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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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コロネと風の妖精

 コロネ、ラディッシュ、チャルメの3人も、コロネの活躍を知る領民から大歓迎を受けていた。


 ビニールハウスから少し離れた場所には、ガーデンデスクとチェアーが用意されており、そこへと案内される。

 暖かな風が吹いて、草芽吹き緑葉が揺れる木の下で。


 コロネが顔を知っている領地の者達が、集まって待っていてくれたようだ。



「いらっしゃいませ、コロネ様。コロネ様のお陰で、定期的に十分な賃金が貰えるのです。以前と比べれば、信じられないです」


「領主様が変わったことは残念ですが、サイダー様とジンジャー様が幸せそうなので、安心しているんですよ」


「これもコロネ様の功績ですから、是非ご馳走させてくださいね」



 おもてなしの言葉に照れるコロネ。

 でもそれ以上に、飾り切りされた果物の盛り合わせに目が釘付けだ。地元の主婦の作ったと言うクッキーやプリンと、新鮮な生クリームと果物でコーティングされたプリンアラモードも、大きな器に入って鎮座している。


 作成者はこの地に移住したパティシエのブラン。主婦らと協力して、コロネが来るのを待ち構えていたのだ。


「どうぞ、お召し上がり下さい。コロネ様とご友人様方。コロネ様のお好きなフルーツティーは、4種取り揃えております。ケーキも一種類ずつ、大きめの3段のティースタンドに。別皿には具だくさんフルーツゼリー、濃厚チーズシュークリームをご用意しました。ごゆっくり」


 

「「「ブランさん、ありがとうございます。頂きます」」」




 礼をして去って行くブランは満面の笑顔だ。きっと盛られた、コロネの奮闘物語でも聞いたのだろう。でも羞恥より食欲が勝るコロネ。だってコロネはまだ10歳だから。


 フルーツティーを各自注いで貰い、のどを潤す。


「すっきりした酸味が良いです。美味しい。ああ、どうしよう、どれから食べよう。迷う~」


 フヨフヨと笑う男子2人もを無視して、スイーツに向かうコロネ。まずは主婦の家庭の味が加わっている、プリンアラモードからだ。


「美味しい♡ さすがです、お姉様方」

「うん、すごく素朴な味」

「良いね。新鮮な生クリームも最高だね」


 3人は主婦のもてなしを完食し、次に向かう。


(余ったらお土産にしましょう。でも……食べそう。こんなにあるのに、止まらないわ)


 普段は節約生活なにで、心の葛藤に食欲が勝てそうにない。(見るともう、勝てないよ!)


 数人の妖精も横から一口摘まみ、満足して頷いている。

「くーぅ、コレコレこれよ。こんなに美味しいものが作れるって、すごい才能。だから人間が大好きなのよ♡」



 先程まで果物畑の苺やオレンジの木の上で、「取れ立ての果物は最高ね!」と言ってかぶりついていたけれど、調理したスイーツも大好きみたいだ。





◇◇◇

 チャルメが連れて来た者の中には、風の妖精を率いるシルフとシルフィードがいた。

 2人とも騒いでいただけあって、テンションが高かった。


「きゃー、シルフ。この果物美味しい~♡」


「良かったね、フィー。まだまだ季節で実るものが違うらしいから、楽しみは続くよ。ハウス物も良いけど、春になって路地に出来る物は太陽の恵みが段違いだそうだよ」


「まあ、本当に。ワクワクするわね。今回来れなかった子達用にお土産は貰ったけど、連れて来てあげたいわ~」


「そうだね。でも世界樹のこともあるから、全員では来れないよ。次回は僕達が留守番しよう」


「嘘っ、酷い。路地の苺も食べたいわ」


「順番は守らないと……次の次は来られるようにするから。まずは今を楽しもう」


「……うん。我が儘言ってごめんね」


「全然だよ。可愛いだけだ」


「もう、シルフったら。恥ずかしいわ」



 頬に手を当て照れるシルフィードと、その妻を優しく宥めるシルフ。



 シルフ達がユゼフィラン国に来てから、既に2週間が経っていた。風の妖精達と十分に満喫したらしく、最後に農園に来たかったのだそう。

 夢が叶って嬉しい反面、美味しさを知り離れがたいようだ。



 実態のない妖精が食事をするのは不思議だが、供物なら霊体でも匂いをかげるのと同じで、差し出されたものなら食せるのだろう。


 今日のグラスト伯爵領(元チェロスト子爵領)は、全面解放状態だから余計に。



  

 帰りはラディッシュの能力を使い、瞬時にサクラアイランドに戻るらしい。


 

 最近ネリネと一緒にいるせいか、コロネは妖精のラランが以前よりはっきり見え、声も聞こえるようになっていた。


 そうでなくともコロネの頭には、コロネの先祖に当たる、水の妖精メディアルがいつの間にか乗っかっている。ただメディアルは、ミカヌレが不幸な時に助けられなかったことを悔いていた。


 そのショックの為なのか、美味しいものがあっても頭から離れず絶食しているのだ。


 精神体なので餓死はしないみたいけれど、妖精らしくないのは確かだ。


 誰も指摘しないので、コロネは気付いていない。




◇◇◇

 王都の食堂に戻ったコロネ達は、本日貸し切りとなっていた店内に入る。そこにはスライストとミカヌレがいた。


「お帰りなさい、コロネ。楽しめたかい?」

「満足げな顔ね。私の娘は、とても幸せみたい」


 久しぶりに会ったスタイル抜群の母にハッとし、運動不足気味の上に暴食した自分が恥ずかしくなる。





「ええ、お父様。私、食べ過ぎたかもしれません」


「良いさ、そんなこと。もしコロコロになっても、コロネならきっと可愛いよ。それに嫁なんかに行かなくても良いんだから、無理なダイエットとかは止めなさいね」


「ダイエットはしませんが、運動を増やします。やはり体にも悪いことなので」


「そうか。まあ、それは置いとくとして」





 スライストは、ラディッシュの方に目を向け頷いた。


「ラディッシュはサクラアイランドに行って、数日休んでから帰って来る予定だ。ちょっと遠いからね。リオニオンも付き添いをするが、今回は帰りもラディッシュの力だけを使って魔法操作を鍛えるそうだ。

 そしてサクラアイランドの風の妖精は、数人この地に残って貰う予定なんだ。コロネ、頼んだよ」


「ほえぇ、私が? 無理よ、お父様」



 突然の依頼で思わず呆けた声をあげたコロネに、スライストは満面の笑みを向ける。我が娘なら大丈夫だと、信じて疑ってない瞳を向けながら。




「別に普通で良いんだ。いつも通り、美味しいものを食べて笑っていれば」


「そんなこと言われても……(食べ過ぎたばっかりなのに)」


「さっきも一緒に食べてただろ? そんな感じで頼むよ」


「ええ、(そんなに頼まれると、断れないから)やってみるわ。よろしくね、妖精さん達。私が失敗したら教えてね。仲良くしましょう」



「よろしく、コロネ」

「私、美味しいもの好き~」

「新しい知識を知りたいな」

「綺麗なものが好き」

「コロネ、やさしそう」



 よく事態が掴めないまま、妖精との共同生活が始まった。






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