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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ある鍛治師の自立

 ガシェーラル国の家の建築には、鍛治の親方であるガンテツの指示を得た、ケルアン(16歳)、シャイン(14歳)、マイケル(15歳)が出向いていた。


 カザンサススノー国で側妃達の救出に助力したガンテツは、その後もコロネにいろいろと手を貸してくれており、今回も快く手助けしてくれたのだ。


 コロネの住むユゼフィランには、世界樹のそびえ立つエルフの国ニズラッシェリル、風の妖精が多いサクラアイランドから、空間転移の際に多くの妖精が楽しんで移動していた。


 循環することでいろんな場所に祝福がかかり、土地が豊かに変化していく。勿論鍛治や工芸技術等に才ある者には、さらに付与された力が加わり、素晴らしい作品が出来ていくのだった。




 ケルアン達がガンテツに弟子入りして5年が経ち、彼らのレベルはかなり上がっていた。

 その為彼らはコロネに頼まれ、今までにも空間転移でいろんな場所に出向き、建築や造形物の見学と共に協力して作り上げることもしていた。


 何度も足を運ぶことで、彼らが好む造形物の傾向も分かってきたようだ。



 ケルアンは装飾品を。

 シャインは大きな建物を。

 マイケルは生活用品や剣を。



 そんな時にガシェーラル国で暫く手伝いを行い、多くの家を完成させていったのだ。



 コロネは隠れ里のようなその場所(ガシェーラル国)に、タバサから聞いた遊園地を作ろうとしていた。


 ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車、ゴーカート等の遊具や、招待した楽団や劇団、さらに出店のような屋台を作って、お祭り騒ぎをする場所を。


 それも金持ちや平民関係なく、心の優しい人を招待し、夢の時間を楽しんで貰う計画だった。そして辛い環境にある子供なら、そのままここに住んで貰う予定まで立てていた。


 誘うのは夜。

 起きた時は夢だと思うことだろう。





◇◇◇

 基本その島はジャングルを残し、そこと離れた場所に畑を耕して、海からは魚を得る場所にしよとしていた。


 大きな島ではないから、代官のクルミナ以外の子供が出来た家族は、島から引っ越して貰うことになる。何処に行くか選べば、リオニオンが移動してくれることになっている。





 ここにいる隠密達の敵、フォカッチャーはと言うと………………。


 クロダイン公爵家の商売は、以前から比べ4割程しか機能していない。隠密がいないことで情報収集や情報操作、裏取り引きや脅迫や恐喝的なことも出来なくなったからだ。


 隠密と同じようなことを、身元のしっかりしている騎士達に要求するのは無理だからである。


 危機管理が働く側近がいれば、隠密の解体ではなく縮小に留めただろう。だが側近達も彼らを下に見ていたことで、すぐにどうにでもなると考えたのだ。


 辛い修行を行い、生き延びた彼らを舐めすぎていた。確かに他人を囮にして逃げたり、暴力で脅すような使えない者もいたかもしれないが、優秀な人材もたくさんいたのだ。


 ただ優秀な者は先に逃げていたので、本当に縮小してもうまくいったかは定かではないが、ミズーレン伯爵家が作り上げてきた、情報収集機能(情報屋との繋がり)だけは分断されなかっただろう。



 そう言う訳で、今の衰退したクロダイン公爵家では隠密達の行方はほぼ追えないし、数年経って少し顔が変われば「勘違いじゃないですか? この地の前はずっと◯◯に住んでましたよ!」と言えば逃げることも可能だろう。


 ニズラッシェリル(全面協力)とサクラアイランド(チャルメ家のエアピゾーラ侯爵関連の貴族)も協力的なので、いくらでも言い逃れは可能である。

 なんと言っても、銀行のエアピゾーラは世界的な信用があるので、住居証明されれば信じるしかない。




 子供達には、外の世界を見せてあげた方が良いと思う、ミカヌレやスライスト達。

 クルミナに子が生まれても、学園は寮に入れて外の世界を学ぶことを進めようと思っている。

 クルミナが嫌じゃなければ、ワッサンモフ公爵家から学園へ通えば良いとも思っている。

 そうすればリオニオンに頼んで、外に出ずに一瞬で行き来が出来るからだ。



「まあまだクルミナは14歳だから、こんな話は早いけどな。島に籠っていて欲しい訳じゃないんだ。優秀だから管理を任せたいだけで」


「それは何れ、ちゃんと言ってあげましょうね。ただ今は肉親が怖いみたいだから、ゆっくりさせてあげても良いのかもよ。ガシェーラル国なら誰も追ってこれないし、もし追って来ても隠密達が返り討ちにしてくれるからってね」


