表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宿縁モノローグ  作者: ゐぬい
一章 ブラックアウト・マジックダウト
5/5

ダウト

何気に遅くなってしまった。

ごめんなさい。

 あの日からゴールデンウィークをはさみ数週間経った。

 入学式後、まず初めにやってくるイベントが校外学習だ。

 二年生は毎年鎌倉に行くらしい。鎌倉まで行って何をするんだ。とは思うが、一般生徒にとっては、もはや楽しむだけのイベント。事後レポートなるものの提出があるが、このご時世じゃあみんな便利ツールを使って三分で終わらせる。

 ちなみに俺にとっては無駄出費イベントトップ3には入る。

 残念ながら県外にまで出て学習しようなどという高尚な思想は持ち合せていない。適当に班を振り分けられたら仕事をすればいいだけの話。できれば人と関わりたくない俺にとっては迷惑な話だが、決められてしまった以上仕方ない。

 そして今現在ーー水曜日の七限のロングホームルームーー、その班決めをさせられているわけだ。正直勝手に決めてくれて構わない。というか誰でも同じだ。どうせどいつもこいつも俺に取るリアクションは同じだろうし、俺も誰に対したって同じリアクションを取る。

 それにしたって高校二年生が電車で行ける圏内の鎌倉に一体何を学習しに行くのだか。

「……意味あるか?」

「あるよぅ!!」

 隣で声がした。

 土御門がいつのまにかいた。

「何の意味かは知らないけどさ」

 声に出してたか。

「お前班決めはどうした」

「それはこっちのセリフだね?賀茂くん」

「俺は余りで結構」

「そんなつれないこと言うなよぉ」

「もしかしてお前も余り志望か?」

「失礼なっ!」

 じゃあなんだよ。

「私はねえ?優しい人間だから君を仲間にいれてあげようと思っているんだよ」

「は?」

「だってどうせ誰もいないでしょ?」

「迷惑だ」

「そう言ってぇ。ほんとは羨ましいんでしょお?」

「そうだが」

「うわっ!開き直ったよ……」

「からかいに来たなら別を探せ」

「違うよ!誘いに来たの!」

「誘いに来たぁ?」

「だってボッチだったし」

「俺はどこでも構わないが、お前以外の班員は納得してるのか?」

「ダイジョブダイジョブ。君の友人のくるす?くんもいるし」

 土御門の奥を覗く。

 来栖と他三人が集まっていた。

「ね?」

 まあ、このまま待っていても仕方ないだろう。

「わかった」

「わっ!珍しく素直だ」

「お前は俺を何だと思ってるんだ」

「意地っ張りで頑固な冷酷無情人間」

「…………」

 やめようかな。校外学習行くの。

「拗ねないでよぉ」

「俺だって人間だ。流石に傷つく。悪いがさっきの話は無しだ。他を当たってくれ」

「ゴメンって!!悪かったって!!」

「もし冷酷無情だと思ってるなら扱いには気をつけることだな」

「イジワル」

「なんだ?」

「ほら行こ!」

 誤魔化しやがった。

 そんなわけで他の三人と合流。

 男女比は三対三。ちょうどいい比率だ。

「お。やっぱ来たか」

 と来栖。

「悪いか」

「いやぁ別にぃ」

「その薄ら笑いやめろ」

 その時、黒板の方でパンと手を叩く音がした。

 担任が満面の笑みを浮かべて言う。

「よし!決まったみたいだな」

 不本意ながらな。

「鎌倉では一応自由行動だ。残り時間はどこに行くかを決めてほしい。以上!」

 つまりは、校外学習中は生徒に一任するわけだ。

「鎌倉かぁ……」

 来栖が呟く。

「俺小学校のときも行ったんだけど」

「じゃあ適当に決めてくれよ」

「いや全く憶えてないから無理」

「ハイ注目ぅ!」

 土御門は班員を見渡して言う。

「じゃ今からとりあえず自己紹介ね。まずは主催の土御門治です!」

 合コンか?

