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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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コロネの記憶 (養蜂編)

 コロネは祖父セサミに、『お前の考えるようにしてご覧』と伝えられてから半年。クリム一家は放置されたまま、セサミからの連絡はなかった。


 一応、姪に当たる彼女(コロネ)は、会ったこともなかった叔父の扱いを計りかねていた。(クリム)子爵入り(婿入り)し身分が隔たれたことなど、スライストは気にしていなかった。だが暫くして現実が分かったクリムの方が、僻んで距離を取っていたのだ。



 クリムが会おうと思わなければ、社交場での下位貴族と上位貴族の接点は乏しい為、現在に至った訳である。夜会一つ取っても、派閥や貴族格差により参加できる場が違うからだ。


 特にクリムの婚家はセサミと対立関係にある、クロダイン公爵派閥の家だった。




◇◇◇

 “自分が次期公爵だ” と勢いで乗り込んできたクリム一家は、公爵家の贅沢(身の回りの世話や豪華な食事の提供)にも馴れ、厄介なことに嫁と娘達も公爵家の籍に入れると思い込み、装飾品や美食に手を伸ばしていく。


 今まではスライストに充てられている月額予算で、彼らの散財を一時的に賄っていたが、驚く勢いでボーダーライン(境界線)を越えていく。



 コロネはそれを「対応しなかった、私が悪いのです!」と、自分の責任として考え令嬢の予算で赤字分を補填し、資産を増やすことを決意した。


 その一つが養蜂である。

 孤児院のある場所は最適だった。


 人気の全くないただの山奥ならば、蜂蜜を食べたい熊などの猛獣が、すぐに巣箱を破壊してしまうだろう。その以前に、普段人の通らない獣道は足場も悪く、当然の如く猛獣に会う頻度も多い筈だ。

 蜂の方も見てもそうだ。蜜蜂以外の危険種が飛び回っており、驚異となる人間は標的になるだろう。



 その点田舎ではあるが、この孤児院からは農村も近く、定期的に草刈りを行い子供が遊び回る場所には、賢い獣は近づかない(皆無ではないが)。

 適度に歩き安く、昔から暮らしているので明らかに危険な蜂や毒草・毒花は駆除済みである。


 今回それを点検し、入念な作業も行っている。

 まさに理想の場所だったのだ。



 でもこれは、コロネだけの力で成し遂げた訳ではなかった。話はコロネが3歳の時まで遡る。




◇◇◇

 超記憶を持つ彼女は、遠い昔にこの孤児院の立つ場所が狙われているのを聞いていた。



「報告でございます、セサミ様。公爵家のフォカッチャーが孤児院の立つ場所を買収し、養蜂なる事業を行う計画があるそうです」


「養蜂? ほう、それは珍しいな」


「はい。その理由の一つが経営者のチェルシー夫人がそこに植えた花、チェルシー・シャインです。うまく根付き群生したその花の蜜は世界一美味しく、チェルシーハニーと呼ばれているそうです」


「それはすごいな。滅多に見かけないし、高額な蜂蜜だ。フォカッチャーにしては目の付け所が良い」


「それがやつがそこを調べていたのは、チェルシー夫人が目的だったみたいです。娘さんを亡くしてシスターになられた方ですが、今でもとても美しく妾にする予定とかで」


「はぁ、まあそんなもんだろな。夫人は何と言っている?」


「はい。勿論断っています。離縁したチェルシー夫人の、元夫の伯爵も彼女を愛しているそうです。別れたのも娘のことがあり、泣く泣くだったそうで。このことを聞けばあいつ(フォカッチャー)を殺しかねません」


「そうか。じゃあ、俺から圧力をかけとくか? 『子供達を守るチェルシー夫人は素晴らしい。まるで女神のようだ』とかね。俺の派閥と外交でこちらにいる大使達と、役に立たないけど国王達にも。我が公爵家からも支援金を継続で出すことにすれば、あいつも手を出せないだろ? あと夫人が拐われないように、護衛も付けといてくれ」


「承知致しました。では早速手配に移ります」

「頼んだぞ」 



 そんなやり取りをかくれんぼ中に、執務室のソファー下で聞いていたコロネだ。さすがの侍女アンナも、まだ当主として公爵邸にいたセサミの執務室には容易に近付けない為、絶好のポイントなのだ。


 幼いながらも、何となく分かっていたコロネ。

 何かちょっと悪いな。やはり遺伝……。




 そんな感じで養蜂の計画が、ずっと頭に残っていたコロネだ。


 そしてその時の護衛(隠密の一人)は、チェルシー専属となっていた。一人では大変なので、自己資金から護衛仲間を作り交代で見守ることに。

 セサミからは「適当に休みながらで良いよ」との指示で、それほど真剣でないことが窺えた。

 フォカッチャーの邪魔ができて、もう気が済んだから。



 数年後にセサミは、「もう良いでしょ」と護衛の任を彼から解いた。でも彼はチェルシーだけでなく子供達のことも心配で離れられず、セサミに辞表を出して冒険者になったのだ。


 その稼ぎで孤児院周囲の巡回や保護を依頼した。護衛仲間達は後に、彼の友となり孤児院で神父とシスターをすることになる。件のアイス、ラメン、チャーシだ。


 元チェルシー専属護衛である彼は、冒険者ギルドのギルド長モロコシだった。だからいろいろと孤児院関係のことは詳しかったのだ。

 彼らの活躍で孤児院は少しずつ良くはなったが、如何せん資金はいつも不足状態。

 良い評判を聞き付けて、他の孤児院から逃げ出して来る者も、生活に困って子供を預けに来る者も後を立たないから。

 チェルシーには、縋る者を追い出すことはできない。

 アイス、ラメン、チャーシも山で狩りをして生計を支えていたが限度がある。だがミカヌレ夫人が関わり、少し道が開けるようになった。




 だがその娘コロネは『養蜂』なる事業計画を話し出す為、最初は怪しさ満載だったモロコシ。


「こんな子供が事業だと……。子供をだしにする、あいつ(セサミ)に操られているんじゃないか?」

 セサミのことだから、きっと孫でも手駒にするだろう。


 けれど詳細を知り、男泣きすることに。

あいつ(セサミ)の孫に生まれたなんて、本当に不憫だな。ついでに両親もダメダメだ!」と言って。


 セサミの行動理念はいつも自分本意だ。チェルシーのことも、フォカッチャーへのただの気晴らし程度の行為が、たまたま善意に転んだだけで。

 それを知る護衛達だもの、尚更コロネに同情することになる。



 ちなみにモロコシのパーマ頭とあご髭は、一応変装のつもりだった。髪をキチンと整えて、あご髭を剃ればダンディー親父の出来上がりなのだ。



 若い時のモテ時代の口癖は、「俺に惚れるなよ、火傷しちゃうからな」である。

 当時は「素敵、格好良い~♡」の乙女の反応も、今では無意識で口に出ると、冗談は止めてくれと親父達に爆笑されている。


 時の流れは残酷なものだ。








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