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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ブルーベルはコロネの影武者

 コロネが商売や妖精達と行動している間、ブルーベルは社交界に出て、令嬢達と交流を重ねていた。


 コロネの仕草、表情、話し方を完全に真似て、彼女に成り代わって。




 ピスタテルの件で令嬢としての価値を落とした彼女(ブルーベル)。だが彼女は、それ以前から貴族令嬢として生きることを望んではいなかった。

 あの時の忌まわしい出来事は王太子ストビーテにより後に箝口令が敷かれたが、既に出回っている真実と憶測が絡むことで醜聞となり、なかなか消えるものではなかった。



 噂のこととは別にしても、彼女は地下の拷問部屋で自らを振り返った時から、コロネに仕えることを心に誓っていた。



 それを知るタバサは、ブルーベルに役目を与えた。社交界から距離を置くコロネの代わりに、彼女に変装して人脈を培うことだ。


 ワッサンモフ公爵家は力のある家門だが、隙はないに越したことはない。そしてミントジュレと婚約関係にある彼女は、王族が絡むイベントには欠席出来ないのだ。




 そこでタバサは考えを巡らせた。


 コロネの影武者ならば、周囲の守りも強い為、彼女(ブルーベル)を危険に晒すことは少ないだろう。

 間違ってもハニートラップのようなことは、彼女が望んでも金輪際させたくない。


 それに今は(表面的には)貴族社会から身を退いているブルーベルだが、社交界に関わることで場数を踏み、将来的に復帰できる下地を付けてあげられるのではないか。


 何とも頼りない希望。だが貴族の作法を身に付けてさえいれば、この国以外で良縁を結べる可能性は高い。



 本来、隠密や侍女仕事もさせたくはないが、両親と離れた彼女を奮い立たせるのは、自分が役立てていると言う確かな事実である。故に止められはしない。

 

 それに彼女は、自分自身に価値がないと思っている節がある。



「そんなに自分を追い込まなくて良いのに。あんたは努力を重ねているよ。みんなもそう思っているさ」


 

 タバサが何度言っても、ブルーベルは納得しない。


「ありがとうございます、お姉様。そんなに慰めてくれなくても良いのよ。ちゃんと分かっていますから」

 


 全然分かってないわ、ブルーベル。

 でもまあ、気質が真面目だから反省できたのもあるんだろうけど。





◇◇◇

 コロネはブルーベルに感謝していた。

 特にミントジュレの優柔不断さが苦手なコロネは、彼と関わるのが苦痛だったからだ。


 それに彼女は好きなように動いていないと、退屈すぎて死にそうになる。今は妖精達をいろんな場所に案内したり食べ歩きして友好を築き、他にも自分の商売も忙しかったりしてバランスが取れている状態だ。



 ブルーベルからは令嬢達との交流やミントジュレとの関わりを詳細に報告されている。超記憶持ちのコロネは、彼女達の写真を見ながら話を聞くことで、それを知識として正確に集積していく。


 

 時々コロネ自らお茶会に参加しても、誰にも違和感なく受け入れられており、ブルーベルの擬態は完璧なようだ。



「誰にもバレなかったね。さすがはブルーベル」


「褒めて頂きありがとうございます。これからも精進いたします」



 眼鏡とメイクで変身し、コロネ付きの侍女として傍にいたブルーベルは深く頭を下げた。




「ねえ、ブルーベル。私達は従姉妹なんだから、そんなに畏まることないのよ」


「お気遣いありがとうございます。ですが私は今、ただのメイド、時に侍女で御座いますので」


「そうなの。少し寂しいな」

「コロネ様……。勿体ないお言葉で御座います」




 一瞬目を見張らせ、すぐに表情を戻すブルーベルは、少しだけ気持ちが揺らいだ。


(普通の従姉妹だったなら、笑い合えた日もあったかも知れない。でも……もう遅すぎる過去だわ)



 戻れないからこそ実力を付けることで、いつか側近になれれば良いと願う。全てが崩れ去った傷跡は、まだまだ彼女を縛り付けているようだ。



 





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