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第2話 右腕の苦悩

イラリアが去った3日後の城内



イラリアの右腕としてその手腕を振るっていたルーチェは、ワイン部門・統括責任者の執務室に赴いていた。


「クーラ様、失礼いたします。ルーチェで御座います」

「あら、何よ。今忙しいのだけど」


扉をひらくと、甘ったるいムスクの匂いがルーチェの鼻腔を刺激した。その匂いに思わず顔をしかめてしまう。


クーラはソファーに深く腰掛け爪を整えていた。こういった些細な箇所こそ手は抜けない。いい男というのは、こういった部分をよく見ているのだから。と、ルーチェには一切見向きもせずに返答した。


「そうですか、お忙しいところ恐縮です。定例の畑の状況確認作業ですが、後30分程で開始致しますので念のためにお声がけをと」

「はあっ?畑の状況確認なんて貴方がやっておきなさいよ。私が居ないとそんな事も出来ないわけ」


クーラは、さも面倒だとため息を吐く。


ため息を吐きたいのはこちらだと、ルーチェは内心毒付いた。2年前のあの日、クーラと初めて会った日の事を思い出す。グリアムから、彼女が突然ワイン部門の副統括責任者になることを知らされた。最初はメンバー全員が彼女を尊敬したものだ。


だってそうだろう?当時22歳という若さでいきなり副総括のポジションに就いたのだ。通常なら天地がひっくりかえってもあり得ない人事だ。


だからこそ期待した。きっと外部で、物凄い実績を残した人物なのだろうと。そう、あのワイン作りの天才イラリア様と同じように。


しかし、クーラに対する尊敬の念が剥がれ落ちるまで3日とかからなかった。少し話せば、知識が無いことは直ぐに分かった。なにせ、基本事項の確認作業ですら彼女は何それ?という顔をしていたのだから。


何より反感を買ったのは、ワイン作りへの情熱が皆無だった事。それどころか、畑仕事など手が汚れることは平民がやることだと見下したのだ。何故このような人物がこの地位に即しているのかと、皆憤りを覚えた。後に風の噂で聞いたのは、クーラは没落した貴族の出身でどこぞのパーティーで知り合ったグリアムに媚を売ることで城内に潜り込んだという話だ。


「かしこまりました。と、云いたい所ですが……本日は国王がご見学にいらっしゃいます。流石に責任者が居合わせないのは如何なものかと」

「何よ!そういう大事なことは早く言いなさいよ。最悪!髪の手入れをもっとしっかりとしておけば良かったわ」


何度も伝えたさ。何なら紙にもしたためた。現在はあんたの切った爪の下敷きになっているけどな。


「まあいいわ。畑に関する細かい説明は貴方がしなさい。いいわね、着替えたら行くから、先に行っていなさい」


流石の彼女でも、それくらいの常識はあったかと、胸を撫で下ろす。現在身に着けている胸元が大きく開いた真っ赤なドレス姿で畑に来られでもしたら、どうしようかと思っていたからだ。


「かしこまりました。それでは第3農園の入り口でお待ちしております」


最後にそれだけ伝え踵を返そうとした時、


「ちょっと待ちなさい!第3農園って何処よ!?」


ルーチェは酷い頭痛を覚え、目頭を押さえた。


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