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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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新しいウンディーネ

「ウンディーネ様、ごめんなさい。せっかく忠告してくれたのに。私ってば、あの時は結婚が続くと思ってたのよ。

 でも、でも、同じことの繰り返しに退屈しちゃったの。少しだけ外の暮らしを見てから、もう一度エヴァンの所に帰ろうと思ってたら、島が嵐に包まれて入れないし。

 調べてみると人間は、百年も生きられないって聞いて気付いたの。エヴァンと子供達はもう死んじゃったんだって。それに子孫になる人間達も戦争で負けてチリジリになってたことも。


 もし私がずっとこの島にいれば、彼らを守ることが出来たわ。エヴァンの血を引いた子達を不幸になんてしなかったのに………………。

 辛いよ~、ウンディーネ様。私、人間のこと知らなかった。妖精や獣人、エルフみたいにもっと強いと思ってた。もっと長く生きると思ってた。百年も生きないのなら、ずっと一緒にいたのに。子供達を育てたのに。ふえ~ん……。


 もう誰もいないの。エヴァンも子供達にも会えないの。直接の子孫も、生き残ったのはエクレアーヌ(ミカヌレ)とコロネだけで。他の島民はモロコシ以外見つからなくて。

 私……ウンディーネ様に誓ったのに。エヴァンを守ると言ったのに……うえ~ん、ウンディーネ様ぁ」



 ずっと大人しかったメディアルは、ウンディーネと再会して泣きじゃくった。


 本当はずっと、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。


 

 まさかエヴァン達と今生の別れになるなんて、彼女は思ってもいなかったのだ。

 ふらふらと旅に出て、何度か恋愛して……。でも最後にはエヴァンの元に帰ってくるつもりだった。



 ウンディーネが、結婚したいと訪れた二人(メディアルとエヴァン)に声をかけようとしたのは、それを心配したからだ。

 人間は自分達と比べたら寿命が短いから、本気で好きにならない方がお互いの為ではないかと。


 でもあの時の熱に浮かれる二人に、忠告してもきっと無駄だった筈。



 今、島内部の嵐は止んだが、島の周囲はまだ結界のように嵐は吹き荒れたままで、渦潮も激しいままだ。


 遠くで暴風音が響くけれど、他には人気(ひとけ)のないジャングルの中心で大精霊ウンディーネが言葉を発した。


「悩んで苦しんで……考え続けていたのね。逃げないで頑張ったわ、メディアル。

 私達が人間に干渉しないのは、それも原因なのよ。ひ弱ですぐいなくなる人間と関わるのは寂しいし、私達の大きな力は人間の手に余るわ。簡単に自然を超越する力は、人間達の驚異にもなるの。妖精には人間の善悪がよく分からず、お菓子につられて力を貸すことで、争いを生んでしまうことも過去にはあったそうなの。


 でもメディアルはもう分かったでしょ? 人間と関わることは難しさもあるわ。けれど貴女はずっといろいろ考えて、悩んでいる。他の妖精よりずっと深くね。


 …………私はもう2000年生きた。数百年、ここで力を使い、少し疲れたわ。次代の水の妖精に大精霊の称号を譲って、隠居しようと思っているの。次の後継には精霊力が強くて、周囲のことを考えられる子に譲りたいと思っているのよ。


 ……メディアル、お願いね」




 静かに優しく、囁くように語りかけるウンディーネに、メディアルは更に涙を流す。



「ウンディーネ様も死んじゃうの? 私を置いていくの? 嫌だ、嫌だよぉ」


「ちょっとメディアル、簡単に殺さないで頂戴。私は一精霊に戻って、美味しい物を食べて呑気に過ごすのよ。このままみんなの面倒をみる気力が少なくだっただけ。

 ……だから心配はいらないわ。今度は貴女が苦労なさい。任せたわよ」



 静かにメディアルの手を握り、祝福を込めるウンディーネと頷くメディアル。

 どうやらメディアルに拒否権はないようだ。



「分かったわ、ウンディーネ様。私が次の水の大精霊ウンディーネになる。そしてウンディーネ様は、サフランに戻るのね」


「そうよ、メディアル。いいえ、もうウンディーネ様ね。水の妖精の未来をよろしく」



 メディアルは泣き顔から、無理に笑顔を作ってサフランに答えた。


「これまでお疲れ様でした。サフラン」




 ウンディーネだったサフランは小さな妖精に戻り、メディアルは大人の姿の大精霊に変化した。



 コロネ達はその様子を静かに見守り、口調ごと変化したメディアルに驚いていた。大精霊の継承は代々の知識や経験も含まれているようだ。



 無邪気に戻ったサフランと、荘厳な雰囲気を纏うウンディーネになったメディアル。


 でもその後に、ウンディーネは元気良くみんなに叫んだ。


「ちゃんと出来る知識を受け継いだけど、今はまだ私の性格が強いみたい。取りあえず、ジャングルの一部を一度枯らして、休憩場所作ろうか?」



 みんなはズコッとこけて、サフランは笑っていた。


「よしっ。じゃあ、休憩する場所でも作るかの」


「私で良ければ手伝います」

「僕も、力仕事は得意です」

「僕は力仕事はちょっと。でもノーム様のサポートは、お任せ下さい!」



 ノームとリオニオン、スライスト、ラディッシュは、木の伐採を行い簡易型のテーブルと椅子を作りだした。


 コロネとミカヌレ、モモはジャングルの果物を収穫にしに向かう。


「じゃあ、ジャングルの探索でもしようか?」

「ふふっ、お母様ってば。良いわね、賛成! 美味しい果物を収穫して、みんなで食べましょう」 

「私も手伝います。ワクワクしますね」



 シルフとシルフィードは、サフランとウンディーネと共に今後のことを相談していた。でも殆ど世間話みたいで、楽しそうだ。



「メディアルが次のウンディーネか? 俺も年をとったもんだ」


「私もそう思うわ。メディアルがねえ。大丈夫かしら?」


「まあ、大丈夫じゃない? 私でさえウンディーネをしていたのだもの」


「貴女とメディアルは違うわ。別物よ」

「本当だよ。何でメディアルを指名したの?」


「水の長老精霊、アガベの予言なのよ。メディアルが適任なんだって。私も案外良いと思うわよ」


「もう、もう。みんな酷いわ。私だって頑張りますから」


「だってさ。水の精霊って、威厳が必要じゃない? メディアルはそれが足りないと言うか……」


「私だって、受け継いだ知識でそれっぽくは出来るわよ。今はしないだけで」


「しないのかよ! 大丈夫か、付け焼き刃で」


「まあ、任せておいてよ。頑張っちゃうわよ、せっかくここに戻ってくれたんだから……」



 時々切なそうにしながらも、元気いっぱいで粋の良い新ウンディーネと、応援している妖精達は微笑んでいた。


 





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