「ほら賀茂くん」

「俺から?」

 うんうんと首を上下に振る土御門。面倒な。

「賀茂実規斗だ」

「俺は来栖鎬ね。よろしく」

 来栖の隣で机にもたれかかるようにいるのは、キザな印象を醸し出していた。何と言うか、その顔が語っている。

「僕は冷泉璃柘れいぜい あきつみです。どうぞよろしくお願いします」

「じゃあ次は女子から」

三月三日みづき みかだよー。みかって読んでもいいよー」

 ケラケラと笑いながら緩く言うのは焼けた肌にショートカット、身長は土御門より少し高いぐらいだった。

「みかちゃんはね、私の初めての友達なんだ!」

 と土御門。お前友達いたのか。

琳堂楓りんどう かえでです。この一期一会を大事に、よろしくね」

 土御門とは真反対の落ち着いた雰囲気の人だ。あいつもこのぐらい静かならいいのだが。

「賀茂くん。目は口ほどに物を言うけど、その哀れみに近い目でこっち見ないで欲しいかなぁ」

「いや、お前の思う通りだろうよ」

「ダメだよみっきー、女の子イジメちゃあ」

 三月が言う。というか何だみっきーって。

「そうだよねそうだよね!賀茂くんひどいよね!」

「……わかったから話を進めてくれ」

「そうだね。じゃあ行きたい場所ある人いる?」

 と、琳堂が手を挙げた。

「私、海に行ってみたいです」

「いいね!江ノ島とか行ってみる?」

「それなら江ノ島電鉄乗ればすぐだぜ」

 ……この調子なら勝手に決めてくれるだろう。

 と、騒いでいる隣で冷泉が聞いてきた。

「貴方は何か無いのですか?」

 冷泉は微笑む。

「あいにく校外学習に興味が無くてね」

「そうですか…」

 わかったら向こうに混ざったらどうだ、と言おうとした矢先。

「話が合いそうですね」

「……は?」

「私もそんな感じです」

「はぁ」

「正直そんなことに時間を割くなら筋トレに時間を割くべきです」

 ……ん?

「まだ…。まだ鍛えたりません。腹直筋や腹横筋……。足りません。まだいけます」

 ……。

「見ますか?私の美しい筋肉を!聞きますか?私の筋肉の讃美歌を!」

「……いや結構だ」

「にしても……」

 値踏みをするような目でじっと見てくる。

「貴方も鍛えませんか?」

「何がにしてもだよ」

「鍛えたら素晴らしい体になりますよ。この僕が保証します」

「そんな保証いらん」

 と、そこで助け舟が入った。

「みっきーはどっか行きたい場所無いの?」

 おそらく、無いと答えればまたこの筋肉野郎との話に戻される。何としてでもそれは阻止したい。

「鎌倉には何があるんだ?」

「そっからぁ?」

 呆れたように言う。

「私が説明しますね。博覧強記とまではいきませんが」

 そう名乗り出たのは琳堂。

「さすが委員長!」

「……委員長なのか?」

「もしかして賀茂くん知らなかったの?」

 琳堂の方を見るとニコリと笑った。

「……申し訳ない」

「いいの別に。さて、閑話休題。鎌倉でしょ?」

「ごめんね話の腰折っちゃって」

「鎌倉は神奈川にある名所ね。天下周知なのはやっぱ大仏かな?もしくは、藤沢の方まで行けば江ノ島に行けますね」

「じゃあ無難に大仏だな」

「何がじゃあだよっ!賀茂くん!!」

 そろそろ面倒になってきた。ここらで誰かにパスをしたい。

「来栖はどうだ?」

「俺?俺は……そうだな……。鳥居が見てぇ」

「とりぃー?」

「なんか微かに数年前の鎌倉の記憶があってな?そのとき行った場所にすげぇ数の鳥居が立ってたのは憶えてる」

 スマホで調べる束の間の沈黙を破ったのは冷泉だった。

「……佐助稲荷神社でしょうか?」

 こいつスマホ使ってねえ。

「あ多分それ」

「ほんとだぁ!凄いね冷泉くん!」

「お役に立てて光栄です」

「確かに綺麗だなーここ。せっかくなら行こーよ」

 その後も順調に話合いは進み、当日のプランは決まった。

「再来週だね!!」

「おやつっていくらまでなんだ?」

「300円までじゃない?」

「小学生だねー」

「買い食いはしてもいいんじゃないかな?暴飲馬食はいけないけど」

「大丈夫だそうですよ。先程確認しに行きました」

「じゃあ現地で買えばいいか」

「私パスタ食べたいんだっ!」

「あら案外千万……。そこは鳩サブレーじゃないんだね……」

「あれはお土産でしょー」

 ……この班もなかなかに騒がしい。さすがは騒がしい代表の土御門が集めただけある。

 とは言っても個人が騒がしいのではなく、集団としてのある意味性質なのだろう。土御門以外が普段から騒がしいかと言われると決してイエスとは言えない。来栖だって場をわきまえる人間だ。

「賀茂くん。顔が失礼だよ」

「お前のその発言の方が失礼だ」


 二週間。十四日。336時間。

 この先、俺を一生蝕むそれへのカウントダウンだった。

二章投稿もそう遠くはないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