていない。
身分だって伯爵令嬢のタバサに対し、ブルーベルは子爵令嬢である。セサミに放置されている彼女には、勝てる部分がなかった。




