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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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遊園地のこと

「これは前世の知識なのですが。蓄電池があると、かなりの動力が賄えるかと。きっと遊園地にはたくさんのエネルギーが必要になると考え、お伝えしておこうと思いまして」



 蓄電池とは電気を化学エネルギーの形に変換して充電し、逆に化学反応で電気を取り出す(放電)ことで、繰り返し使える「二次電池」のこと。

 正極(プラス)負極(マイナス)、電解液で構成され、充電時は電子が負極に、放電時は電子が外部回路を通って正極に移動する仕組みで動く。


 電解液とは、塩や酸などを水や有機溶媒に溶かし、電気を通す(イオン伝導性を持つ)液体のこと。主に電池の内部で、プラスとマイナスの電極の間をイオンが移動する媒体として働き、電気エネルギーを蓄えたり流したりする役割を持っている。

 着磁(ちゃくじ)とは、磁気を持たない磁石材料に、外部から強力な磁界を与えることで磁気(磁力)を付与し、永久磁石にする加工プロセスのこと。コイルに大電流を流して磁界を発生させ、材料内部の磁区を整列させることで磁石としての性能を発揮る。




「ウンディーネ様が雷雲を集め、強い上昇気流を引き起こした時、雲の上部はプラスに下部がマイナスに帯電して分かれます。その現象中に鉄に電気を帯びさせて磁石を作り、蓄電池の材料を作るのです。


 本当はタービンの理論(蒸気、ガス、水、風などの流体が持つエネルギーを、羽根車(ローター)を回転させることで機械的な動力に変換する)を説明できれば、更に大きく力を使えると思うのですが、私には勉強不足で分からず、すいません」



「謝らないで、タバサ。すごい発想を聞いて、ワクワクするわ」とコロネが言うと、「本当にそうだ。自然のエネルギーが備蓄できるなんて、信じられんよ」とガンテツも目を輝かせた。



タバサはそう言うが、覚えているだけですごい。それに未知の知識は、ずいぶんと進んでいると思う。



「でも………………」と、タバサが付け加える。

「電池も電力も素晴らしいですが、前にいた世界では戦争に応用もされていました。危険でもある理論なのです」



「確かにそうだね。じゃあこの理論と実用、応用もも、ここだけの秘密にしよう。それで良いね」

 暫し思考した後、スライストが答えた。



「その方がよろしいかと。妖精がいる世界なら、本当は科学等必要がないかもしれないですが……」



「いいえ、話してくれてありがとう。もしタバサが言わなくても、転生者が今後も現れるなら、その理論を使う者も出てくる筈だわ。

 もっと危険なことに使う者もね。理論を把握しておけば、壊すことや停止するすることも出来るでしょ?」


「そうですね。さすがコロネ様です」



 タバサは余計なことだと言うが、そうは思わない。驚異があるなら、それを事前に理解しておくに越したことはないのだから。



 幸いなことにワッサンモフ公爵家には、資金力と権力と実行力(隠密達の力)がある。

 危険な目があれば、摘んじゃうのもありじゃないかと思う。




 そんな訳で遊園地計画に着手するべくコロネとスライスト、ガンテツとタバサは、鍛治屋で相談をしていたのだった。

 依頼されている剣を作る為に、今は炉の温度を落とせないので、外出できないガンテツに合わせた。


「炉で熱する」→「取り出して叩く」→「また熱する」の繰り返し中だ。


 今は丁度、熱する時間なのだ。



 ちなみにタバサが丁寧な口調なのは、説明を真剣に聞いて貰いたいからだった。今日はいつもと、気合いの入り方が違う。




 この世界は魔石鉱山や、魔石鉱山地帯の影響を受けた動植物の体から魔石が取れる。


 タバサの記憶にある電化製品的なものが、こちらでは魔石のエネルギーで動いていることになる。


 魔石という重要な資源の代わりに、設計図を書き変えて電池を使うことになれば、安く道具が使えることになるだろう。


 けれど戦争に利用されれば、大きな被害が考えられる。魔石がなくなれば止まる、ということがなくなるからだ。



「電池を作るのを成功しても、使うのはガシェーラル国だけにしましょう。未来はどうなるか分からないけれど、私達の生きている間は、外に出さないようにしたいです。良いですよね、お父様(スライスト)


「ああ、勿論だ。今後、危険思想のある転生者の驚異を防ぐ為にも、研究は続けていこう。他の国で同じ理論で動くものを見つけた時、危険なら破壊できるように、隠密達にも警戒して動いて貰う。私はコロネの意見に、全面的に賛成だよ」


「俺もその方が良いと思う。世界的にそうなるならしょうがないが、わざわざ出す必要はない。あえて平和を乱すことはない」


 ガンテツが言えば、タバサも同意する。


「私もそれが良いと思います。聞いて頂き、ありがとうございました」


「教えてくれてありがとうね。でもまあ、遊園地にはこの理論を使って見るわよ。私の我が儘で赤字になったら、お父様に申し訳ないから」


「大丈夫だと言いたいが、大きい乗り物を動かすなら、魔石をどのくらい使うか分からないからな。そこは要相談だ」


「現実的ですね。さすが公爵家の当主です」


「褒められているか貶されているか分からないが、まあ事実だからな」


「まずは小さい乗り物から作りましょう。タバサは設計をお願いね」


「はい、任せて下さい。漫画大好きで、漫画家志望でしたから」


「マンガカ? よく分からないけど、お願いね」


「じゃあ、私はお茶を淹れるわ。ガンテツも剣を叩く時間前にサンドイッチを食べて頂戴」


「おお、ありがたい。助かるぞ」


「ほうほう。馬の形の動く乗り物か? 馴染み深いな」


「高い場所に上がって、景色を見るのも素敵ね。空を飛んでいるみたい」





 実際の話をイラストに興されると、ただの想像で話していたより具体的になって現実味が増す。



「これが現実になるのね。楽しみだわ」



 コロネが喜ぶと、みんなも笑顔になる。

 下地を練り上げ、今度はガシェーラル国で実地に入るのだ。






 エネルギーのことをワッサンモフ公爵家だけで決めるのは、傲慢なことかもしれない。

 けれど公にしないことは、何となく正解のように感じていた。






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