「そうだな。今は安心して暮らせれば良いのかな?」


「そうね。これからのことは、ゆっくり考えれば良いわ」


「さすがはミカヌレ。深い洞察力だ、素晴らしい!」


「やあねえ、褒めすぎよ。でもありがとう、スライスト。そう言うとこ、好きだわ」


「好きって……嬉しいな」


「もう、そんなに赤くなられると困るわ。私まで照れちゃう」




 いつもながらあま~い夫婦に、公爵家の士気も高まるのだった。


「平和ね」


「これくらいが良いのよ。今までが酷かったから」


「そうですね。こんな時間の方がマシです」


「マシって、貴女」


「だって……彼氏と別れたてで辛いのです。彼の浮気で!」


「あらっ。じゃあ、親戚の子を紹介してあげるわ」


「本当ですか、やったー♪」


「本当よ。じゃあ、そろそろ仕事にもどりましょう」


「はい!」



 使用人達の表情も明るいのだった。





◇◇◇

 カザンサススノー国にルーツがある、ミズーレン伯爵家。


 その血はクルミナの血にも流れていた。

 

 火の妖精と関わりが深い(恐らく混血がいる)赤い瞳は、火の妖精に好かれやすい。

 



 妖精達はリオニオンとコロネに付いて、チョロチョロしているので、最近はユゼフィランとガシェーラル国を往復している。


 そんな時にユゼフィランから来た火の妖精が、「この子の魔力、とっても強くて新鮮よ。あ、ほら。マイケルと系統が似てるのね。良いんじゃない、二人とも性格も合いそうだし。あんた達の子供なら、究極の鍛治師が誕生するかもね。何故って? だって私が離れられなくなりそうだからよ。あんた達の魔力、心地良い~♡♡♡」と、騒いでいた。



「あ、あの、妖精がスミマセン。気を悪くしないでね」


「いや、全然問題ないぞ。あ、その、問題ありません」


「何で敬語なの?」


「だってあんた代官なんだろ? 偉い人だし貴族なんだろ?」


「代官と言っても、雇われ代官だし。それにもう家を捨てたから貴族じゃないわ。だから普通に話して下さい」


「そ、そうか。じゃあ、遠慮しねえぞ、クルミナ」


「その方が良いわ。私もね、みんなと早く近付けるように、令嬢言葉を止めようと努力しているの。言葉が変だったら教えてね」


「良いぞ。何でも聞いてくれ」




 そこにモルニが、笑いながら口を挟んできた。


「クルミナは頑張り屋さんね。でも鍛治師の言葉は荒っぽいから、女の子が真似しちゃおかしいわよ」


「そうなの? 知らなかったわ。お母さん、教えてくれてありがとう」


「なんのなんのよ。でもご縁は大切だから、たくさんお話をしてみたら良いわ。新しい世界も広がるでしょ?」


「ええ、そうね。マイケル、よろしくね」


「ああ、こちらこそだ」




 握手を交わす二人をケルアンとシャインが、まるで兄のように優しくみつめていた(シャインは年下である)。


「あいつもとうとう、女子と普通に話せるくらいに回復したか」


「良い出会いでしたね。妖精が繋ぐ縁なら、騙されることもないでしょう。安心です」



 マイケルは以前、清楚系の女子と付き合ったが、二股をかけられて捨てられていた。


「だって、話しても面白くないんだもん。でも貢いでくれてありがとうね。バイバイ」


「そんな……酷いよ。純真な感じだったのに、女なんてもう信じない。うわ~ん」




 そう、マイケルは話下手ではない。

 優秀なので、いろんな知識を持っている。


 付き合った女子が理解出来ない話に、着いていけなかっただけで。


 だからクルミナとの会話が楽しくて、次々と言葉が紡がれ飽きることがない。

 クルミナからの返しもまた新鮮で、どんどん惹かれていくのを彼自身が気付いていた。




 そんなことがあり、マイケルはガシェーラル国で店を開くことになった。

 農業、漁業、狩猟の何れも、鍛治師が来るのを大歓迎している。


 それにコロネ主導の遊園地計画の責任者も必要だったので、みんなに喜ばれた。



「これからもよろしくね、マイケル。貴方が来てくれて心強いわ」


「俺こそ、よろしく頼むよ。いろいろ教えてくれよな」


「まあまあ、ずいぶんと仲良しですね。でも私も時々お邪魔させてね」



 モルニが言うと、クルミナが照れている。

「もう、お母さん。邪魔なんかじゃないわよ」


「そうですよ。モルニさんも、よろしくお願いしますね」


「はいはい、分かりました。じゃあ暫くは、私達の家で暮らしたらどう? 店はこれから建てるんでしょ?」


「はい、よろしくお願いします。それで相談なのですが、代官邸の近くに店を作って良いですか?」


「それは……お母さん、どうしよう?」


「好きなようにしたら? 何れ結婚したら、職場は近い方が良いでしょうからね」


「ちょっと、お母さん!」

「モルニさん、それは!」



「あら、違った? 勘違いかぁ、ごめんね。フフフッ。まあ、二人ともゆでダコみたいよ。本当に仲が良いんだから!」


 

「…………(恥ずかしいわ)」

「…………(違うなんて言えないぜ。そうなりたい!)」




 初々しい二人を、みんなが温かく見守るのだった。







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